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蓮香(仮)
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茈赫
お時間がある時に
地雷さん🔙or自衛
キャラ崩壊大
ご本人様関係ありません
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『明日、君が忘れても。』
――君が忘れてしまうのなら、何度だって好きにさせる。
# 01 星が消える夜
「明日になると、大切な人の記憶がひとつ消える」
そんな噂が、学校中に広がったのは六月の終わりだった。
誰が言い始めたのかは分からない。
ただ、ひとつだけ確かなことがある。
その噂を聞いた翌朝、ひとりの生徒が自分の親友の名前を思い出せなくなった。
それ以来、誰もが夜空を怖がるようになった。
そして今日。
紫崎 茈は、屋上でひとり星を眺めていた。
茈「……くだらねぇ噂」
口ではそう言いながら、スマホの画面を何度も確認する。
そこには、一件のメッセージ。
『今日、放課後屋上来い』
送信相手は、暇 赫。
昔からの友人で、いつも隣にいて、どんなときも遠慮なく言い合える相手。
そして――。
茈が、ずっと好きだった相手。
赫「おーい、茈!」
階段の扉が開き、聞き慣れた声が響く。
赫「なに黄昏れてんの? 似合わねぇぞ」
茈「うるせぇ。呼び出したのはお前だろ」
赫「そうだったわ」
赫は笑いながら、茈の隣に腰を下ろした。
いつもと変わらない笑顔。
いつもと変わらない声。
それなのに、今日だけは違って見えた。
赫「なぁ、茈」
茈「ん?」
赫「もし明日、俺がお前のこと忘れてたらどうする?」
茈の指が止まった。
茈「……は?」
赫「いや、最近流行ってるじゃん。あの噂」
茈「くだらねぇって言っただろ」
赫「もしもの話!」
茈は、赫の顔を見た。
冗談を言っているように見える。
けれど、赫の指先は小さく震えていた。
茈「……忘れさせねぇよ」
赫「え?」
茈「俺がお前に、何度でも思い出させてやる」
赫は一瞬だけ目を見開いた。
それから、困ったように笑った。
赫「……そっか」
その声が、どうしてか泣きそうに聞こえた。
# 02 言えなかった言葉
翌朝。
茈は、いつもより早く学校に来た。
理由はひとつ。
赫に会いたかったから。
昨日、あんな話をしたせいだろうか。
妙に胸騒ぎがして、眠れなかった。
茈「……あいつ、遅ぇな」
教室の時計は、午前八時十五分を指している。
いつもなら、赫はこの時間には来ている。
スマホを取り出し、メッセージを送ろうとした、そのとき。
赫「……あの」
背後から声がした。
振り返る。
そこにいたのは、赫だった。
けれど。
赫は、茈を見て不思議そうに首を傾げた。
赫「すみません。えっと……どこかで会いました?」
一瞬、世界の音が消えた気がした。
茈「……は?」
赫「俺、あなたのこと知らないと思うんですけど……」
茈は、言葉を失った。
冗談だ。
そう思いたかった。
けれど、赫の目は本気だった。
本当に、茈を知らない人を見る目だった。
茈「……俺は、紫崎 茈」
赫「紫崎……茈?」
茈「お前の友達だよ」
赫「……ごめんなさい」
赫は申し訳なさそうに笑った。
赫「俺、覚えてなくて」
茈は、唇を噛んだ。
昨日の噂。
明日になると、大切な人の記憶がひとつ消える。
まさか。
本当に、そんなことが起こるなんて。
茈「……そっか」
それだけ言って、茈は教室を出た。
背後から赫の声が聞こえた気がしたけれど、振り返らなかった。
振り返ったら。
きっと、何も言えなくなるから。
# 03 君の知らない俺
それから数日。
茈は、赫に話しかけ続けた。
茈「おはよう」
赫「……おはようございます」
茈「昼、一緒に食うぞ」
赫「え、あ……はい」
茈「帰り、待ってる」
赫「……俺たち、そんなに仲よかったんですか?」
そのたびに、胸の奥が痛んだ。
けれど、茈はやめなかった。
赫が好きだったもの。
苦手だったもの。
くだらないことで笑い転げた日。
雨宿りをしながら、ふたりで帰った帰り道。
茈は、ひとつずつ話した。
茈「お前、昔からトマト嫌いだったよな」
赫「え、なんで知って……」
茈「知ってるよ。何年一緒にいたと思ってんだ」
赫「……そっか」
赫は少しだけ笑った。
その笑顔を見て、茈は思った。
忘れられてもいい。
自分のことを覚えていなくてもいい。
もう一度、赫が笑ってくれるなら。
それだけでいい。
――なんて。
本当は、そんなわけがなかった。
名前を呼んでほしかった。
くだらない話で笑い合いたかった。
自分だけに向ける、特別な表情がほしかった。
茈「……俺、馬鹿みてぇ」
放課後、誰もいない教室で呟いた。
すると。
赫「……何が?」
振り返ると、扉のところに赫が立っていた。
茈「……赫」
赫「なぁ、茈」
茈「……なんだよ」
赫は、ゆっくりと近づいてきた。
赫「俺さ。お前といると、変なんだよ」
茈「……は?」
赫「知らないはずなのに、隣にいると落ち着くし。お前がいないと、なんか気になる」
赫は自分の胸元を押さえた。
赫「でも、なんでなのか分かんない」
茈は、何も言えなかった。
赫「……俺、お前のこと知りたい」
その言葉に、茈の心が揺れた。
もう一度、最初から。
そう思った瞬間。
茈「……じゃあ、ひとつだけ教えてやる」
赫「ん?」
茈「俺は、お前のことが好きだった」
赫の目が、丸くなった。
茈「今も、好きだよ」
言ってしまった。
ずっと言えなかった言葉。
忘れられた相手に伝えるには、あまりにも遅すぎる言葉。
茈「……返事はいらねぇから」
そう言って、茈は教室を出ようとした。
けれど。
赫「待って」
腕を掴まれた。
赫「……それ、ずるくない?」
茈「……何が」
赫「そんなこと言われたら、俺……お前のこと、もっと知りたくなるじゃん」
赫は困ったように笑った。
赫「……俺も、お前のこと好きになってみたい」
茈は、初めて赫の前で泣きそうになった。
# 04 忘れられないもの
その夜。
茈は、赫に呼び出された。
場所は、あの日と同じ屋上。
空には、無数の星が輝いていた。
赫「茈」
茈「……どうした?」
赫「俺、考えたんだ」
赫は、手の中にある小さなノートを見せた。
赫「これ、俺の机の中に入ってた」
表紙には、見慣れた文字が書かれていた。
『茈と俺の思い出』
茈「……っ」
ページをめくる。
そこには、ふたりの思い出が書き連ねられていた。
一緒に食べたもの。
一緒に見た映画。
喧嘩した日のこと。
仲直りした日のこと。
そして、最後のページ。
『もし俺が茈を忘れたら、これを読め』
赫「……俺が書いたんだよな、これ」
茈「……ああ」
赫「覚えてないのに、なんか……泣きそうになった」
赫はノートを胸に抱きしめた。
赫「俺、昨日までお前のこと知らなかったはずなのに」
赫「お前が笑うと嬉しいし、他の奴と話してると、なんか嫌だし」
赫「お前が俺のこと好きだって言ったとき……本当は、すごく嬉しかった」
茈は、黙って聞いていた。
赫「……これって、好きってことなのかな」
茈「……さぁな」
赫「そこは教えてくれよ!」
茈「自分で考えろ」
赫は、少しだけ頬を膨らませた。
それがあまりにも懐かしくて。
茈は、思わず笑ってしまった。
赫「……あ」
茈「ん?」
赫「今の顔」
赫は、茈をじっと見つめた。
赫「……なんか、知ってる気がする」
茈の胸が、強く鳴った。
赫「俺、お前のその顔……好きだったのかも」
茈「……赫」
赫「なぁ。俺、もう一度お前を好きになってもいい?」
茈は、今度こそ笑った。
茈「……何回でもなれよ」
赫「……じゃあ、覚悟しとけよ」
茈「何をだよ」
赫「今度は、俺から好きって言わせてやるから」
その言葉を聞いて、茈は小さく頷いた。
茈「……待ってる」
# エピローグ
[ 明日も、君を ]
それから一か月。
赫の記憶が戻ることはなかった。
けれど、ふたりは毎日一緒に過ごした。
朝、一緒に登校して。
昼、一緒にご飯を食べて。
放課後、くだらない話をしながら帰る。
まるで、最初からやり直しているみたいだった。
そして、ある日の帰り道。
赫「……なぁ、茈」
茈「ん?」
赫「俺、お前のこと好きだわ」
あまりにも突然だった。
茈「……は?」
赫「いや、だから。好き」
茈「……お前、急すぎんだろ」
赫「うるせぇ。俺だって、ずっと考えてたんだよ」
赫は、少し照れくさそうに笑った。
赫「記憶はないけどさ。お前といると楽しいし、離れたくないし……」
赫「お前が俺のこと好きだったって聞いてから、ずっと意識してた」
赫「……今度は、俺から好きになった」
茈は、しばらく黙っていた。
それから。
茈「……俺も好きだよ」
赫「知ってる」
茈「は?」
赫「だって、何回も言ってくれたじゃん」
赫は笑った。
赫「……ありがとな。俺のこと、諦めないでいてくれて」
茈は、赫の手を取った。
茈「……忘れてもいいよ」
赫「……え?」
茈「そのたびに、また好きにさせてやる」
赫は、一瞬きょとんとして。
それから、今まででいちばん嬉しそうに笑った。
赫「……じゃあ、何回でも好きになる」
夜空には、今日も星が輝いていた。
記憶は戻らない。
過去は、元には戻らない。
それでも。
明日、君が俺を忘れてしまっても。
俺は何度だって、君に恋をする。
――END――
コメント
1件
うわああああ最後まで読んじゃったよ〜〜〜!!!😭💕💕💕 「忘れても何度でも好きにさせる」っていう茈の覚悟がもう…刺さりすぎて息できんかった…。 赫がノート見て「覚えてないのに泣きそうになった」とこ、私も一緒に泣いたよマジで。 記憶なくても体が覚えてる感情ってあるんだなって思わせてくれたのがすごくエモかったです✨ ふたりがまた最初から恋をやり直すラスト、尊すぎて天井見た。 夜凪さん、素敵な作品をありがとうございます…!!🌸