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上野文
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てく
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狐雲がありし日に想いを馳せていた頃、竜の寝床では一人の男神の咆哮が轟いていた。
「どけどけどけええぇぇ! 蛇珀様のお通りだああぁぁ!!」
剣山のように無数の針が生え揃う道を、蛇珀は素足で駆け抜けていく。
竜の寝床とは天獄の内にある世界のことで、わかりやすく言えば地獄である。
人間界で罪を犯した者たちが魂だけの姿と化し、苦行を受けることで穢れを浄化する場。黒とも灰とも判別のつかない濁った色をした太い道は竜の身体のように長くうねり、そのとぐろの先端は毒々しい黒紫の雲に隠れ決して見えなかった。
その渦を巻いた出立ちがまるで竜が横たわっているように見えるため、竜の寝床と名付けられたのだ。
罪人はその最後まで辿り着けば、ようやく痛みや苦しみから解放され成仏することが許される。
しかしあまりに果てない道は、ほとんど終わりのない永遠の地獄と化していた。
蛇珀の苦行はこの竜の寝床の先端まで到達することである。
他の罪人たちとは事情が違うため、蛇珀は肉体を与えられここに放り込まれていた。
これは苦行であり、試練であり、そしてもう一つ、修行でもあった。
いろりの色香に当てられ、大地を震えさせてしまう未熟な精神を叩き直し、絶対的な根底理性を創り上げるための荒療治に似た鍛錬であった。
この苦行が成功すれば、蛇珀は一回り成長することだろう。
もちろん成功すれば、の話だが。