テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#一次創作
ruruha
257
ruruha
848
323
進むと、下と上に階段がある。
下の方へ進む。
ドアをくぐると、部屋の中に樽が並んでいた。
ワインセラーね。
何だか変な臭いがしてる。
酸っぱいような、腐っているような……。
樽の中のワイン、腐っているのかしら?
でもこれ、ワインの臭い?
ワインが腐ってこんな臭いするかしら?
樽の中身、気になるな……。
試しに樽のコックをひねってみた。
「!!」
赤い液体が流れ出して、びちゃびちゃと床を濡らした。
中に入っているの……血……!?
それも腐った……!
慌ててコックを閉じた。
ち、違うわ!
だって血は固まるはずだもの。
だから違う……血なんかじゃない。
これは赤ワイン。
きっとほんのちょっと古いだけのもの。
樽や木箱など物は多いのに、役立ちそうなものは見当たらない。
まっすぐ廊下を進む。
ここは……人工の池?
ちょっとしたプールにも見える。
でもこんなところで泳ぎを楽しむ人がいるとは思えないから、やっぱり池なんだろう。
池は澄んだ水をたたえている。
底がくっきり見える。
大きな池。幅、十メートルくらいはありそう。
中央には二つの壁が二メートルほどの間隔を開けて、平行に並んでいる。
透かしになっているその壁は水中から生えていて、池を二分化していた。
透かしの壁の向こうに、反対側の岸が見える。
ここだけは妙に綺麗だ。
汚れた場所にある唯一の清浄な場所……。
綺麗すぎてなんだか怖い。
池の四隅には白い石で作られた台座があって、剣が奉られている。
その剣に近づいてギョッとした。
台座の上、剣は布で覆われた何かに直接刺してある。
布には、ドス黒いシミが広がっていた。
何か、小動物を……?
「…………」
この剣の長さじゃ、杖にするには足りないわね。
階段が二つに分かれているところまで戻り、上の階段を上る。
部屋に入ると、私は顔を顰めた。変な匂い。
甘ったるい重い匂いが鼻につく。
見れば、部屋の隅には大きな香炉があって煙をくゆらせている。
この匂いね……。
あまり好きな匂いじゃないな。
なんだか酔いそう。
部屋の中央には大きな檻があった。
人が入れるほどのそれは、巨大な鳥籠に見える。
これならダチョウだって入りそうだ。
でも、今は空っぽ。
その檻を囲むように床に何かの図形が描かれ、それに合わせて、三つの杖が台座に立ててあった。
杖は木製で、てっぺんには動物の角があしらわれている。
魔法使いのおばあさんが持っていそうな大きな杖だ。
これ、いいかも……。
ちょっと頭のイガイガが邪魔だが、杖の替わりになるんじゃないかしら。
まさに杖だもの!
私は台座から杖を引き抜こうとした。
「あれ……」
びくともしない。
完全に台座と一体化している。
この杖は実用的な物じゃなくて、装飾的なものなのだろう。
困ったな。
ちょうどいいものを見つけたと思ったんだけど……。
杖の刺さっている台座はしっかり床に固定され、杖もガッチリ固められている。
抜くのは無理そう。
切らないと……。
杖は木だから……ノコギリでもあればいいね。
そんな物あるかな?
試しに奥のドアを潜り階段を上ったら、ドアがあった。
しかし鍵がかかっている。
中に入れそうにない。
階段を二つ下がって酒樽の間に来た。
濃い血の臭いが蔓延している。
ここには何もない。
奥に進むと、白い石で作られた人工の池が広がる。
水は澄んでいた。
池の隅には、剣が奉られている。
そうだ。
この剣杖の代わりは無理でも、ノコギリ代わりにはなるかもしれない。
大きな鳥籠のあった杖を切り取るのに使えそう。
こんなの触るなんて、気味悪いわね……。
「…………」
覚悟を決めて、剣に手をかけた。
布に染み込んだ血は、完全に乾いている。
それが何なのか分からないものの、その命を奪われたのはもう随分前。
布の下の「何か」が持ち上がらないよう、注意して剣を引き抜く。
カスッという軽い感触と共に、剣は抜けた。
剣は年代ものらしく、刀身には血がこびりついている。
が、その刃は鋭さを保っていた。
これなら、きっと杖を切れるわ。
階段を二つ上って、二階の雛鳥の間だ。
これで切れるといいな。
私は地下の池から持ってきた剣で、杖を台座から切り離すことにした。
最初はノコギリのように引いてみたのに、ちっとも切れない。
仕方ないので、ナタのように幾度も刃を杖に打ちつけた。
がつっ。がつっ。硬い……。がつっ。がつっ。
それにしても、この部屋はなんて甘ったるい匂いなの。
目が回る。
がつっ。がつっ。
叩いて。叩いて。叩いて。叩いて……。
がつっ。がつっ。
やがて、肩で息をしながら剣を置いた。
切れた……。
切れたというより、折れたという方が近い。
なんにせよ、これでリズのところに戻れる。
切り離した杖は本来より少し短くなってしまったけれど、元々長かったから問題ない。
「!」
立ち上がった時急に眩暈がして、思わず杖で体を支えた。
なんだろう。貧血?
眠いような、気持ち悪いような……。
部屋のお香の匂いに酔ったのかも。
本当にこの匂いは……たまらないわ。
早くリズのところへ戻ろう。
コメント
1件
ああ、もう、ぞわぞわしながら読んじゃいました……。樽から流れ出た赤い液体が血じゃないって自分に言い聞かせる主人公の心理、すごくリアルで胸が苦しくなりました。それに、あの不気味な池と剣。清らかなのに恐怖を感じる描写、巧いなあって。最後にお香でふらつきながらも杖を手に入れてリズの元へ戻ろうとする姿に、彼女の意志の強さを感じました。続きがすごく気になります!