魔導ゴーレムを倒した進たちは、体力回復のために少し休憩をしていた。
これほどの苦戦したのはフラムさんと戦った時くらいだ。
それに気になるのが、明らかにこのゴーレムは誰かによって作られたものだったこと。
「もし誰かに作られたものだったら、このゴーレム以上の存在になる。」
「―――とすると、先に最深部に向かったフラムさんたちが危ないかもしれない。」
「マリー、グレッグ、体力が回復次第すぐにフラムさんたちに合流するぞ!」
「何か嫌な予感がする。」
「分かりました。」
「早く行こうぜ!」
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一方その頃、フラム一行は進たちと別れ、魔坑道の最深部に到着していた。
「ここが最深部だな―――」
「そうみたい。」
「私のスキルで確認したけど、生きていたらここに二コラたちがいるハズ。」
二コラとは、フラムの幼馴染であり、かつ親友のことである。
フラムはその親友を含むパーティが先にこの魔坑道に調査に来ていて、生死不明の状態であった。
その生存を確認、もしくは救出のため今回のクエストを提案していた。
表向きはこの新ダンジョンの調査と言う名目ではあるが・・・。
エリアのスキルによって、二コラの行方は検知できていたが、生存までは確認できないでいた。
「ここに二コラたちがいるんだな?」
「生きていたらいいのだけど・・・。」
エリアは不安げな面持ちでフラムに答える。
フラムとエリアと二コラは、3人とも幼馴染であった。
3人は幼いころ将来共にSランクを目指すことを誓っていた。
それは幼子がヒーローに憧れるのと同じように。
フラムは類まれな才能に恵まれていたため、冒険者としてデビューしたころからすぐにグングンと頭角を露わにしてきた。
エリアと二コラは当初は、フラムと同じレッドカーネーションに所属をしていた。
しかし、そのフラムの圧倒的な戦闘センスに二コラは嫉妬してしまっていたのだ。
その嫉妬はほんの些細なレベルだった。
だが二コラも決して戦闘のセンスが皆無と言うわけではなかった。
地道な努力のおかげでBランクの冒険者として成功を収め、あと少しでAランク間近と言うところで今回のこの失踪事件となった。
フラム自身、二コラのレッドカーネーション脱退の際、もっと真剣に脱退の取り消しを説得すればよかったと何度も何度も後悔した。
「フラム、オレはレッドカーネーションを抜ける!」
「何でだ!一緒にSランク冒険者を目指そうと誓っただろう!」
「別にSランク冒険者を目指すのをやめたわけじゃない!」
「ただお前と一緒にいるといつも比較される。」
「オレがよく”二コラはフラムの金魚のフンだとか”言われているのをお前は知らないわけじゃないだろう?」
「それは・・・。」
「いや言わなくてもいい。」
「実際その通りだ。」
「オレの実力はお前には及ばない。」
「だけど、オレだってSランクの夢を諦めたわけじゃない!」
「いつかお前とお前と肩を並べるくらい実力を付けて一緒にSランクになって、再びレッドカーネーションに戻る。」
「そして誰にもお前の金魚のフンと言わせやしない。」
「そうなるまで待っててくれ!」
「もちろんだ!」
「いつまでも待っているぞ!」
そう言って、二コラはレッドカーネーションを脱退した。
二コラたちのパーティが失踪した後、フラムは本気で後悔をした。
神に何度彼らの生存を願ったか分からない。
「一緒にSランクになろうって誓っただろうが!なんでいなくなるんだよ!」
普段は紳士的な態度を取るフラムもこの時は、気性が荒れ、物に当たったりもした。
フラムはギルドマスターに頼み込んで、今回のクエストを受理してもらった。
そんな彼が今、ここに来てほんの少しの希望を胸に奥へと進む。
頼む生きていてくれよ・・・。
エリアの解除スキルによりゴゴゴと鈍い音を立て、巨大な扉が開いた。
そこはとても広い空間だった。」
王城の王の間のような煌びやかな絨毯が敷かれ、奥には玉座のようなものが在り、そこに一人の男が座っていた。
「貴様たちは何者だ?」
「なぜここに入ってきた?」
低い悍ましい声が聞こえてきた。
一同は震えて固まっている中、フラムが答えた。
「ここには調査のため来た。」
「ここに2週間ほど前同じような冒険者一行が来なかったか?」
「冒険者だと?そういえば2週間ほど前同じような感じの脆弱な人間がここに来たな…。」
その男はよく見ると、白髪の長い髪をして、上半身は裸、額からは角が生えていた。
まさか鬼人族か・・・。
フラムはごくりと息を呑み、次の質問をした。
「その者たちはどうした?」
「俺様が直々に殺してやった!」
「その辺に”ゴミ”が転がっているハズだ。」
男は恍惚な笑みを浮かべ、その方向を指差した。
フラムがその方向を見ると、見覚えのある剣と死体が転がっていた。
「貴様!殺してやる!」
いつもの紳士的な態度のフラムとは一転して、感情のままにその男に剣を向けた。
「フフフ…いいぞ若者よ。」
「いい殺気だ。」
「この俺様を楽しませて見せろ。」
フラムは爆剣-クレイモアを右手にその男に襲い掛かった。
「フラム!冷静になって!」
エリアの叫びも空しく、フラムはその男の2メートル圏内まで接近した。
キン!と金属音がダンジョン内に響く。
フラムの一太刀をその男は人差し指で止めた。
「なっ…!?そんな馬鹿な!指だけで止めるだと。」
余りの光景にフラム自身と周囲の冒険者は理解が追い付かなかった。
Aランク冒険者のフラムの一太刀と言えば、ドラゴンでさえ無傷では済まないと言われていたほどだったから。
「いいぞ…その表情だ。」
「その絶望に満ちた表情が見たかった…。」
その男は左手を突き出し詠唱をした。
「灰魔法:失われた希望(ロストエスポワール)」
フラムはその魔法で一気に吹き飛ばされた。
「貴様は一体…グハァ!ああああ!」
フラムは口から吐血した、全身から言いようのない不快感を催していた。
「大変!?フラムは毒、麻痺、恐怖、混乱を陥っている。」
エマはすぐに状態異常を回復させるため、フラムにキュアポーションを飲ませた。
「嘘だろ…僕は状態異常に対して、強力な耐性を持っているんだぞ!それを貫通したってことか!?」
「灰魔法:失われた希望は状態異常に対する耐性を貫通する。」
男はニヤニヤしながら言った。
「灰魔法だって…そんな準一級希少魔法を魔法を使えるのか!?」
「お主いったい何者じゃ!」
レッドカーネーションの魔法使いセヴランは問うた。
「俺様か?俺様は六魔将の一人サンドル。」
「六魔将サンドルだとっ―――!?」
フラムを含めた冒険者一行はその名を聞いた瞬間さらに戦慄した。
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