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#異能力バトル
於田縫紀
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ジリリリリン
目覚まし時計が鳴り響き、次の日になっていた。目覚まし時計の上のボタンを押すと、その場で伸びをする。
また仕事かと思うと、嫌な気持ちになるが生きるためだ。頑張らなければ。
髪をとかして顔を洗い、朝食のパンを食べて通勤する。満員列車に乗ると、会社へ向かう。
会社では怖い上司がいて、少しだけミスをしても叱りつけてくる。
「いつも間違えてばかりだな、このクズが!!お前はでき損ないなんだよ、少しは考えろや!!」
「すみません」
謝ることしかできず、すぐにミスを修正する。修正しても嫌味を言われるのだから、本当にいやな上司だ。肩を落として、飲み物を飲む。
帰る時はもうへとへとで死にそうになってしまう。今日もいつものように帰るんだろうなと思っていたら、黒いスーツを纏う男に声をかけられた。
「お兄さん、お疲れのようですね」
「はい。実は疲れてしまってやる気が出ないというか……」
「それはとてもかわいそうですね。飴でも舐めて、気持ちを楽にしましょう」
そう言われて、ピンクの包み紙に包まれた飴を渡される。僕はそれを舐めると、高揚感が高まりハイな気持ちになっていた。気がつくと、電車に乗っていた人間たちを皆殺しにしていた。
あの男はいなくなっていて、頭が冴えてくると目の前のことが信じられなくて体が震えてしまう。確かに満員電車は嫌だったけど、こんなことになるなんて。
僕は急いで電車から降りて、血まみれのまま駅から出た。当然警察に追われる身となり、走る走る。
(こんなことしたくなかったのに、なんでだよ!!)
警察に追い詰められそうになった瞬間、またあの男が立っていた。
「もっと飴玉が欲しいですか?ふふ、たくさん差し上げますよ」
手のひらからこぼれ落ちるほどの飴玉をもらう。一つ舐めると気持ちが高揚して、気がつくと警察官を殺していた。パトカーもボロボロに破壊されている。
「どうですか?欲望は満たせましたか?」
「はい」
「もっともっと欲望を満たしてくださいね。また欲しくなったらいつでも言ってください」
男がそう言うと、その場から歩いて姿を消した。それからと言うもの、僕は欲を満たすためにたくさんのことをした。
まずは叱ることしか頭にない上司を殺した。変な目で見る女たちも殺し、しまいには会社にいる全員を殺して会社を血まみれにした。
しかし欲望は満たされない。
部屋に帰って欲望を満たすために飴玉を食べる。気がつくと目の前に女がいて女の首がもげていた。口の周りは血まみれだった。
飴玉はすでになくなっている。そこへまたあの男がやってくる。冷たい声をかけてきた。
「おめでとう」
振り返ると——あの日と同じ姿の男が立っている。
「君はついに『本当の自分』を見つけたようですね」
「本当の……自分……?」
「そう。君はずっと望んでいたんですよ。破壊を。支配を。欲望のままに生きることを」
男の目が怪しく光る。
「さあ、ゲームを始めよう」
(嫌だ……もう終わりにしたい。人を殺すのなんてごめんだ)
男がまたたくさんの飴玉を出してきて、嫌なのに止めることができない。それを一つ口に入れると近くにいた女の肉を貪っていた。欲望が満たされていく。
しかし欲望を満たす時間が短くなってきた。一気に飴玉を五つ食べると、僕は外に出て近くを歩いていた男女を殺していた。それなのに欲望は満たされない。
女を部屋に連れて行き、肉を食べても欲望が満たされない。今度は目玉を潰してみた。それでも全く満たされない。僕はまた飴玉を八個舐めると、意識を失ってしまう。
気がつくと、たくさんの人間の手と足が部屋の中に転がっていて内臓も飛び出していた。それなのに、欲望は満たされない。
「どういうことだよ……」
「気が付きましたか?」
男が現れると、クスクスと微笑んでいた。
「欲望を満たすことなど出来ませんよ。人間の欲は大きくて幅広いので」
「もっと飴玉をくれないか?欲望をもっと満たしたいんだ」
「それは出来ません。もう飴玉はありませんから」
男がそう言って、いなくなってしまう。
そして次の日、彼は捕まってしまう。たくさんの人間を殺した罪で、無期懲役にかけられた。
欲望を満たすことは、普通の人間には無理である。欲望には制限がないのだから。
コメント
3件
わあ……第1話からすごく重くて、でも不思議と引き込まれてしまいました。 日常の些細な疲れやストレスが、たったひとつの飴玉でここまで暴走してしまう怖さ。主人公の「したくなかった」という心の声が、余計に胸に刺さりました。 あの黒スーツの男、何者なんだろう……これからどうなるのか、気になって仕方ないです。