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テラーノベル(Teller Novel)
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この世界に存在する魔王を見たことはなく倒そうと思いもしない。


僕たちが生きるこの世界はいたって簡単だ。勇者というジョブを選び、ダンジョンで適当に遊びを繰り返すだけで名はすぐに広まる。そうして似たような思いを持った仲間を得られた。


賢者テミド・ザームもその一人だ。だがこの男は、持って生まれたスキルを使って魔物と戯れただけの男に過ぎない。つまりこいつは、賢者と呼ぶに相応しくない。せいぜい蛮勇な雑魚として生きる方がお似合いな奴だ。


そして聖女エドラ。

彼女は――


「勇者、賢者……どちらが正しくて、賢いだとかそんなのはどうでもいいことですわね。ただ一つ言えることは、好きに行こうとする輩には適当にあしらう方が利口者であると言えますわね」


この言葉を聞いて僕の心は決まった。賢者を名乗り、知性を捨てたテミドをいつかどこかで捨て去ると。聖女とはいえ、エドラの冷酷な顔は僕の理想に近く、共に動くのに適している。


そんな思いの中、僕たちに得られたのは名声。しかし最もいい気分になれたのは、雑魚な冒険者どもの無駄で無用な崇めだった。世界を狂わす魔王なる者に挑まずとも世界は常に動く。


混沌となれば面白いし、そうでなくともこの世界の人間たちは勇者という人間を偉大な者としていつまでもくだらない憧れを抱き続ける。この世は魔物さえ倒していればすぐに強くなれる。Sランクに上がるだけで、手っ取り早く名声を上げられたのもそういうことだ。


「なぁ、Sランクってのは何が違うんだ?」

「……分かりやすく言えば冒険者の間では、総合的な強さは全てランク付けをしているんだ」

「へぇ? ってことは、俺らは最高の冒険者ってわけだ! 他の冒険者は文句の一つも言えねえわけか。面白え!」


ふん、僕のおかげでSランクになれたんだ。名ばかり賢者のお前ごときに何が分かるというのか。この男についてはおいおい手を打つとして、僕の中でただ一つ気に入らないのは生まれつきのユニークスキルを持たなかったことだ。


この世界のどこかの町にジョブを持たない人間たちがいる。その人間たちを従わせれば、生きていくのに不自由なく過ごせる。それには聖女エドラと細かく決めて、それからテミドを何とかすればきっと上手くいく。


勇者という名声を利用して、まずはそいつの話を探してみるのが一番てっとり早いだろう。使えるスキルなら使ってやる。


そうでなければ名声をさらに上げるやり方でそいつを消す。


――あぁ、楽しみだ。

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