テラーノベル
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あれから数週間が経った。
時折見せる表情が前よりも少なくなり俺は安心していた。
今日はとある番組の打ち上げで俺とふっかさんはその席へお邪魔する事になっていた。
俺はなるべくふっかさんの近い場所に座り、 注がれたビールを飲みながらふっかさんの方を見つめていた。
f「ははっ!いやいや、そんな事ないですよ。」
会話は相手が一方的ではあるが、相槌をしながら話を聞いているふっかさん。それに気を良くした相手は急にふっかさんの肩を掴む。
f「ぅわっ!びっくりしたぁー、もう酔っ払ってるんですか?早いですよ(笑)」
ふっかさんは絡んできた手をどかし、店員にお冷を頼む。相手は問答無用に話を続け熱く語り出す。
m「…あ。」
ずっと見つめていると、ふっかさんの表情が一瞬くもり、また普段通りに戻る。
俺は居ても立っても居られなくなり立ち上がった。
m「ふっかさん、お手洗いわからないから着いてきて。」
f「え?あー…俺も行きたかったし行くか。ちょっとトイレ行ってきます。 」
ふっかさんがそう言い終えると俺はすぐにふっかさんの手を掴んでその場を離れる。
f「ちょ、めめ?おーい!なぁ、手離して?」
m「…あ、ごめんなさい。 」
俺は掴んでいた手を離してその場に立ち止まる。
f「どした?何か怒ってる?」
ふっかさんが心配そうに俺の顔を覗く。しばらく俺を見つめてふっかさんは歩き出した。
m「…ねぇ、席変わろうか?」
f「なぁーんだ、そんな事心配してたのかよ。でも、大丈夫。」
m「…本当に?」
f「大丈夫だから。あ!それより、ここのハモの天ぷら美味しいらしいぞ。」
戻ったら頼むか!と、嬉しそうに俺に話かける。俺はそれに笑顔で答えるしか出来なかった。
スタッフ「お疲れ様でしたー!」
終わりの合図があり、打ち上げはお開きとなった。俺とふっかさんは挨拶を済ませてその場を後にした。
f「いやぁー皆んな楽しんでたなぁ!」
m「そうですね。ふっかさんはちょっと疲れてるよね?」
f「ちょっとね。でも、せっかくの機会だったし。」
そう言ったふっかさんの横顔は苦笑いのようにも見えた。けど、すぐに笑顔になり俺と目が合う。
f「でも、めめがいてくれて良かったわ。」
m「うん。俺も一緒で良かった。」
f「さ!タクシーつかまえて帰るぞー。」
家に着き、寝支度を整えて布団に入る。眠るまで俺はふっかさんの一瞬見せたあの表情が忘れられなかった。
続く
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