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取材も終わり稲荷崎の荷物置き場まで歩いていく。すれ違いざま色んな人に声かけられて、写真だのサインだの頼まれた。全然良いのよ?でもね、
摩浪『今の俺はただの学生なんだが?』
トコトコ歩いていくと手洗い場を見つけた。顔を洗い姿勢を元に戻すと、鏡に見慣れた顔が映ってた。
摩浪『…………こんちは』
赤木「もっと驚けや!笑」
摩浪『俺は簡単に驚きません』
赤木「せやった。それにしても遅かったな。信介と監督はすぐ戻ってきたんに」
摩浪『あー、ファンの方々に捕まりまして、サインやら写真やらをお願いしますと』
赤木「アイドルや笑」
摩浪『はぁ……』
赤木「あ、嫌やった?」
摩浪『((-ω-。)(。-ω-))フルフル』
俺は首を振り赤木さんの目を見る。
摩浪『嫌じゃないですよ。でも、その、アイドルの俺じゃ無くて、稲荷崎バレー部の摩浪が良いです』
赤木「そっか……そうやな!」
彼は俺の手を握る。
赤木「戻ろ!みーんな待っとるで」
摩浪『!…はい』
赤木「ほーれ行くで行くでー!」
摩浪『手は離してください』
赤木「何でやねん!嫌やからな!離さん!」
彼に手を引かれ歩き出す。やっぱ俺より身長が高くて大きい体。歩幅が違うけど俺に合わせてくれる。優しくてかっこいい赤木さん。
さっきは何か照れ臭いこと言ってしまった気がする。自分の事アイドルって言っちゃったよ、しかも目をしっかり見て。あー恥ずい!!
??「あ、あの!」
摩浪『ん?はい』
??「サイン良いですか?」
摩浪『いいよ』
小さい男の子に声を掛けられ、差し出された色紙にサインをする。こんな小さい子でも俺の事知ってんのかな?
摩浪『君、名前は?』
波瑠「波瑠だよ!」
摩浪『何で俺の事知ってるの?』
波瑠「バレーが強いから!」
その言葉を聞いた時俺の心の中がキュってなった。
摩浪『バレー……好き?』
波瑠「大好き!だって摩浪くん強いし周りを明るくするんだよ!」
摩浪『俺が…?』
波瑠「うん!ボクね今、小学2年生なんだ。はじめて摩浪くん見たのが5歳のとき」
摩浪『もしかして、俺が中学の時から?』
波瑠「そうだよ(*´˘`*)」
そんなに小さい頃から俺のことを……。凄いな。
摩浪『君にとって、俺はどう見える?』
波瑠 「(。-ˇ.ˇ-。)ん~。」
少し悩んで直ぐに答えてくれた。
波瑠「スーパーヒーロー!」
摩浪『!』
波瑠「強いし、チームのピンチを助けたから!」
摩浪『そっか、ありがとう』
波瑠「ううん!こちらこそありがとう!」
摩浪『バレーやってるの?』
波瑠「やってる!いつか摩浪くんみたいになる!」
摩浪『楽しみにしてるね』
波瑠くんに手を振り立ち上がる。彼の背格好は小さい、小学生の時の俺みたい。
赤木「良かったやん、あんなに小さい子にファンがおって。摩浪に憧れ抱いとるんやな」
摩浪『……』
赤木「?」
摩浪『ですね。……バレーやってて良かった』
赤木「俺も」
もう一度赤木さんに手を握られ歩き出す。
摩浪『あの、』
赤木「ん?」
摩浪『…………、手が、その。汗かいてるんで離してくださいませんか?』
赤木「俺は気にならんけどな」
摩浪『俺が気になるんです。俺の汗で赤木さんの手が汚れるって考えただけで恐ろしい』
赤木「いや、気にし過ぎ笑」
さっきより強く手を握られた。しかも俺の顔にずいっと近づいてくる。
赤木「またファンに捕まらんために繋いどくねん。早よ行かんと皆心配するしな」
摩浪『そうすか』
赤木「(なーん言うのは前置きで、本当は俺が手繋ぎたいだけなんやけど(ノ≧ڡ≦))」
手を繋いだまま稲荷崎の荷物置き場に戻る。周りはこのことに気付いてないし気になりもしないだろう。でも、俺は今、とてつもなく照れてる。