司くんが嫌いだ。
だって!
僕なんかのことが好きで他の子と付き合うなんて一切考えてないような態度して、僕が司くんのこと嫌いじゃないって分かってる癖に「嫌いになったか?」って事ある毎に聞いてくるし、嫌いになれないってわかってていたずらしてくるし、他の子以外見れないって顔して僕のことみるんだもん!
僕は司くんに他の女の子と付き合って普通の恋をして幸せになって欲しいんだもん!!
なのに僕以外考えられないって蕩けた目でいつも見てくるし!!
「司くんなんか大っ嫌いだ!!!」
放課後の夕焼け、屋上にて。
今までずっと思っていた事を爆発させてしまった。
「るい……そ、うか、じゃあ、別れよう。オレも、もう、諦める」
『別れたくなんかない』。
そう目で訴えてくる。
司くんの頬につう、と涙が伝う。
嗚呼、君に泣いて欲しくて言ったわけじゃないのに。
君に幸せになって、僕なんか見えてないってくらい他の人に夢中になってて欲しい。
きみがしあわせになるなら、それでいいんだ
それで
いいはず
なのに
どうして泣いてるんだろう。
どうして司くんに縋ってしまうのだろう。
あぁ、そうか。
まだ好きなんだ。
どうしても嫌いになんかなれなくて、
幸せになって欲しいから頑張って諦めたのに。
司くんへの好きで溢れてて、司くんがいないと胸が苦しくて、辛くて、生きて行けなくて。
ずっとそばに居て欲しくて、離して欲しくないって、
だいすきだから、まだあきらめられない。
きらいにならなきゃ
嫌いにならなきゃ
きらいにならなきゃ
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い……
きらいにならなきゃ、司くんは幸せになれない
司くんの足枷になって、司くんが進めなくなる。
スターになれない。
それを、どこか望んでいる自分がいる。
「……類、泣かないでくれ、そんなに、オレのことが、嫌か、?」
嫌なんかじゃない。
君を嫌う人なんて居ない。
僕も、君のクラスメイトも、寧々も、みんな。
君がみんなの救世主なんだよ
ぼくは、もうきみなんていらない
いらないんだ
要らない……はず、だよ、
僕は、ずっと孤独でいいんだ。
「大っ嫌いだよ……」
泣いていてか細くなった僕の声。
静かになった屋上に、僕の啜り泣く声が響く。
まだ夕方頃なのに、周りは以外にも静かで。
泣いている僕の声がただひたすらに酷くなっていく。
子供のように泣き喚く僕を見て、幻滅しただろうか。
たった一人。
たった一人なのに、離せない。
離さなきゃ、いけないのに。
離さなきゃ、僕は。
僕は壊れてしまう。
司くんの優しさに、溺れてしまう。
ぎゅ、と司くんが抱きしめて、子供をあやすような声で大丈夫だ、と囁く。
やさしい、やさしいよ。、
君の優しさに、また甘えてしまう。
あまりにもとろけたその目で。
あまりにもやさしいその手で。
包まれてしまうのが、怖い。
戻れない所まで、堕ちてしまう。
司くんが居ないと、生きて行けなくなる。
何もかも溶けてしまいそうな、黄昏時。
君には普通の恋愛をして欲しい。
可愛い女の子と付き合って、結婚して、子供を作って。
僕は1人でいいよ。
ぼくは、もうておくれだから_________
翌日。
司くんは転校した。
父親が転勤だとかなんとか。
全体的に記憶が無いのだ。
泣いていた。
それだけは覚えている。
クラスメイトから心配された。
僕と司くんは恋人だから。
「大丈夫か?」とか、「聞いてたのか?」とか。
うるさいんだよ。
司くんはきっと、僕の為にここを去ったのだ。
僕が、嫌いだなんて言うから。
転校は司くんの意思でもあったのだろう。
だって、家は遠くなっても通えない距離では無いのだ。
電車で30分。
もともと早起きの健康体な司くんなら、普通に通えるだろう。
つまり、確かな僕への「拒絶」なのだ。
ああ、昨日の件だ。
司くんに溺れていた僕は、もう生きる意味さえ見出せない。
司くんとショーをするために起きて、司くんと話をするために学校に行って、司くんと生を楽しむためにずっと生きていた。
失ってからじゃ遅いんだ。
だから、自分から関係を絶とうとしたんだ。
もう、生きる意味なんてないよ。
「類」
あれ
「何してるんだ?」
幻聴かな
「お前が飛ぶなら、オレも飛ぶが」
やめて
「行くぞ。いっせーのーでだ。」
来ないで
「いっせーのーで______」
『速報です。今夜、神山高校で2人の高校生が飛び降り自殺をしたようです。』
『死者は、一人。重傷者一人。』
「……なんで、置いていくんだよ。類。」
足元には、何も無い。
ただ、縄を首に掛け、脈が止まっている天馬司の死体だけが、そこにあった。
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うわぁぁぁぁぁ‥‥‥‥ でも天国で会えるなら‥‥ね‥‥?