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ひとらんらん先生ことひとらん先生の大きな声。
少しそっちを見ると、クラスメイトのロボロが、ホットケーキを床に落としていた。も、もったいない……‥……。
じゃなくて、大丈夫かな?ロボロは何も答えないで、じっとひとらん先生を見た。その、虚ろな眼差し。
なまぬるい空気が、頬を撫でた。何か羽音みたいな鳴き声みたいなものが、聞こえた気がした。
ゾワッと鳥肌が立つ。すっごく、嫌な感じがした。
ワイこれ知ってる。
―――知ってる!
「ロボロ?具合が悪いのか?」(ひとらん先生)
ひとらん先生がロボロの肩に手をかけようとする。
「触らないでくださいっ」(ショッピ)
思わず声を上げたとき、静かな、とても静かな声が、ひびいた。
「結界」
キィィィィン。
なに!?耳鳴りだ!
やっとのことで顔をあげると……な、なんなんだこれ!
なんと、周囲の人が全員動きを止めていたんだ。
ロボロに触ろうとしているひとらん先生、不思議そうにそっちを見てるクラスメイト達。コンロの火や煙も、全部そのままの形で止まっている。
一体何が起こっているの?
ぐるぐると考えていると、世界の隅で何かが動いた。
「ロボロ?」(ショッピ)
それは、ロボロだった。ロボロはワイの声に反応して、こっちを見る。
その時、ロボロの首元からなにか、黒いものが落っこちた。
続けざまに何個か連続に。床には500円玉くらいの黒いシミ。液体?
それからしばらく床に張り付いていたけど、唐突に持ち上がるように固形になった。動き始めた。それには目がついていて生き物だ!
「わ~〜〜〜〜〜」(ショッピ)
なに!?スライム?アメーバ?どっちにしろワイドロってしているものは好きじゃない!
どうしようもできず固まっていたワイにロボロはゆっくりと近づいてくる。目は開いてるけど、目が死んでいる。
ロボロが動くごとに黒いやつが落ちる。
どうすればいいか迷った瞬間、背後でしまっていた廊下側の扉が開く音がした。
「こっちにこい」
と、声とともに腕を引っ張られる。後ろにいる誰かにぶつかった。
ふわっと甘いバニラの匂い。顔を向けるとそこには男の子が立っていた
緑色のパーカーを着ている男の子。
彼は私を見て、思わずと言った様子で微笑んだ。
その笑顔が切なく見えた。
「どちらさまですか?」(ショッピ)
驚きながら尋ねると男の子は無表情になって、ワイは後ろに下げられた。
「はなれていろ」
そう言って私の横をすり抜ける。
コックさんみたいなダブルボタンの黒い服を着て腰エプロンをした男の子は、手に大きな皿を持っていた。
男の子の持っている皿には、マカロンが山盛りになっている。
男の子はロボロに近づいて感情のない声で言った。
「めしあがれ」
その瞬間、黒い生き物は、床とロボロから離れて皿に殺到したんだ。
まるで咀嚼音が聞こえてきそうな食いっぷり。マカロンはどんどん少なくなっていく。
でも、しばらくすると、黒い生き物が光りだした。光りながら宙に浮いて、消えていく。
どんどん黒い生き物は消えて行ってついに一匹もいなくなった。
そして、お皿の上に1つだけ残っているマカロンをロボロに差し出して静かに言った。
「めしあがれ」
すると、ロボロはうごいた。
1つのマカロンを手に取り見つめながら呟いた。
「これ、お父さんが買ってくれたのと一緒だ」
ロボロはすごく嬉しそうな顔をしながらマカロンを食べた。
そういえば、ロボロのお父さんは単身赴任中で滅多に会えないと聞いたことがある。
なんだかわからないうちに男の子は振り向いた。
「結界の中で動けるってことは、スイーツ・マジシャンの力は消えていないんだな」
…‥‥‥‥…………はい?
スイーツ、なに?今のワイに言った?
後ろを確認すると、
「何してんだ。お前に決まっているだろ」
呆れたように言われた。
彼は目の前に立つと無言で右手を突き出してきた。
反射的に受け取ってしまったもの。ワイの手のひらには、落ちてきたもの。
それは、鍵だった。
古びた金属製の、細かな模様がいっぱいの、鍵。
それを受け取った瞬間体の奥底から何かが湧き上がってきた。
「これ……なに……」(ショッピ)
「アトリエの鍵だ」
男の子は静かに言った。
「お前だけが使えるお前の鍵」
「ワイの?」(ショッピ)
「ショッピ」
名前を呼ばれて驚きで体が固まった。だってまだ名前を教えていないのに。
恐る恐る彼の顔を見る。
彼の目はワイと似たような珍しい目の色だった。
「あなただれ?」(ショッピ)
「――――――ゾム」
「ぞ、む?」
なんとなく聞き覚えのあるような。
男の子―――ゾム、は複雑そうな表情で訪ねた。
「ショッピ、約束を、おぼえているか?」(ゾム)
ゾワッ。
その瞬間なにかの映像が頭の中を駆け抜けた。とても幸せな記憶いつかの記憶。何か思い出しそう。でも……
ワイが考えたときのはもう頭の中の映像は消え去っていた。
「思い出せ」(ゾム)
・・・
「お前は魔法使いだ」(ゾム)
へ?
いまなんて?
オマエハマホウツカイダ。
「ま、魔法使いって……………冗談だよね?」
ゾムは舌打ちをした。
ゾムは強い口調で言った。
「鍵は絶対になくすなよ」
体がカクッとなった。それではっとした。
「そろそろ全班焼き上がるな〜」(ひとらん先生)
ひとらん先生が大きな声で尋ねる。
何もなかったようにホットケーキを皿に移すロボロそれを見ていないクラスメイトゆらゆら揺れるコンロの火に空中に消える煙。
何もかも、元通り…まるで世界がやり直されたかのように。
周囲を見回してもゾムはどこにもいない。
何だったろう。不思議に思うのと同時に実習室の扉がノックされた。ひとらん先生が扉に向かうのを見ながら首を傾げる。
ワイは寝てたのかな〜?
頬をつねってみようかな〜。……ん?
右手になにか握っていいることに気づいた。
ゆっくり手を開くとそこには「アトリエの鍵」があった。
「えっ!?」(ショッピ)
驚いて声が出る。隣りにいた子が目を丸くする。
「どうしたの?」
「あ、うん、何でもない」(ショッピ)
とっさに隠さないといけないと思った。
そのくらいに金色の鍵はワイの世界では異質だったんだ。
あれは何だったんだろう。
本当に、夢?
考え込んでいると、クラス中がざわめいた。
どうしたんだろう?
みんなが釘付けになった方を見るとそこにいたのはひとらん先生とたった今実習室に入ってきた……。
「ええええええええ――――――」(ショッピ)
さっきの男の子、ゾムだった。
「おーいショッピ、うるさいぞ〜。他のみんなももっと静かに。………えー、実習の途中だけど、転校生を紹介するじゃ、ゾムはあいさつして」(ひとらん先生)
男の子は一礼して、少女漫画の王子様みたいなキラキラな笑顔をうかべる。女の子たちは声を上げる。
なにあれ、さっきの無愛想な「ゾム」とはまるで別人だ。
「ゾムです。道が混んでて遅れました。よろしく。」
凛と響く声。「ゾム」は女子の歓声を浴びながら室内を見回し、ワイを見つけた。その瞬間優しそうな目に強い光が宿った気がした。
あれは、夢じゃなかったのか?
こうなったら本人に確認するしかない。
そうけついをしたんだけど休み時間になると1軍の女子に質問攻めにされていた。もちろんあの王子様スマイルを浮かべている。
「どこから来たの?」
「フランスです。」(ゾム)
キャーーー〜〜〜!
「や、やっぱり、にほんじんじゃないの?ゾムくんすごいイケメンだよね〜」
「お母さんが日本人なんです。そんなにイケメンじゃないよ。でも、ありがとう。」
キャーーー〜〜〜!
「どうして日本に来たの?」
「親戚の家にホームステイすることになったんですよ。」(ゾム)
キャーーー〜〜〜!
ゾムがなにか答えるたびに女子が歓声を上げていて聞こえない。ワイも知りたいことがあるのに…
さっきロボロにも確認してみたんだけどわけわかんないって顔されたんですよね〜
ゾムって宇宙人だったのかな〜
まぁ、それはないか。
それからも何度かゾムと話そうと思ったんだけどなかなか機会がなかて、とうとう放課後まで来てしまった。
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