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「ここが、私の部屋だ」
扉が引き開けられると、中から「ニャー」と猫の鳴き声がした。
「猫ちゃんがいるんですか?」
顔を向けて問いかけると、「そうなんだ」と彼が返して、タイル張りの床に気持ち良さそうに寝そべっていた猫に近づいた。
「こんなところにいたのか、ミルク」
彼が腕に抱き上げると、真っ白で長い毛並みの猫が、応えるように「ニャー」とまた小さく鳴いた。
抱かれた猫の顔を覗き込むと、イエローとブルーのオッドアイになっていた。
「わぁー、とっても可愛くて。なんていう種類なんですか?」
「ターキッシュアンゴラと言って、オッドアイが有名な猫なんだ」
「そうなんですね……」頷いて、まじまじと猫を眺める。
その猫は聞いたことのない猫種な上に、見たこともないくらいに綺麗で優雅な気品を感じられた。
「きっと掃除の時に、入り込んだんのだろう。猫は、君は大丈夫か?」
「ええ」と、答えて、「今度、お店の方でも、猫の香水を売り出すんですよ」と、彼に触れ込んだ。
「猫の香りか、それは私も試してみたいな」
抱いていた猫を彼が床に下ろすと、私の足元にも「ニャーン」と鳴きながら、身体をくねらせて擦り寄ってきた。
「彼女も、猫の香りに興味があるのかもしれないな」
フッと笑って言う彼に、「では一番最初に香りを試すのは、貴仁さんではなく、ミルクちゃんの方ですね」私からもそう笑顔で返した。
「ああ、残念ながらな」
「ふふっ、だけど香料は猫には実際あまり良くないこともあるので、ぜひ最初は貴仁さんに」
耳元に顔を寄せてそう囁くと、ミルクがジェラシーを感じてなのか、隣り合って立つ私と貴仁さんの間にぐりぐりと頭を突っ込み割って入ってきた。
「……嫌われちゃったでしょうか?」
ふさふさとしたしっぽを揺らしながら、二人の足の間を行ったり来たりしているミルクを、ちょっと気になって見下ろした。
「いや、本当に嫌いならば寄っては来ないからな。ならもっと君と仲のいいところを教えておこうか?」
今度は彼が私に囁きかけて、唇をチュッと軽く触れ合わせた。
すると彼女は、私たちの仲を認めてくれたのか、その美しいオッドアイで交互に顔を見上げ、「ニャオーン」とひときわ大きく鳴いた。