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第5話:「ツムが嫉妬MAXな件について」
放課後の美術室。
今日は、同じクラスの男子・ナカジとたまたま一緒になった。
「いちか、これ影の入りヤバくね?プロか?」
「ふふん、プロいちか。略してプロちかやで」
「それ略す意味ある!?プロ感なくなったけど!?」
ちなみにナカジとは“ふざけ倒す同盟”を結んでいる。
クラスでは一緒にお菓子タワー作ったり、プリントを紙ヒコーキにして飛ばしたり、まあまあアホな関係。
そんなこんなで笑ってると——ガラッ。
「……ん?」
現れたのはもちろん、金髪のボケ担当・宮侑。
だが、今日は様子がいつもとちょっとちがった。
「お、おぉ……ナカジくんやっけ?何してんの?」
「え?いちかに美術のアドバイスしてもらってた」
「……ふ〜ん」
その“ふ〜ん”が、地味に怖い。
目、笑ってない。え、ツムってそんな顔できたっけ?
「ツム、お疲れ。今日はナカジが居るからちょっとにぎやかで——」
「そっか、ナカジくんは一緒に絵見てもらえるんやな〜〜」
「お前の声ににじむ嫉妬がすごい。語尾にドロドロ混ざっとる」
まさかのジェラシーモードツム。
顔は笑ってるのに、手に持ってるプリントぐしゃってしとるし。
「ナカジ〜、もういいやろ?早く帰ったほうがええんちゃう?」
「えっ、あ、うん……じゃあまたな、いちか」
ナカジ、無言の圧に耐えきれず撤退。
なんか……すまん。
「なあ、俺には見せへん顔、あいつには見せるんやな」
「へ?」
「“プロちか”とか言って笑っとったやん……俺のときは真顔やん……」
「それはあんたがボケすぎてツッコむのに全力出してるからや!!!」」
「ツッコミ=真剣、ってこと!?それはそれで燃えるな!!!」
「やかましいわ!!」
でも——
ツムが、そんなことでモヤモヤするほど、
私のことちゃんと見てくれてるんやなって思ったら、ちょっとだけ。
いや、かなり。うれしかったりするんよ。
だから今日は、ご褒美。
「……ほら、これ。絵、描きかけやけど、ツムに見せたかったから」
「え、マジ? 俺専用の!?“宮侑の視力だけで見ていい絵”!?」
「それもう“眼球限定公開”やん。意味わからん」
でも絵を見て、侑は少し黙って、ぽつり。
「……ほんま、俺、いっちゃんの絵好きや。
なんやろ、やさしくて、ちょっと強い。いっちゃんみたいや」
私の心臓、跳ねた。
……うっわ、ちょっと今、ドキッとしたやん。