us side.
『あ、もしもし?』
電話の奥で小さく聞こえる大人びた様な、だけど少し高めの声が聞こえてくる。
「どしたの?ガッチさん。忘れ物?」
『いーや?俺が都合なかなか合わないのに先に帰っちゃって悪かったなぁって思ってさ。ごめんね。』
「別にいいよ。一本三人のを適当にとって解散したから。」
『そっかぁ。』
どうしたんだろう。ホントに。
この人は適当だからいつもなら謝るのはLINEでか、何も言わないかのどっちかなのに。
「ねぇ。」
『ん?』
「なんか…あった?」
正直、何の根拠もない。
ただ俺の勘なだけ。
けど彼は、黙ってボソボソと一言呟いてから
『……なーんも?』
と、下手くそな嘘をついた。
「それは…なんかあったときの反応じゃない?」
『………あらー…バレたかー…。』
『あはは』
困ったような、楽しそうな声で笑ってガッチさんは話してくれるようだった。
「…早く。」
『えー……誰にも言わない?』
「当たり前だろ。そんな心配しなくても絶対に言わないから。」
彼は『うーん…』と悩んでから息を吸った。
『信じるね。』
その言葉には圧がかかっていて「…はい」と
うな垂れた声しか出なかった。
──────────
『俺ね、相談されたの。キヨに。』
「…………へぇ。」
あのキヨが相談?
予想の斜め上から突然衝撃の事実を知らされた。
『あれだよ?あれ。恋愛相談でした。』
「は?」
まてまてまて。余計に意味がわからなくなってしまった。2個も爆弾を急に投げ込むな。
あんな奴が恋?
まぁ、誰しもが恋はすると思うけど。
…え?
俺は電話の向こうの人の事なんて忘れて自分の世界に入り浸ってしまっていた。
ぼーっと頭の中で沢山の事と葛藤しているとやっと我に帰れた。
『うっしー?』
「ん、あ、ごめん。」
「そもそも…誰が好きだったんだ?」
『10年くらい前から一緒にいる人。だって。』
『しかも、知ってる人。』
「幼なじみ?とか?」
『ごめん。それだけは本当に分かんない。』
『けど、知ってる人ってことは身近って事だからさ幼なじみはないかなって。』
「うん…確かに……。」
一体誰なんだ?
思い当たる奴………いるけど、シビアなラインだな……。
いやぁ………最初に思い浮かんだけど……。
えぇ…………………。
「ガッチさん。俺がぱっと思いついた人、いっていい?」
『うん。気になるし聞かせて?』
「それは…さ…
レトルトとか…あり得るか?」
俺にも全く分からない。
何で最初がコイツなんだろう。
疑問を増やしていくと、ガッチさんは拍子抜けした様な声を出して言った。
『やっぱり、そう思う?』
────────
「ガッチさん。それ、嘘だろ。」
『?』
「「やっぱり」って所が気に食わない。」
「だってよぉ。それじゃあ……」
「ガッチさんも同じこと考えてたって事になってんじゃん。」
そう言うとガッチさんはクスッと笑った。
『そうだよ。俺、うっしーと同じこと考えてたんだもん。ビックリだよ。』
「いや、だって、そりゃあ…ねぇ…?」
──────────
俺はそう考えた理由を彼に聞こえるか聞こえないかの音量で話した。
そういえば、電話かけてきた理由。
一人で真面目なことを背負うのは流石に荷が重すぎたからかな?
まぁ…そんなことはいい。
とりあえず、喋った。彼に届く声だけど、限りなく小さな声で。
アイツはレトルトの方ばっか見てんだよ。
レトルトを挟んで俺を見ているのかと思ったときもあるがそれにしては目線があわなかった。
レトルトと喋る時は目をそちらの方に向けて楽しそうに話していた。
実況中に比べたら全然テンション低いけどな。
顔…というか目線に態度が出すぎなんだよな。アイツは。
俺は一通り話し終えた。
ガッチさんは凄く共感しているようで『そうだよね~。』と言っていた。
『アイツ。なんで変なところ抜けてるんだろ?』
「さぁね。」
ったく…分かりやすいなら分かりやすいなりに早く気づけよ。あの馬鹿がよ。
見てるこっちがムズムズするわ。
俺はレトルトと話しているときの
無自覚で笑ってる幸せ馬鹿の顔を思い浮かべて舌打ちをした。
────────
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