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求婚者100人の猛攻から逃げるように街を後にしたルカ(健二)の一行に、さらなる「美しき受難」が加わることになった。公爵家がルカの護衛とサポートのために派遣したのは、帝国最高峰の魔導士であり、眼鏡の奥に冷徹な知性を光らせるアヤ。そして、聖教会の聖女候補であり、おっとりとした包容力を持つ回復術師のミナだった。
「初めまして、ルカ様。貴方の魔力回路、後でじっくりと『隅々まで』解析させていただきますね」
アヤは淡々と告げるが、その頬は微かに上気している。彼女は、ルカの顔を見た瞬間に「理論を超越した美」に脳内の計算式がすべて弾け飛んでいた。
「ルカ様、お怪我はありませんか? どこも痛くなくても、毎日私が心を込めて『癒やして』差し上げますね」
ミナは聖母のような微笑みを浮かべるが、その瞳の奥にはルカを独占しようとする強い執念が渦巻いていた。
宿営地での夜、ルカは三人の美女に囲まれ、生きた心地がしなかった。
「ルカ様、こちらのアロマを。魔力を安定させる効果があります(私の好みの香りに染まってください)」とアヤが詰め寄る。
「いいえ、ルカ様には私の手料理が一番です(胃袋を掴んで離しません)」とミナが手料理を差し出す。
「貴様ら、ルカ様の背後は私の場所だ!」とナツメが剣を抱えて割り込む。
ルカは、彼女たちの熱視線から逃れたくて、つい溜息をつきながら呟いた。
「……みんな、そんなに僕に構わないで。……放っておいてくれるのが一番、幸せなんだ」
健二の本音は「(一人で静かにネットサーフィンしたり昼寝したりしたいから、全員どっか行ってくれ)」だった。
しかし、三人の乙女たちの脳内フィルターは、この言葉を神々しく変換した。
(((……っ!!)))
アヤは眼鏡を指で押し上げた。
「……なるほど。あの方は、私たちが競い合う醜い姿を嘆いておられるのね。特定の誰かを愛でるのではなく、平等を重んじる『博愛』の境地。……素晴らしい。ならば、私たちは協力してあの方を支える『チーム』になればいいのだわ」
ミナは胸の前で手を組んだ。
「ああ、ルカ様……。ご自身がこれほど愛されているのに、それを誇らず、静寂を愛されるなんて。私たちが騒がしくして、あの方の聖域を乱してしまっていたのね。……反省いたします。これからは、もっと『密やかに』お仕えしますね」
ナツメは拳を握りしめた。
「左様か……! ルカ様は、我ら三人の結束を試しておられるのだ。誰か一人が突出するのではなく、三位一体となってあの方を守る盾となれ、と!」
ルカは「(お、なんか静かになった。作戦成功か?)」と安心し、力なく微笑んだ。
その瞬間、三人の女性たちは「あぁ、私たちの理解に満足してくださった!」と勝手に納得し、ルカを中心とした「鉄壁のハーレム布陣」が完成した。
翌日、旅の途中で巨大な魔獣が現れたが、ルカが戦う必要はなかった。
「ルカ様、動かないで。私の重力魔法で塵にします(アヤ)」
「ルカ様、返り血で汚れてはいけません。聖なる結界を展開します(ミナ)」
「死角は私が斬る!(ナツメ)」
三人が競うように魔獣を瞬殺していく。ルカはただ、後ろの方で「……すごいなぁ」と他人事のように眺めていただけだったが、それを見た兵士たちは、
「見ろ! ルカ様が、三人の傑物を完璧な連携で操っておられる!」
「あえて自分は手を下さず、部下の能力を120%引き出す統率力。……恐ろしいお方だ!」
ルカはただ、新しく増えた仲間たちの勢いに圧倒され、さらに「働かなくていい理由」が増えたことを喜んでいただけだったが、その名声は「帝国の若き支配者」として、不動のものとなっていくのだった。