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「元よりそのつもりで貴方にお部屋を取ったんですけどね」
「だよな。ホントに有難う。あと……今回の件に関与した者たちの沙汰については俺が直々に動きたい。逃げ道は塞いだ上で、そこはうまく留め置くようにしといてもらえるか?」
「相変わらず無理難題を吹っかけてきますね」
「それだけお前のことを信頼してるってことだよ、直樹。――もし璃杜が天莉と同じ目に遭わされたらお前だって自分で、って思うだろ? それと一緒だと思って動いてくれればいい」
「出してくる例えが秀逸すぎて腹が立ちますね」
ふっと笑って直樹が一礼して去っていくのを見届けてから、尽が腕に力を込めてくる。
「さて、そうと決まればこんなところに長居は無用だ。俺たちも移動しようか」
***
直樹が尽と天莉のために手配してくれていた部屋は、三十五階にあるロイヤルスイートで、リビング・ダイニング・ミニキッチン、書斎などを備えた贅沢な客室だった。
一泊いくらぐらいするのか天莉には見当もつかないような、ラグジュアリーな空間。
その部屋の中、ふかふかのソファに横たえられた天莉は、すぐそばに座った尽の膝枕で話を聞かされている。
「天莉。キミが飲まされた薬には解毒剤がない。というより多分これが効くだろうというものはあるが、例の薬自体、まだ治験にも至ってないような試作段階のシロモノなんだ。正直、他の薬剤を摂り入れることでどんな作用が起こるか分からないから使いたくないというのが本音だ。……そんなリスクを冒すぐらいなら、何もせずに時間経過とともに副作用が薄れていくのを待つ方がよっぽどマシだと思う。だが――」
そこで躊躇いをにじませて言いよどむ尽を、天莉は黙ってじっと見上げて。
「何もせずにいれば、完全に症状が消えるまで丸一日は掛かってしまう。その間は身動きが取れないからトイレなんかにも介添えが必要になるはずだ。あと、言葉も不自由だからね、下手するとそれを伝えること自体困難かも知れない。もちろん、俺がずっとそばにいてキミが不自由を感じないよう手を尽くすつもりではいるが、一〇〇%分かってやれるとは言い切れない。――そういう諸々の事情を踏まえた上で提案だ。多少荒療治にはなるが、少しでも早く動けるようになれる方法を取らせてもらえないか?」
尽がそう言うのなら、きっとそうしてもらうのが一番なんだろう。
天莉だって、尽にお下の世話は任せたくない。
でも、尽の言葉にどうしても引っかかる部分があったから。天莉はそれを確認せずにはいられなかった。
「あ、らりょ、じ……て?」
「……連中がキミにしようとしていたことを俺がする」
「へ…………?」
「率直に言おう。――絶頂に達する頻度が高ければ高いほど薬の抜けが早いんだ」
「ぜっ……」
尽の言葉に、天莉は思わず思考が停止してしまった。
確かに今、身体中が尽の温もりを求めて疼いている。
その欲求を満たしてやれば、この熱も和らぐはずだと言われたら、確かにそうなのかも知れないと思えたし、正直尽以外の男たちに襲われかけて、こんなことならば尽に抱かれておけば良かったと激しく後悔だってした。
でも――。
いざ解毒のためだけにそんなことをすると言われたら、何だか尻込みしてしまう。
尽は沖村とザキの会話を聞いていたわけではないから、まさか後ろを触らせろとは言わないと思うけれど、天莉はそこも含めて物凄く不安になってしまった。
「あ、の……じ、んく……ン、……」
「ん?」
〝後ろも……触るの?〟
尽は、天莉を襲おうとしていた者たちがしようとしていたことをすると言った。
もしもこの何とも厄介な薬効を打ち消すために、そんな行為も必要になるだなんて言われたら、天莉は絶対に怯んでしまう。
元々性行為に関していい思い出がほとんどないのだ。
普通にしても上手く出来るか不安なのに、そんなアブノーマルなことまでしないといけないとしたら。
(ヤダ、怖い……)
その必要はないと尽に否定してもらって安心するためにも、ハッキリ言葉にして聞いてみたいのに、そんなことを口にしようものなら、天莉が尽以外の男性たちからどんな扱いを受けそうになったのかを露呈させてしまうだろう。
それは、尽を物凄く傷つけてしまう気がして結局言えなかった天莉だ。
散々迷った挙句、(尽くんのことを信じるしかないよね?)と自分に言い聞かせながら、そっとまぶたを閉じることしか出来なくて。
信じると決めたくせに身体が小さく震えているのが分かって……自分ではまともに動かすこともままならないのに、何でそんな反応だけちゃんと出来ちゃうの?と、天莉はどうしようもなく悲しくなった。
震えたりしたら、尽に心配を掛けてしまうではないか。
そんな天莉の心を包み込むみたいに、尽がふわりと口付けてくれて――。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ、天莉。キミが嫌がることは極力しないし、なるべく優しく出来るよう、俺も精一杯頑張るから」
言うなり、壊れ物を扱うみたいに丁寧な所作で天莉を抱き上げた尽が、澱みない足取りでベッドルームへと向かった。
***
「あ、んっ、尽くん、もぉ、っ――」
尽の手技に、臀部下へ二つ折りにして敷かれたタオルをグショグショに濡らして達したのは、今ので一体何回目だろう。
いくら色々な備品が潤沢に揃えられたロイヤルスイートとは言え、バスタオルばかり何枚もこんなことで使いものにならなくしているのだ。
そろそろ入浴した際に身体を拭くためのタオルがなくなる気がしてしまった天莉だ。
尽が、膣内に差し込んだ指を、恥骨付近へ向けて軽くノックするみたいに動かすたび、排尿感に似た感覚が湧き上がってきて……天莉は懸命にイヤイヤをするのだけれど。
またお漏らししてしまう!という羞恥心を、尽が口付けと陰核への刺激で削ぎ落とす。
その度に結局局部から大量の体液を吹き出させて、天莉はクタリと尽の腕の中で力を失うのだ。
全身の気だるさにぼんやりと脱力して少し休んでいる間に、尽に口移しで水を何口も何口も飲まされる。
それが済んだらまた膣内を刺激されて、もう無理だと喘ぎながら同じ経緯をたどってしまう――。
再度下腹部へ伸ばされそうになる尽の腕を掴んで、「もぉ、やだぁ……」と熱に浮かされた声でつぶやけば、尽が「副作用、大分抜けてきたね。もう一度だけイケたら終わろうか?」と汗と涙で頬へ張り付いた天莉の髪の毛を優しくよけてくれる。
「次で……最後?」
言って、尽をとろんとした目で見上げたら、「ああ、次で最後だ。よく頑張ったね、天莉」と、尽が耳元で低く優しくねぎらいの言葉を投げ掛けてくれる。
「……私、頑張れた?」
「ああ」
「だったら……ご褒美が欲しい」
「褒美?」
「うん」
一人着衣を乱さないまま、ワイシャツのそでを腕まくりして天莉に奉仕し続けるだけだった尽の下腹部。
布地越しにも明らかに固く張り詰めているのが分かる尽の雄芯に手を伸ばすと、天莉は恐る恐るそこへ触れた。
「――っ!」
途端、尽が小さく息を詰めたのが分かって。その反応が、天莉にはこの上なく嬉しいことに思えた。
何度も何度も尽に絶頂へ導かれたことで、いつもならブレーキを掛けてしまうような大胆なことが、知らず知らずのうちに出来てしまえている天莉だ。
「……尽くん、最後くらいは私、尽くんと一緒に、がいい。お願い、尽くん、私を……抱いて?」
その熱に浮かされたまま、尽を見上げておねだりをすれば、尽が瞳を見開いて。
「でも、天莉、それは入籍が済むまでは――」
「尽くん、分かってると思うけど……私、処女じゃないよ?」
天莉だって、ここで博視との行為を仄めかすのは卑怯だと十分理解している。
だけど――。
尽が、自らに課している禁を打ち破る起爆剤になるならば、天莉は喜んで悪い女にだってなる。
そのくらい、尽とちゃんと繋がりたいと思ったのだ。
一人だけ何度も何度も高みへ追い上げられながら、尽くんも一緒がいい、と熱望し続けた。
薬のせいで、言葉がままならなくて言えなかったけれど、今ならちゃんと伝えられる。
意思表示が出来る。
天莉は尽の昂りを愛しいという気持ちを込めて撫で上げた。
「尽くんは……私とするの、イヤ?」
キュッと固く張りつめたソコを包み込むように力を込めたら、尽がグッと下唇を噛んで、
「嫌なわけがないだろう!」
そう言って、天莉の上に伸し掛かってきた。
***
「あ……んっ、じ、んくっ、深……いっ」
避妊具をまとった皮膜越しの尽の熱は、散々何度も達かされ、トロトロにほぐされていたはずの天莉の膣内を、押し広げるようにして一杯に満たしていた。
男性とこういうことをするのは初めてではない天莉だったけれど、博視とした時には触れられたことのない最奥まで穿たれ突き上げられて、そのたびに自分の中の〝女〟の部分がたまらなく刺激されて蜜を大量に吐き出して結合部を濡らすのだ。
そのせいだろうか。尽が腰を動かす度、パチュッパチュッと淫猥な水音が室内に響いて、それが凄く恥ずかしくて……なのに信じられないくらい気持ちいい。
「あぁんっ、ヤだッ、尽くんっ、どうしよ、……私っ」
こみ上げてくる未知の感覚が怖くて涙目で尽を見上げたら、ギュッと腕の中に抱き締められた。
「大、丈夫、だからっ、俺が付いて……る!」
いつもより気持ち高く感じられる尽の声音。
鼻に掛かったようなその声が、乱れた呼吸の合間に懸命に言葉を紡ぐ様が天莉には物凄く色っぽく思えて。
「尽く、んっ、大好き……!」
尽の、筋肉質な身体に腕を回すと、天莉は尽に必死にしがみ付いた。
そうしていないと、どこか知らないところへ飛ばされてしまいそうで怖かったから。
そんな天莉の身体を、尽が痛いくらいに抱き締めてくれていることがこの上なく安心できて心地いい。
敷き直したばかりのタオルが、お尻の下でまたグショグショに濡れて冷たくなってしまっているけれど、そんなことも気にならないくらい、天莉は尽との行為に没頭した。
「あぁぁぁんっ、尽くん、もっ、ダメぇっ」
「俺もだ、天莉っ!」
どちらともなくお互いの身体に回した腕により一層力を込めて。
下腹部の結合部をこれ以上ないくらいに深く深く繋げると、天莉の中でラテックス越し、尽の雄槍がビクビクと震えて達したのが分かった。
どんなに収縮したって吐き出された尽の精を取り込むことなんて出来やしないのに、天莉は自分の中がまるで尽の吐き出したものを全て自身の奥へ奥へ誘い込みたいみたいに蠢いているのが分かった。
天莉は、生まれて初めて……。
男性に抱かれることが心の底から気持ちいいと思えた――。