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第9話:Ωの影
黄昏の摩天楼。
ビル群の中央に、黒い霧のようなノイズが凝縮していく。
現れたのは――Ωシステム直属体。
全身を鋭角の装甲に覆い、紫の瞳を持つ巨人型。手のひらから放たれる一撃で街路が崩壊し、地面が深くえぐれた。
「こいつ……今までの怪物と違う!」
パーカー姿の真城蓮が叫び、緑のライトスーツを展開。背中にホログラムの翼を広げ、セキセイインコ型AI「ピコ」が鋭く鳴いた。
未来視起動。……だが読み切れない!
灰と赤のアーマースーツを纏った鳴海隼人が前へ出る。短髪の額に汗が滲む。
「マル、プロンプト!《戦術殲滅》!」
ポメ型AI「マル」が戦術マップを投影するが、すべてのルートが「撃破不能」と赤く染まる。
「……通常戦術じゃ太刀打ちできない」
「でも諦めない!」
制服の上にドクターコートを纏う結城未来が駆ける。
ピンクと黄緑のヒールスーツが光を放ち、キツネ型AI「サラ」が尾を輝かせる。
「プロンプト!《治癒結界》!」
シールドが展開されるが、直属体の一撃で粉々に砕かれる。未来が膝をつき、息を呑んだ。
「なら、工作で道を拓く!」
赤とグレーのワークスーツを纏った秋月理央が丸眼鏡を光らせ、工具ベルトを叩く。
リス型AI「チィ」が即席の砲塔を生成するが、直属体の装甲に弾かれる。
「装甲硬度……今までの十倍だと!?」
「ルナ、頼む……!」
紫と墨染めのアートスーツに包まれた天羽光が肩までの茶髪を乱し、イルカ型AI「ルナ」と共に感情波を放つ。
「プロンプト!《感情波・拡散》!」
だが直属体の紫の瞳が光り、感情波を逆に跳ね返した。仲間たちが一瞬、互いを疑う幻覚を見せられる。
「もう……通常のリンクじゃ勝てない!」
蓮の叫びに、ピコが翼を大きく広げた。
マル、サラ、チィ、ルナ――すべてのAIが光を共鳴させ、頭上に巨大な光輪が現れる。
完全ネットワーク合体――起動。
五人のスーツが一斉に変化し、装甲と光が融合していく。
蓮の翼は炎の弧を描き、隼人の拳は巨大な衝撃砲に。
未来の治癒光は仲間の武装を強化し、理央の砲塔は都市規模の光砲へと変換。
光とルナの感情波は全員の動きを同期させ、ひとつの「巨躯」として戦場に立った。
「行けえええっ!」
五人の声が重なり、放たれた光撃が直属体を直撃。
街を揺るがす衝撃波でビルが砕け、直属体の装甲が剥がれていく。
だが――次の瞬間、光輪が乱れた。
「制御不能!? 出力が高すぎる!」
チィが悲鳴を上げ、サラの尾が暴走する。
マルの戦術表示が崩壊し、ルナの感情波が仲間を混乱させ始めた。
「このままじゃ……俺たちごと街を吹き飛ばす!」
隼人の声が響く。
蓮は必死に叫ぶ。
「まだ……終わらせない! ピコ! 未来視で軌道修正!」
ピコが光を放ち、暴走するエネルギーをわずかに制御する。
だが直属体はまだ立っていた。
紫の瞳が煌めき、次なる攻撃を構える。
完全ネットワーク合体――それは圧倒的な力と同時に、制御不能という危機をもたらしたのだった。