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星崎視点
だめだ。
身内であるスタッフと雑談したら気が紛れるかと思ったが、
あまり癒されてはいない。
全く効果がなかったわけではないが、
実感するほどの変化はなかった。
いよいよ困ったものである。
(家族に囲まれるのもいいけど、
一人の時間もほしいな)
そう言う時はたいてい休憩所に逃げ込んだ。
自販機とゴミ箱とベンチを置かれた簡易的な場所で、
孤独を感じない程度に人の往来があり、
長時間ここで屯する人がほとんどいないため、
一人になることができた。
「⋯⋯⋯ふぅ」
ベンチに腰掛けてそのまま横になる。
人が座った形跡がないベンチは、
なんとも無機質で冷たかった。
「動物性の体温が恋しい。
なんなら膝枕もされたい。
僕だってたまには⋯ベタ甘に甘やかされたいよ」
いつもは自分の仕事も裏方業務も完璧に、
ミスなくこなすために神経をすり減らしていた。
僕は音楽を始める前は元々、
ラジオ番組の裏方、
テレビ収録のスタッフ、
ライブ会場への機材搬入など、
主に裏方で経験を積んでいた。
もちろん大変なこともあったが、
その分やりがいもあって当時は楽しかった。
でもそれが過重労働な上に毎日ともなれば、
正直なところ間違えられない重圧で押しつぶされそうだった。
右も左も分からないスタッフを僕が支えなければならない手前、
そんな情けないところを見せられなかった。
思わず漏れた「甘やかされたい」という本音は、
きっと心が限界を迎え始めているのだろう。
ここで立ち止まったらその後は?
弱っているところを見せたら離れていくのか?
全員は無理でもせめて、
僕の味方でいてくれているスタッフだけは、
守りたい。
守り切れるだろうか。
(横になっても全然眠れない。
どうしよう?)
僕はスマホで「睡眠導入 BGM」と検索をかけて、
適当に曲を探してみた。
その中で睡眠用オルゴールメドレーなるものを見つけ、
僕はイヤフォンをつけて再生した。
〜〜♪〜〜♫
あ、
このメロディライン好きだな。
誰の歌だろう。
すごく心が温かくなるような、
安心感で満たされるような、
不思議な感覚で僕を眠りへと誘ってくれた。
意識が途切れる前に僕を包み込む、
ほんのりと甘やか匂いがしたような気がした。
(陽だまりみたい。
この匂い⋯癒されるな)
雫騎の雑談コーナー
はい!
ということでですね。
ここで話は途切れるのですが、
最後に星崎が感じた匂いの主は一体誰だったのでしょうか?
早速本編へ行きますよ。
問題のカメラマンからはどうにか逃げ切ったものの、
星崎は癒しを求めるほどに疲れ切ってしまう。
まあ当然ですよね。
自分の仕事だけではなく、
裏方業務も担っているわけですから肉体的な疲れと、
取り返しのつかないミスができない、
精神的なプレッシャーに耐えなければならないわけですから、
星崎にかかる負担は相当なものです。
しかし家族であるスタッフを支える立場にあるという責任感から、
頼ることも甘えることも出来ないでいた。
これってすごく辛いことですよね。
だって辛くても寄りかかれる相手がいない状態ですよ。
そんなの耐えられますか?って話です。
それでも我慢してしまうのが星崎なんです。
本音でぶつかって格好悪い所も晒せて、
尚且つ星崎が甘えられる相手は見つかるのか?
ではでは〜