テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
真都がシャワーから上がると、蓮はソファに腰掛けて待っていた。毛布や服をせっせと運ぶ真都を、ただ静かに目で追う。
《蓮・……可愛いな》
声をかけても手は出さない。
──Ωの巣は、その本能に任せた方が安心できると知っているから。
しばらくして、真都が布団の山の中から顔を出す。
《真都・蓮くん!上手にできてる?♡》
《蓮・うん、すごく上手だよ。マイらしくて可愛い》
褒められて、真都は嬉しそうにスリスリと蓮の服を抱きしめる。
──その服は、もちろん蓮が着慣れたもので、フェロモンが濃く残っている。
蓮は最後まで口出しせず、ただ「可愛い」「似合う」と褒め続ける。
真都にとって、それが一番安心できる手伝い方だった。病院の待合室。
隣の席では、同じくヒート前のΩとαカップルが小声で口論している。
《α・こっちの毛布のほうが暖かいから、こっちにしなよ》
《Ω・やだ!その色は落ち着かない》
《α・でも見た目こっちのほうが──》
《Ω・触らないで!》
Ωがぷいっと顔を背け、持っていた毛布をカゴに戻してしまう。
その様子は、完全に「作り直すモード」に入っていた。
その光景を横目で見ながら、蓮はふっと笑って真都を見る。
《蓮・……マイの巣作りに俺が口出ししないの、わかったでしょ?》
《真都・〔笑〕うん、蓮くんは最初から褒めてくれるから好き》
蓮は肩をすくめ、軽く真都の髪を撫でた。
「可愛いな」と心の中で繰り返しながら。
初めての頸噛みシーン
《蓮・……マイ》
蓮の声が低くなって、背後からふっと抱き寄せられる。
次の瞬間、ぐいっと体が前に押し倒され、両腕と腰をしっかりと抑えられた。
《真都・ッ、れ、蓮くん?》
背中越しに感じる体温と重み。
Ωとして生まれてから、何度も耳にしてきた「頸を噛まれる瞬間は逃げられない」って話が脳裏をよぎる。
理屈じゃ分かってる。これは“番”になる証だって。
でも——心臓が痛いくらい早くなる。
《真都・…や、ちょっと、怖…》
蓮は一瞬だけ動きを止め、ゆっくりと耳元で囁く。
《蓮・大丈夫…無理矢理なんてしない。嫌ならやめる》
その声が、押さえつける手の強さとは真逆の、優しい声だった。
体を反転させられ、正面からぎゅっと抱きしめられる。
《蓮・怖がらせてごめん。…俺は、マイを守るために噛みたい》
そう言って、今度はゆっくり、真正面から首筋に唇を寄せる蓮。
怖さよりも、温かさと安堵が胸に満ちて、真都は目を閉じて頷いた。
《蓮・ごめん、、怖がらせてまた今度にする?》
蓮の手がそっと腰から離れて、押さえつけられていた力も解ける。
その瞬間、真都は息を大きく吐き出した。
胸の鼓動はまだ早いけど、蓮がすぐ引こうとする優しさに、不安が少し和らぐ。
《真都・……や、違う。蓮くんだから……いい》
小さく呟いて、ぎゅっと蓮の服を掴む真都。
《真都・びっくりしただけ…噛んでほしいよ》
蓮はほんの一瞬だけ目を見開き、すぐに柔らかく笑った。
《蓮・……そっか。じゃあ、ゆっくりいくな》
そう言って、もう一度正面から抱きしめ、真都の首筋に唇を押し当てる。
さっきよりもずっと優しい、けれど確かな決意を込めて——。
《蓮・……そっか。じゃあ、ゆっくりいくな》
正面から抱きしめられたまま、真都は首筋に蓮の息がかかるのを感じた。
温かくて、少し震えている。
次の瞬間——
カプ、と優しく皮膚が破れる感覚。
痛みよりも、甘い熱が全身にじわっと広がっていく。
《真都・……っ♡》
思わず声が漏れ、体が勝手に蓮にしがみつく。
視界が少し滲んで、心臓の音がうるさいくらい響く。
蓮の匂いが一気に濃くなり、真都の中のΩの本能が反応する。
“この人は、自分のαだ”
それ以外の考えが全部吹き飛んで、安心と高揚で胸がいっぱいになる。
《蓮・……マイ、これで俺たち、もう離れられないな》
耳元で低く囁かれた瞬間、真都の尾てい骨の奥がきゅうっと熱くなる。
もう、完全に番になった証。
初めて蓮が自分の体を開いた夜。
長い前戯と、何度も「本当にいいのか」と確かめる蓮の声。
αなのに、まるで守られる側のΩみたいに受け入れる蓮の背を、真都は震える手で抱きしめていた。
終わったあと、互いの呼吸がやっと落ち着いた頃。
まだ熱の残るベッドの中で、真都は蓮の頬に額を寄せ、小さな声で言った。
「ねぇ蓮くん…」
「ん?」
「ちゃんと…蓮くんと赤ちゃん作るときまで、俺…処女守るから」
ふっと息が詰まる。
さっきまで自分の奥で震えていた恋人が、そんなことを真剣な目で言うなんて思ってもみなかった。
「…俺のために?」
「うん。蓮くん以外、嫌だもん」
その一言に、蓮の胸の奥がじわっと熱くなる。
誇らしくて、嬉しくて、そしてどうしようもなく愛しい。
「…わかった。じゃあ、俺も守る。約束な」
「うん、約束」
二人はそっと小指を絡め、唇を重ねた。
それは誓いのキスであり、互いの未来を結ぶ小さな鎖のようだった。
蓮が眠ったあと、真都は横で静かに天井を見つめていた。
さっきまで、自分の腕の中であんなに乱れていたα。
本来なら自分を押し倒す側の人間が、プライドも全部脱ぎ捨てて、自分のためだけに体を開いてくれた。
──あんなの、嬉しくないわけがない。
自分のために、何度も準備を繰り返したこと。
きっと恥ずかしいことだってあっただろうに、それでも「真都を守るため」という理由で全部飲み込んでくれたこと。
その全部が、胸の奥でじんわりと熱になって広がっていく。
眠る蓮の横顔を見ながら、真都はそっと唇を寄せる。
「…ありがと、蓮くん」
小さく呟いたその声は、シーツに吸い込まれて消えたけれど、
自分の中の温かさは、いつまでも消えなかった。《蓮・マイ〜俺のパンツ知らない?》
蓮はベッド横の床を探すため、無防備に屈み込む。
その瞬間、ルーズなTシャツの裾がふわりとずれて、昨夜の余韻を物語る場所があらわになる。
《真都・♡》
声には出さない。
でも視線はどうしてもそこに吸い寄せられる。
αらしからぬ縦に割れた柔らかなアナルが、呼吸に合わせてわずかにクパクパと動いている。
昨夜、自分を奥まで受け入れてくれた証拠。
真都の中で、それはもう反則級にエロい光景だった。
――ああ、やっぱりこの人、俺のものなんだ。
唇の端が、自然と上がる。
蓮は何も気づかず、真剣な顔でパンツを探し続けていた。
《蓮・?マイ、まだ眠い?可愛い〔笑〕》
振り返った蓮が、何の警戒もなくふわっと微笑む。
そして屈んだままの体勢から、そのまま真都を引き寄せて抱きしめた。
温かくて、安心する匂い。
昨夜あれだけ乱れていたはずなのに、こんなふうに優しく抱いてくれる蓮が、たまらなく愛しい。
(……俺、今めちゃくちゃ悪い顔してるかも)
心の中でそう思いながらも、真都は腕を回して、蓮の背中に指を滑らせる。
蓮はまだ何も気づかず、柔らかい声で耳元に囁いた。
「もうちょっとだけ一緒に寝る?」
その言葉が、余計に真都の独占欲を煽った。
蓮の腕の中で、真都は甘えるように抱きしめ返す。
温もりを確かめるみたいに、顎を蓮の肩へと預けた。
「ん……蓮くん、あったかい」
そう呟きながら、視線は別のところへ。
蓮が背中を撫でるのに合わせ、ほんのわずかに手をずらす。
指先が、ゆっくりと蓮のTシャツの裾へ――。
気づかれないよう、呼吸も乱さずに布を少しずつ捲り上げる。
昨夜、自分を奥まで受け入れていたαとは思えないほどの、縦に割れた柔らかい場所がそこにあった。
(……やっぱり、すっごくエッチ)
真都は笑いそうになるのを堪えながら、じっと見つめ続けた。
蓮は何も知らず、幸せそうに真都の髪を撫でている。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!