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藤澤視点
彼は仮面のような偽物の笑顔で談笑する。
声を弾ませて一見楽しげにしてはいても、
目は寂しげにどこか冷め切っていた。
笑顔を見せる一方でなんて悲しい目をする人だ。
みているこちらまで、
心臓を握りつぶされそうなほどに苦しくなる。
どうして無理してそんな顔するの?
僕を隣に選んでくれたら絶対にそんな顔させないのに。
スタッフとの雑談を終えると彼は休憩所に向かった。
自販機とゴミ箱とベンチを置かれた簡易的な場所で、
人気がないほどではないが、
あまり多くの人が利用する場所ではなかった。
ここで一体何をするつもりなのだろう。
話しかけるタイミングを掴みかねて、
見守ることしかできない
「⋯⋯⋯ふぅ」
ベンチに腰掛けて彼がそのまま横になる。
人が座った形跡がないベンチは、
なんとも無機質で冷たかったのか、
彼が言葉を洩らした。
「動物性の体温が恋しい。
なんなら膝枕もされたい。
僕だってたまには⋯ベタ甘に甘やかされたいよ」
それはみんなの王子様であるTASUKUから引き剥がされた、
星崎瑠璃夜という個人の本音だった。
ああ、
裏方業務の重圧から解放してあげたい。
彼が安心して安らげる居場所になりたい。
僕がいないとダメになればいい。
それくらいに彼をとことん甘やかしたい衝動に駆られた。
人を好きになるとこんなにも、
狂おしいほどに相手を求めるようになるのか。
こんな感情が自分の中にあるだなんて、
初めて知った。
その相手が彼であることが、
こんなにも嬉しいだなんて、
笑わないで聞いてくれるだろうか?
しばらく様子を見ていたが寝息が聞こえることはなく、
ゴゾゴゾと体を頻繁に動かして、
彼はどうにも寝付けないようだった。
何か手助けできないか声をかけようとした時、
彼の手元にスマホがあることに気づいた。
音楽でもかけるようだ。
そんなものじゃなくて、
僕を頼ってくれればいいのに。
少しだけ悔しくなる。
数分で寝息をたて始め、
僕は彼を起こさないために足音を抑えたまま、
彼に近づいた。
近くで見ると酷い顔色だ。
肌の血色が悪く、
ストレスからかニキビの数も多い。
メイクで隠してはいるが、
クマも深く刻まれていた。
明らかにここ数日ではないレベルで、
まともに眠れていないことが伺えた。
眠らずにあの業務をこなしていると考えただけで、
僕はゾッとした。
するっ
彼の手からスマホが滑り落ちそうになり、
慌てて掴む。
その際に画面がパッと明るくなり、
表示されたものを見て僕は驚きのあまり固まってしまう。
(これ⋯hug?
僕らの歌だ)
僕たちのことは知らなくても、
曲のことは知ってたのだろうか。
そっと彼の顔を覗き込む。
しかしその気配でも彼は起きない。
少しホッとしながらも、
彼がこぼした「甘やかされたい」の言葉に答えるように、
ゆっくりと恭しく彼の頭に触れる。
その頭を僕は自分の膝の上に置いた。
彼がもっと深く熟睡できるように祈ってーーーー
雫騎の雑談コーナー
はい!
やっと!
記念すべき節目の10話でございます。
まあ⋯大体ね。
読んでいると予想はつくと思いますが、
やっぱり彼が意識を完全に手放す前に寄り添ってくれたのは、
藤澤さんだったんですね。
想像がつきすぎてつまらない話になってしましました。
これこそまさに駄作ですな。
大変失礼しました。
んじゃ、
本編行きますか。
スタッフの前ではあくまでも心配させまいと、
気丈に振る舞う星崎ですが、
やはり耐え難いプレッシャーにより、
まともには眠れていないんですね。
そのために人肌が恋しくなり、
甘やかされたいだとか、
癒されたいだとか思うくらいには限界が近い状態。
それでもかろうじて踏みとどまれるのは音楽があるから。
スタッフという守るべき家族がいるから。
支えてくれる存在が近しい場所にいるかどうかって大きいですよね。