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そして地面にめりこんでいるドラゴンの眼に刀を向け、
ドラゴンを見下ろす。
私は憧れの最高に中二っぽい言葉をドラゴンに放つ。
「あはは! トカゲぇ?
……チェック! メイちょ……ぁ……ょ…」
噛んだ。
「まさか……ここで……
最高の見せ場で……噛んだ……?」
間。コウモリが飛び立った。
「ふん。戦う私は美しい!!」
「勢いで乗り切ろうとしてる……?」
「おいおいおいーおぃいー?
もう終わりなのかぁー?
あはッ!あはッ!……げはははははーッ!
ぶひーぶひーぶひー!」
「ヒロインの笑い方ではない……
さっき取り消されてたしな……なるほど……
くっ……しかし、まさか光魔法だと……?」
「ぶひー? まだ続けるのかな?
かな? かなーッ?」
「……鬼が勇者……なのか?
なぜ魔王と一緒にいる?」
「かな……かなかなかな……」
言いながらドラゴンを真顔で見つめる。
「……やめろ。近づくな。見るな。ホントに怖い」
ドラゴンが怯えながら言った。
「色々あってね……私は勇者ってやつみたいね」
「……私は、この小娘を妹みたいなものだと想っている。
だから全力で守る」
「……ふ……良いだろう。我の負けだ。
魔王の怪我の治し方を教えてやる。なんか怖いし」
「あ! それから配下になりなさい」
沈黙。コオロギの声が響く。
「は……ぃ?」
「配下になれと言ってるのよーッ!」
私は刀をドラゴンの眼の前でぶんぶん振り回した。
ドラゴンの目の前で刀の風切り音がピュンピュン!と鳴り響く。
「……ちょッ! 刀……危なッ!?」
ドラゴンがのけぞる。
「ふははははは! 面白い! 気に入った!」
「勇者と魔王が一緒にいるだと……?」
「さらにはこの竜王も従える……?」
「……」
「これは非常に興味深い!
とても面白い事になりそうだ!」
「そうね。退屈だけはしないかな?」
「良いだろう!
魔王の配下になってやるわ」
「……いやいやいや! バカなの?」
ドラゴンの鼻先をペシっ。
「む?」
キョトンとするドラゴン。
「エスト様の配下じゃなくて、わたしよ。わ・た・し」
「ん……え……?」
ドラゴンは考え込んでいる。
「私に負けたんだから、お前は私の下だろうが!
この世は弱肉強食だろ? 舐めんなトカゲ!
おいコラ! トカゲーッ!」
地団駄を踏みながら刀をドラゴンの眼の前でめちゃくちゃに振り回した。
刀の風切り音がピュピュピュン!と鳴り響く。
風圧でドラゴンのまつ毛が揺れた。
「刀……危なッ……ちょ!
眼はやめてください!!
今のは危なかった!」
「おいどうなんだよトカゲ!」
ドラゴンの眉間にシワ。
「……あれ……?
この人……前回……靴を舐めて謝ろうと思いましたが、
靴を履いてないから爪でも良いですか!
って……泣きながら命乞いした人だよな……?
マウントを取るとこんなにも変わるのか……?」
「おぃい!! 聞いてるのかよぉおお!?」
刀の風切り音──ピュンピュンピュンッ!!
……サクッ!!
刀がドラゴンの鼻をかすめた。
「鼻ァ!!
……わ、わかりました……」
「よし。よろしい」
「あ、言っとくけど、私が勇者だとエスト様に喋ったら……
お前の尻尾が何回まで再生できるのか確認するからな?
楽しみだな!?」
「は、はい……秘密なんですね……」
「よし。私の名前はサクラよ。これからよろしく」
「はい……」
私はニッコリ微笑むと刀を収めた。
その私の姿をドラゴンはしばらく見つめていた。
その視線に、少しだけ、懐かしさと……
哀しさが滲んでいた気がした。
「……ユズリハ殿……」
その言葉に、私は思わず眉をひそめる。
「は? 何それ? 私のことじゃないわよね?」
「……いえ、失礼しました。
少し、記憶が混ざったようです」
……ユズリハ? 誰だそれ?
……なんか引っかかるな?
……なんか懐かしい……?
ふーん? ま、いいか。
「で、お前の名前は?」
ドラゴンが起き上がりながら言った。
「我の名は リンドヴルム です」
その刹那──!
「うん。“ヴ”が言いにくい! “辰夫”で良いな!」
「……リンドヴルムとは誇りある──」
「辰夫な! はい終わり!」
「……リンド……」
「辰夫」
「……辰夫……」
同時に私の脳内にムダ様の言葉が蘇る──。
『支配ってのはな、威張ることじゃない。
“名付けた責任”を背負うことだ。あと愛。
俺は昔、サボテンに「愛子」って名付けた。
愛が欲しかった。三日で枯れた。愛ってなんだ?』
大切なのは責任と愛ッ!!
つまり、毎月のエサ代と、呼びやすさだ。
「この名には私の愛と責任がある!
エサは自分で取れ!はい次!」
「エサ……ペット感覚……?」
辰夫が震えていたが、知らん。
そんなこんなでドラゴン(竜王)の辰夫を配下に従えた。
その時である──!
──テレレレッテッテッテー♪
【サクラのレベルが205に上がりました】
【新スキルを習得しました】
・格闘
・刀技
【新称号を獲得しました】
・竜王を従えし者
【エクストラスキルを習得しました】
・光の加護(※なぜか習得できた)
【スキルの進化が可能です。進化しましょう。面白そう】
【進化候補】
・スキル《体温調節 (変温性)》:進化可能です。
・スキル《冬眠》:進化可能です。
・スキル《鮭取り》:進化可能です。
空気が止まった。
「……誰が進化すんだよバカァ!!
出てこいシステム管理者!!」
「ひぃ……」
やたらと煽ってくるシステムにツッコんでる私を見つめながら、
辰夫は怯えていた。
「そんな事より辰夫!
エスト様の怪我の治し方を教えなさい。
魔王に光の回復魔法はダメなの?」
「は、はい!
光の魔法は魔王の肉体に害をなします。
ですが──」
辰夫は真剣な顔で続けた。
「我の負の魔力なら、魔王種の身体に調和します。
治癒の効果を発揮できるはずです」
「ブレスで治すの?」
「いえ……ブレスは破壊の力。危険すぎます」
「なるほど?」
「我の魔力を直接、魔王様の傷に流し込みます。
それが最も安全です」
「やっぱりそんな感じなのね。
では辰夫! 最初の命令よ! エスト様に魔力を!」
「はい」
フォオオオオオ……
辰夫は両手をエスト様の傷口にかざした。
禍々しい黒い魔力が、
まるで夜の霧のようにエスト様を包み込む。
エスト様の傷を覆った瞬間──
傷口がまるで時間を巻き戻すように閉じていく。
固唾を飲み、エスト様を見つめる。
すると──
「ぅ……ん……むにゃむにゃ……
……お姉ちゃん、また変なもの拾ったの……?
すぐに捨ててきなさい……むにゃ……」
エスト様の寝言が聞こえた。
「良かった……これで一安心ね」
「変なもの……いきなり捨てられる!?」
ホッと胸を撫で下ろした私は、その場に座り込んだ。
ドサッ。
「はぁ、疲れたぁ……」
こうして、前代未聞の魔王と勇者と竜王のパーティーが誕生したのである。
「むにゃむにゃ……うるさい……」
(つづく)
◇◇◇
──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──
『支配ってのはな、威張ることじゃない。
“名付けた責任”を背負うことだ。あと愛。
俺は昔、サボテンに「愛子」って名付けた。
愛が欲しかった。三日で枯れた。愛ってなんだ?』
解説:
ムダ様にとって”支配”とは、上下関係ではない。
それは「呼び名を与えた瞬間、自分の一部になる」という、恐ろしく人間臭い哲学だ。
ムダ様もかつて、コンビニのポイントカードに「チャッピー」と呼びかけていた。
だが、ポイントは有効期限で消滅した。
名付けには常に”喪失の覚悟”が要る。
彼は言う。
「名付けとは魂の契約だ。責任を持って愛せ。たとえそれがサボテンでも」
……なお、ムダ様はその翌週、新しいサボテンに「愛美」と名付けた。