テラーノベル
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〜続きです〜
「…ほんまに、なにしても反応せんな」
不破湊が吐き出した溜息が、薄暗い部屋に溶けていく。
屋敷の最奥にある特製の檻。大理石の床の上、
三枝明那は五人に囲まれたまま、ただ人形のように座り込んでいた。
ローレンに尻尾を強く踏まれても、その瞳には涙一つ浮かばない。
ただ、赤茶色の猫耳が力なく伏せられているだけだ。
「なぁ、イブ。こいつの素性、どこまでわかってんの?」
葛葉が退屈そうに首を鳴らしながら、鎖の鍵を弄んでいる。
イブラヒムに視線を送る。
イブラヒムは手元の古い古文書のような巻物を開き、
灰色の瞳を細めた。
「…まともな過去じゃないな。こいつ元々、
西の山を縄張りにしていた由緒正しい化け猫の血筋だ。
だが、数年前、ある人間に「呪いの器」として捕まった」
イブラヒムの淡々とした声が、静かに明那の過去
を 暴いていく。
かつての三枝明那は、今とは全く違っていた。
よく笑い、よく鳴き、二本の尻尾を誇らしげに揺らす、
天真爛漫な化け猫だったのだ。
しかし、人間に捕らえられたその日から、彼の時刻が始まった。
人間たちは明那の強大な妖力を利用するため、
彼の「感情」を一つずつ物理的に削ぎ落としていった。、
<痛いか?苦しいか?だったら、その感情を捨てろ。
そうすれば楽になるぞ>
拒絶すれば暴力を振るわれ、泣き叫べば肉を焼かれた。
呪詛を注ぎ込まれ、化け猫としての誇りも、優しさも、
怒りも、すべてを強引に奪われた。
人間たちの凄惨な実験と拷問の果てに、
明那は自ら心のシャッターを完全に下ろした。
ーー何も感じなければ、もう痛くない。
ーー何も望まなければ、もう傷つかない。
そうして「無」になることで、明那はかろうじて
自我の崩壊を防いだのだ。結果として残ったのは、
喋らない、何も感じなくなった「からっぽの化け猫」
という最高級の呪物 (器) だけだった。
ーーー
「人間に、徹底的に壊されたってわけか」
ローレンが吐き捨てる。
その場の空気が、五人の圧倒的な妖気によって
急激に冷え込んでいく。それは明那に対してではなく、
明那をここまで無残に蹂飾した人間どもへの、
底知れない不快感だった。
「……そっか。可哀想にねぇ、明那」
叶がそっと明那の頬に手を添える。その手は驚く
ほど優しかったが、瞳の奥にある独占欲はさらに黒く
濁っていた。
「でも、好都合じゃん。人間に壊されたなら、
今度は僕たちが、僕たちの好きな色で満たしてあげればいいんだから」
「そやな。他の誰にも渡さへん。これならは俺らで、
こいつのじっくり飼い慣らそうや」
不破湊が妖しく目を細め、明那の首を嵌められた
呪縛の鎖を強く引き寄せた。
チリ、と硬質な音が響く。
明那のからっぽの瞳に、初めて、五人の濃密な影が
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ふうはや(Reno@背後だよ)
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ベッタリと映り込む。
「追い、化け猫」
葛葉が明那の耳元に顔を寄せ、低く、逆らえない
声で囁いた。
「これから毎日、俺らの誰かがお前の部屋に行く。
お前がいつ「嫌だ」って鳴くか、五人で競争だ。
……覚悟しとけよ」
「……」
明那は相変わらず何も答えない。
ただ、二本の尻尾が、ほんのわずかに微動だにした。
感情を失った化け猫と、それを無理矢理にでも暴き、
自分たちのだけのものにしようと執着する五人の上位妖怪。
屋敷の扉は完全に閉ざさら、逃げ場もない狂気の
飼育が、今、静かに始まった。
コメント
1件
うわ、第3話…明那の過去が重すぎて胸がぎゅっとなったよ😢 人間に感情を削ぎ落とされて、からっぽになっちゃったっていうのが切なすぎる…。でも五人たちはそんな明那を「自分たちの色で満たす」って言ってて、独占欲がすごくてゾクゾクした。無垢な子に執着するの、私大好きだからこの先どうなるのかドキドキしてる。りりさんのダークな世界観、めっちゃ好きです🥀💜