「朱里さんは自慢のぱいがあるからいいわよねぇ……。柔らかくて愛撫のしがいがあるわ。私はいつだったか、男に『アスリートみたいな体をしてるね』って言われたわ……」
春日さんは自分の胸に手をやり、溜め息をつく。
「……という事で、巨乳に触ったら御利益があると思って……」
「ないないなー……、ファ!」
片手を顔の前でブンブンと振っている隙を突かれ、春日さんに両手で胸を揉まれてしまった。
「っあ~~~~……、やぁらかいわぁ……。このひと揉みのために生きてる」
「「おっさんか!!」」
私とエミリさんの声がハモった。
「でも速水さんだってそう思ってるに決まってるわよ。極上だもの、この乳は。揉みごたえ抜群、健康と安眠も促進してくれそう」
「や、そんな御利益ないっす」
「あ~~~、この乳私のものにしたい。どう? うちの子にならない? 可愛がるわよ? エステでピカピカにしてあげる」
「や、私の乳は私のもんなので、所有権は渡さないっす」
「やーん、朱里さんごとほしい! レンタルさせて!」
「尊さんに聞いてください! もぉ!」
強引に起き上がった私は、春日さんの両頬を摘まんでムニムニする。
「このこのこの!」
「きゃ~!」
春日さんは友達にこういう事をされた事がないのか、めちゃくちゃ嬉しそうに声を上げる。
「ぱんちぱんちぱんちぱんち!」
調子に乗った私は、さらに春日さんの肩を両手でポンポコとパンチラッシュした。
「ヒヒヒヒヒヒ」
「お、喜んだ」
エミリさんが突っ込み、その様子を動画に撮っている。
「速水尊、送信」
「えっ!?」
まさかまた尊さんに送られると思っていなかったので、私は声を上げてエミリさんを見た。
「あ、返事きた」
「なっ、なんて言ってますかッ!?」
私は思わず食い気味にエミリさんに尋ねてしまう。
「『明日のチェックアウトの時、預けていた猫を引き取りにいく』だって。猫!!」
「ニャーーーーオ!!」
案の定、二人は大喜びし、春日さんは化け猫みたいな声を上げてから「ガハハハハ!」と笑う。……こりゃ駄目だ。
「……そろそろお開きにしましょうか。春日さん、潰れてきてる」
「まだ大丈夫~~~~。酔ってなぁい!」
彼女は駄々っ子のように首を振り、私に抱きついてくる。
「酔っ払いは決まってそう言うんですよ」
私はポンポンと春日さんの頭を撫で、「立てますか?」と彼女に肩を貸して立ちあがる。
「歯磨きしてから寝ましょうね」
「んー……」
私も割と飲んだら酷く酔っぱらうタチだけど、自分より酷い人を見ると結構冷静になるもんだ。
「じゃあ、私この辺片づけるわ」
エミリさんはそう言ってテーブルの上を片づけ始め、私は春日さんを引きずって洗面所に向かう。
「はい、一緒に歯磨きしましょうね」
「はーい!」
顔を赤くしてニヤニヤしている彼女を見ると、泣く子も黙る三ノ宮グループのお嬢様と思えない。
(でもお嬢様だから悩み知らずの立派な人……ってのは、偏見なんだよな。今回の女子会で凄くわかった。逆に一般人だから苦労して当たり前、ってのも違うし、どんな環境でもつらさをうまく昇華できる人は、他人が〝苦労〟と思うものを抱えていても、それほどつらいとは感じていない)
春日さんは思うように彼氏が作れなくて苦しんでいるけれど、人によっては彼氏がいなくても何とも思わない人もいる。
恵もそういうタイプで、彼女の場合は私と一緒にいるために、カモフラージュの相手を探しているほどだし。
(みんな、それぞれだな)
歯を磨き終わってうがいをした私は、洗面所に置いておいたサプリを春日さんに渡した。
「はい、どうぞこれ」
コメント
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楽しい(≧∇≦)♥️