テラーノベル
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曲の終わりに、キリトは少しだけ間をおいて、
「ありがとう…」と、口にして、
「愛してる…」と、続けた。
ファンに向けられたのだろうその言葉は、やさしく愛しさに満ちていて、彼を好きでいる一人として、幸せにも感じられた。
──生番組を終えた後、しばらく時間が過ぎてから、
「……ミクル、俺の歌、見てくれた?」
と、カイトから電話が入った。
「うん、もちろん見てたよ」
「じゃあ聞いてくれた? 最後の言葉も」
「うん、聞いたよ……」
思い出すと、にわかに顔が赤らむのを覚えた。
「あの言葉は、俺をずっと支えてくれた、ファンのみんなに向けたものだけれど……」
「うん…」と小さく頷きを返す。
「でも、誰よりも支えてくれたミクルにも、向けたものだから……」
「私に……?」一瞬ドクンと心臓が跳ねる。
「うん…だから、絶対見てって伝えたんだ」
言って、ふとカイトが電話越しに押し黙る。
「……だけど、やっぱりミクには、直接言いたいと思ったから……」
「えっ…?」再び心臓がドクンと脈打つ。
「……愛してる……ありがとう、ミクル……」
「カイト……」
名前を呼んだけれど、胸がいっぱいになり、その後をなんて続けていいのかがわからなかった。
「ミク…ごめん。これからまだ仕事があって、電話…またするから」
「うん…がんばってね…」
「ああ、じゃあ、また…」
電話が切れると、彼への思いが、どうしようもなく募って、会う度に好きになる気持ちが止められなくて、このままではいけないようにすら思えるようだった……。