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戸は壊れたまま、四人の大人が道場の中で、正座をして座っていた。
道場は綺麗に片付いており、塵一つあらず、その場をバサラが誰よりも気に入っていたことがよく知れた。
三対一の形で座っている彼らの中で、ジータの後ろにいる褐色の二人の兵士、一人が赤い目を、もう一人が黄色い目をしており、その鋭い目つきでバサラを睨みつけていた。
(ええ、彼ら、双子かな。見た目と雰囲気がそっくり。でも、今その雰囲気は最悪。今にでも僕のこと噛み殺しそうな感じ。神だけになんちゃって)
「御師様」
「ひゃい?!」
くだらないギャグを考えていたら急に話しかけられ、変な声を上げてしまうとジータは嬉しそうに口を開いた。
「ふふ、御師様、いつもそうやってぼんやり考え事をしている時が多いですよね。でも、今なら分かります。常に、戦場に身を置く者、故に、人間観察をしている。ですよね!」
「ん、あ、あ、あははは、バレちゃったか。うん、まぁ、そうだね。ジータ以外とは初めて会ったからね。うん、ジロジロ見てしまってすまない。初めまして、カツラギ・バサラです。ジータのことをお願いします」
自分に尊敬の眼差しを向けるジータの前でもう二度とくだらないギャグを考えるのはやめようと決心し、彼女の部下である二人の兵士に挨拶をする。
その挨拶を見て、一人が強い口調で自身の名を告げた。
「ミレニア王国、四護聖ジータ・グランデ直属兵、ユース・ダリア」
彼に続いて同様の口調で自身の名をバサラに告げる。
「ミレニア王国、四護聖ジータ・グランデ直属兵、ラビ・ダリア」
二人の紹介が終わるも以前と睨まれる続けるバサラは気まづそうにしているとジータがニコニコとしながら声を上げた。
「二人の紹介が済んだので本題に入りたいのですがよろしいですか?」
「あ、ああ、うん。僕が出来ることならなんでも言っておくれ」
現在、味方はジータのみ。
二人の部下は今にも自分を殺しそうな空気を放つ中、彼女が放った言葉に、バサラはこの後、戸惑うことになる。
「御師様! 私たちと参りましょう! 二度目の神殺しです!」
「んえ?」
二度目の奇声。
バサラの声を気にすることなく、ジータは続けて口を開く。
「あら、御師様、10年ほど会わないうちにお耳の方が遠くなってしまったのですか?」
揶揄うようにジータが言うとすぐさまバサラは首を横に振りながら反応した。
「いやいや、流石にそれは。いや、いや、待って、ジータ。うん、待とう。待ってくれ。一体、僕に何を求めてるのかな? ん? ん??? 二度? 一度ならぬ二度目の神殺し? 僕は一度たりとも神なんて殺してないぞ」
「嘘はなりませんよ、御師様」
ジータの真剣な目つきに、どきりとするものの平常心を保とうと思いつく限りの言い訳をする。
「ジータ、君は立派になった。僕なんて敵わないほどに強くもなってる。そんな君が嘘をついてまで僕を立ててくれようなんてしなくていいんだ。恩返しなんていらない。君達が色んなところで活躍してくれるならそれで僕は幸福で」
バサラが止まらず喋っているところに一冊の本をジータは出した。本を書いた人物、その名を見えた瞬間、バサラは固まり、その反応を見た、ジータは再びニコニコしながら喋り始めた。
「御師様が唯一信じて研磨を頼んでいた鍛冶屋、ヴォルガ。その人が残した一冊にあなたの名前と神殺しをした本当の人物が記されてました」
「う、え、えーと、その、人違いじゃ」
「いいえ、これは御師様です」
確信を持ったかのようなジータの言葉に冷や汗をかき続け、諦めが徐々に襲いかかってくると最後の抵抗で、否定するために弱々しく声を上げた。
「根拠は?」
「勘です」
「根拠じゃなくないか?!」
「御師様は私の勘が信じられないのですか?」
ジータが上目遣いで見つめるとバサラはその視線に負けてしまう。昔から、彼女は何かあると自身の勘で解決してしまっていた。
そして、それが何であれ、バサラを、自分を頼る際には必ず上目遣いで頼んでくる。
彼はそれに弱かった。
子供が親に甘えてくるようで断るに断れなかった。
「もう一度言います。御師様! 私と共に参りましょう! 二度目の神殺しです!!!!」