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鷹槻れん

53,239
篠原愛紀
821
第4話:過保護な二人に愛を込めて
「――ジョシュア様。それに、お兄様も」
放課後の生徒会室。
夕暮れのオレンジ色の光が差し込む室内に、ステラの低く、しかししっかりと芯の通った声が響いた。
いつもは「シエル」と呼ぶ兄をわざわざ「お兄様」と呼んでいるあたり、現在の彼女の心境がよく表れている。
完璧な淑女たるステラが、小さく両手を腰に当てて二人を睨んでいた。
その頬は少しだけ怒りで膨らんでいる。
「カトリーヌ様が急にご自主退学をなさるだなんて、お二人が裏で何かされましたわね?」
机を挟んで並んで立つジョシュアとシエルは、王国を揺るがす天才二人とは思えないほど、揃って気まずそうに視線を泳がせた。
「……ステラ、僕たちは君の教科書を無事に戻しただけだよ」
「左様だ、ステラ。アストリア家の跡取りとして、妹の不利益を看過できなかっただけだ。決して私情ではない」
息の合った言い訳をする二人に、ステラは小さくため息をついた。
「嘘を仰らないでくださいませ。ミレニア侯爵家が東部の利権を全て国に返上したと、先ほど耳にいたしましたわ。私の教科書一冊のために、そこまでなさるなんて……やりすぎですわ!」
ぷんぷんと怒るステラだが、その瞳には二人への深い呆れと、それ以上の「愛されていることへの照れ」が滲んでいる。
そんな彼女の健気な姿に、ジョシュアの我慢は限界を迎えた。
「――やりすぎなものか」
ジョシュアはすっと長い足を動かし、ステラの目の前まで来ると、その華奢な肩を優しく、けれど強く引き寄せた。
「ジョシュア様……っ?」
「君を害しようとする者は、例え髪の毛一本、言葉一つであっても許さない。僕は君の未来の夫だ。君を守るためなら、僕はいくらでも冷酷な暴君になってみせる」
サファイアブルーの瞳に宿る、深く、底知れないほどの独占欲。
背後では、シエルが「やれやれ」と眼鏡を指で押し上げながら、静かに部屋を出ていく気配がした。
妹の説教から逃げると同時に、二人きりにしてやるための、彼なりの気遣い(と諦め)だった。
「シエルまで……もう……」
部屋に残されたのは、二人だけ。
ジョシュアはステラの耳元に顔を寄せ、低く甘い声で囁いた。
「怒ったかい、ステラ?」
「……怒って、おりますわ。お二人とも過保護すぎます」
「そうか。では、怒った可愛い婚約者に、お詫びをさせてほしい」
気付けば、ジョシュアの唇がステラの額、そしてふっくらとした美しい唇へとゆっくり重なっていた。
深く、息もできないほどの甘いキス。
怒っていたはずのステラの身体から、すうっと力が抜けていく。
彼女はジョシュアの首に細い腕を絡ませ、その圧倒的な愛の深さに、ただただ甘やかに溺れていくのだった。
コメント
1件
うわぁ……第4話、もう完全に「過保護」の域超えてるよ😂✨ ジョシュア様の「冷酷な暴君になってみせる」発言、胸きゅんが止まらない…!でもステラが怒りつつも照れてるの、可愛すぎるでしょ🥺 シエル兄が逃げるところも含めて、この家族(+婚約者)のバランスが絶妙で、読んでてすごく温かい気持ちになったよ。愛が重いのに、心地いいって不思議…! 次も楽しみにしてる〜🌙🤍