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朝は、昨夜をなかったことにする速度が早すぎる。
カーテンの隙間から入る光が、テーブルの上を照らして、水が減ったコップと一つの薬袋を浮かび上がらせた瞬間、俺は無意識に視線を逸らした。
仁人がそれを見たら、きっと首を傾げる。
そして…覚えていないことを、笑って誤魔化す。
「おはよ」
背後から声がして振り返ると、仁人はいつも通りの顔で立っていた。
眠そうで、少しだけ疲れた顔。
でも、決して壊れているようには見えない。
『おはよう。頭、痛くない?』
「んー、まぁちょっとぼーっとするけど、大丈夫」
その“大丈夫”が、俺の胸を一番締めつける。
テーブルの上の薬袋が気になって、手に取る。
「ねえ、これ…俺の?」
『…うん、』
「使った記憶ないわ笑」
冗談っぽく言ったのに、勇斗の返事は一拍遅れた。
その間が、妙に引っかかる。
スマホを開いた瞬間、さらに胸がざわついた。
画面に映っていたのは未送信メッセージ。
宛先は____勇斗。
《未読メッセージ》
もう無理かもしれない。
ちゃんとしてるつもりなのに、全部空回りしてる気がする。
笑ってるのが楽にならなくて、 何をしてもちゃんと出来てない気がして。
勇斗に迷惑かけたくないのに、 でも一人になると、どうしていいか分からない。
ねぇ…助けてって言うの、ずるいかな
それでも____
そこで文章は切れていた。
「ねえ勇斗」
『ん?』
「俺…昨日の夜、何してた?」
来た、と思った。
でも答えが出てこない。
『…覚えてないなら、いい』
「え?」
『無理に思い出さなくていい』
仁人は少し困ったように笑った。
「そっか」
それだけ言って、深くは聞いてこない。
その直前、仁人が振り返って言った。
「…思い出したら、教えて?」
俺は、目を合わせないまま答えた。
『…また今度な』
to be continued…