それにしても何故カイの姿は
幼いままなのだろうか。
私が不思議そうにカイを見ていると
それを察したのか、
「人魚は名前を付けられた時からずっと老けない体になるんだよ」
と微笑む。
私が幼少期のカイに名前を付けたせいで
今、不便なこともきっとあるだろう。
それでも何故この人はこんな顔で
笑えるのだろうか。
「さっ、本題に移ろうか」
と言った後、カイは湖の方を見た。
「今から何す──」
私が何をするのか聞こうと思った時、
他の人魚に口を押えられる。
その次の瞬間、
カイはクラゲの骨のような声で歌い出した。
多分、あの歴史の巻物の話であったように
私に害を与えないように
小さな声で歌っているのだろう。
それにしても綺麗な歌声だと思う。
まるで静寂の中、
海が優しく波の音を立てているような。
そんな時、湖が光出した。
「目に焼き付けときな」
と笑うカイ。
湖の封印が解けたんだ。
そして私はここで気づいたんだ。
この湖は水面に星空が
反射しているんじゃなくて
元々、星空の湖なんだ。
キラキラと輝きながら水面はほのかに揺れる。
なんて幻想的な光景なのだろうか。
「羽海、ここでサヨナラだね」
と悲しげな顔をする。
「羽海にも羽海の生活があるでしょ?」
私の生活….。
確かにそうだけれどももうカイには
二度と会えないのだろうか。
そう思うと胸の奥がチクチクと痛む。
「羽海、そんな顔しないで」
「僕は会えなくても羽海は僕達を見ることが出来るんだよ」
「そうなの…?」
「うん」
そう言ってカイは私に耳打ちで伝える。
「じゃあ見守っててね」
「うん….」
「羽海、大好きだよ」
そう言って私の視界は白い光に包まれた。
最後の言葉は私が寂しげに答えたから
それを慰める言葉なのだろうか。
それとも単純にカイの本音なのだろうか。
私には分からなかった。
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