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崩れ落ちる遺跡の中でリリスの声を聞いたはずだった。その直後、強い光と衝撃に包まれ――そこからの記憶はなかった。
アランが立ち上がろうとしたとき、背後から声が飛ぶ。
「おい!大丈夫か!?」
振り向くと、赤い頭巾をかぶった少女が走ってくる。後ろには、大剣を背負った青年と、小柄な少年。
「君……遺跡のほうから吹き飛ばされたみたいだったよ。運がよかったね」
彼女の名はフィオナだそうだ。旅の途中、異様な気配を感じて近づいたらアランを見つけたのだという。
焚き火の前で、アランは少しずつ語った。リリスのこと、遺跡、そして“黄昏の封印”。
「それって……最近噂されてる“影病”と関係あるかも」青年・カイルが言った。
「人が影に呑まれて消える病気。王都でも話題になってるよ」
「……リリスが……?」
アランの手が震えた。するとフィオナが優しく言った。
「だったら、私たちも手伝うよ。見捨てられない」
闇の中で独りだった彼に、誰かが手を差し伸べてくれた。その温かさに、アランは少しだけ微笑んだ。
「ありがとう……必ず、リリスを取り戻す」
夜の静寂の中、遠くから、かすかな笑い声が風に乗って響いた。それが何者のものか、誰も気づかなかった――。