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#探偵
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#ロマンスファンタジー
花月夜れん
407
カミラ・スカーレット (17歳)
馬車がカーディアックに到着した瞬間、私は一緒に来た執事を置いて馬車を降り、感情のままにカーディアック家の屋敷に足を踏み入れた。
今考えれば、私のした行動は失礼にも程がある。
早朝も連絡もせずに喚き散らし、おじ様も執事も私の対応をどうしたら良いのか迷っているのも分かっていた。
お兄様に縁談の話が来ていた事は耳に入っていた、お兄様はいつも縁談の話を断っていたから結婚の心配はなかったのだ。
美形のお兄様は存在しているだけで女性の目を引き、恋心が芽生えてしまうのも分から、一目ぼれした女性の気持ちはすごく分かる。
恋人が出来たって言うのも嘘だって、お兄様が他の女のものになったりしないって思っていたのに。
感情が爆発した状態で客間に行くと、寝間着姿のお兄様と噂の恋人の2人が居て、女の姿を見た瞬間愕然とした。
目の前にいるお兄様の恋人は、まさに薄いピンク色の薔薇の花のような人。
透き通った白い肌、長い睫毛から覗くピンクレッド色の瞳にふわふわの長い髪、お兄様の腕に馴れ馴れしく抱き付いている。
男が守ってあげたくなるような華奢な体、化粧をしていないすっぴんですら可愛いなんて反則ではないか。
【私のお兄様なのにっ、気軽に触らないでよっ!!!】
何で、ずっと側にいた私よりも、そんな女が良いの?
だけど、お兄様の恋人を一目見ただけで、行方不明だったお兄様が出会った女の子だって分かってしまった。
数10年越しに再会したって事?
そうだとしたら、2人はこの広い世界の中で巡り合って、出会うべくして出会った運命の相手同士で、私なんか最初から見向きもされない女だって事?
嫌だ、そんな事を認めてしまったら、私は私じゃいられなくなってしまう。
「お兄様っ、本当だったんですね」
「カミラ、早朝から何しに来たんだ」
「何しに来たって…、お兄様に恋人が出来たって聞いたんです。この目で確認したかったんです、その女ですか」
可愛くない事を言っている事は分かってる、こんな事を言ってもお兄様は私の方に気持ちが傾かない事も分かってる。
言葉がどんどん口から溢れ出し、目頭が熱くなり、こんな大勢の前で泣き出しそうな私に手を差し伸べる事なく、お兄様はこう言った。
「芣婭にそんな目を向けるな、カミラ」
初めてだった、お兄様に冷たい視線を向けられ、お兄様の周囲に群がっている女性をあしらう時の言葉を私に放ったのだ。
私にだけはそんな冷たい言い方をしなかったのに、私にだけは少しの優しをむけてくれていたのに。
「貴方!」
「ん?貴方って、芣婭の事?」
この人が現れた所為で、お兄様は変わってしまった。
この人さえいなければ、この人さえいなければ!!!
「芣婭の事って、貴方しかいないでしょ⁉え、自分の事を名前で呼ぶの?私と同じ歳でしょ?貴方」
「あっちゃあ…、これはまずいな。カミラお嬢、ギルベルト様の表情が見えてないなぁ…」
私は馬鹿にするような笑い方をして、ニックが苦笑いしながら一歩後ろに下がる。
こんな事、普段に私なら絶対に言わない言葉達が、芣婭と言う女の前につらつらと並べて行くと、眉間に深い皺を寄せたお兄様が低い声を出す。
「おい、カミラ。俺の事を怒らせたくなかったら、これ以上は口を開かない方が良い」
威圧感のある声は静かに部屋の中に響き渡り、こんなに冷たいお兄様の事を私は知らない。
今までそんな言い方をしなかったのに、どうして幼少期の頃からの付き合いの私にそんな言い方が出来るのですか。
「っ…、なんでそんな言い方するんですかっ。他の女性と話す時のようなっ、話し方をするんですかっ!!!私には、私にだけはしなかったじゃないですか!!!」
悲しい気持ちが爆発し、私は無礼にも程がある行動を取ってしまった。
ギュウッ!!!
お兄様の腕に抱き付いて、子供のように声を上げて泣きつくと、ほっぺをパンパンに膨らませた女がお兄様の腕に抱き付く。
お兄様は女の方に顔を向けて、すっごく嬉しそうな顔をしている。
「離れろ、カミラ」
そう言ったお兄様は片手で私を自分から引き剥がして、芣婭と言う女のを私に見せつけるように抱き寄せる。
今のお兄様は私の知っているお兄様ではなく、この女の色に染まってしまったのだろう。
この人は魔法を使ってお兄様の呪いの進行すら止め、呪いの痣の部分に薄いピンク色の大輪の薔薇が咲き誇り、お兄様がこの人のモノだと証明しているようなものだ。
私が今まで探し続けていた事が無駄だったのね、この女はお兄様の命すらも救ってしまった。
お兄様に帰れと言われ、私は大人しくお兄様の言葉に従い、スカーレット家の馬車に乗り込み、ハンカチで顔を覆って泣き続けた。
屋敷に着くと、おじ様から連絡を受けた父が執務中の父がいたが、私の泣きはらした顔を見た瞬間、父は優しく私の事を抱き締める。
父の暖かい温もりよりも、私は煙草の香りがするお兄様の腕の中で泣きたかった。
あれから2日間泣き続けた所為で顔がむくみ、鏡に映る自分の顔にうんざりしていた時、脳裏に芣婭と言う女の顔が浮かんだ。
ドレッサーの引き出しを開けて、ピンク色のアイシャドウやチーク、口紅を取り出して、いつもは使用人に化粧をしてもらうのだが、今日は自分で…。
慣れない手付きで微かな記憶を頼りに化粧をし、飛行用の魔道具である箒を手に取り、閉ざされていたカーテンと窓を開けて、箒に跨りながら風魔法の呪文を唱える。
「風」
呪文を唱えた瞬間、足元がふわっと浮き上がり、風に身を任せた飛行状態のまま窓の外に移動し、芣婭と言う女の顔が頭に浮かんだ。
ただそれだけの理由で、私はロールベルク家に向かった。
しばらく空を飛行し、目的地であるロールベルグ家の屋敷の庭園から楽し気な声が聞こえ、視線を下に向けるとニックスとレヴァリオの2人と、お兄様の弟のジオン様、あとの美形の3人の男性に囲まれてる。
「お兄様がいるのに、浮気?私からお兄様を奪っておいて…」
心の中に怒りの感情が沸き上がり、お兄様の恋人の前の降り立つと、男性陣達が私の顔を凝視され、私はその視線を無視して言葉を放った。
黒髪で猫髪の男性が私の事を見ながら、「貴方、芣婭の真似をしたかったんですね、似合ってませんけど」と言われて顔に熱が籠る。
この男性が言っている事は当たってるからこそ、言い訳がましい言葉しか言えない。
恥ずかしい、この人の真似をした所で、私がこの人になれる訳ではないのに。
だけど、お兄様の恋人である芣婭は嫌な事しか言わない私の事を、責め立てたりもせずに持って来たメイク道具達を広げていく。
情けない、私がこの人に勝てる部分なんて1つもない。
なんで、私なんかに優しくするの?
なんで、この人は私の事を可愛くしてくれようとするの?
あぁ、お兄様はこういう所に惹かれて恋に落ちだんだ。
2人はお似合いで、小さい頃に出会っている運命の恋をして、完全に私の負じゃないの。
芣婭さんが可愛く泣いている姿を見つめていたのだが、芣婭さんが勢いよく立ち上がって、私の方を見ながら口を開いた。
「カミラちゃん、ギル君に会いに行こ!」
「え?」
突然、何を言い出すかと思えばお兄様に会いに行こうって…、お兄様からの印象が悪くなってる状況で会うのは怖い。
「ギル君ね?今、隣の国の…、えっと、なんて国だっけ?レヴァさん!」
「スポワールですね」
「そう!そのエスポワールに行こう、今すぐに‼」
「いやよ」
レヴァリオに国の名前を聞いた芣婭さんは、私の方に顔を向き直してきたが、思っていた返答じゃなかったのか驚いた表情をしている。
その反応すらも可愛いなんて、本当に狡い人。
「だめ!」
「え?」
「カミラちゃん、もしこのままの状態のままだったら、もう戻れなくなっちゃうよ。ギクシャクしたまま話もせずに会わなくなったら、本当に疎遠になっちゃうよ」
「っ…、そんなの分かって…」
グイッ。
顔逸らした私の事を許さないように、両手で私の頬に触れて顔を自分の方に向かせた。
「だって、2人は幼馴染でしょ?芣婭は、ギル君と小さい頃からいたカミラちゃんが羨ましいよ。だって、芣婭の知らないギル君の事を知ってるんだからさ?」
「芣婭さん…」
「カミラちゃん、むっちゃ可愛くするから会いに行こ?嫌かもしれないけど、芣婭も一緒にいるから」
最初に会った時、私はこの人と仲良くなる事なんてないと思っていた。
だって、好きな人の恋人と人として好きになって、仲良くなる事なんてないと思っていたのに。
なんでなんだろう、ここに来て数分の間で芣婭さんの事を好きになってしまっている。
「嫌じゃない…、あの、この間はごめんなさい」
「この間?あー、全然良いよ!よーし、可愛くしちゃうよー!」
芣婭さんは優しい笑顔を浮かべて様々な種類の化粧品を取り出し、私の前に丁寧に並べて行き、ニックスとレヴァリオは馬車の手配をしに行く。
「良かったな、アンタ。芣婭が優しくて」
私に向かってそう言ったのは綺麗な白い髪をした男性で、表には出していないが私に対しての敵意を感じ、
芣婭さんの事を大事に思っているのが分かる。
何も言わずに、私は黙って男性の方を向いて頷いた。
***
中部街 黒騎士団の訓練場
各部隊の団長が不在の中、訓練場に集まっていた団員達はコンラットが連れて来た4人の人物を見てざわついている。
「なぁ、団長が連れて来た男達は誰だ?」
「新入団員じゃねーの?」
「お前等、今日からこの4人も訓練に加わる。魔法や剣の知識がないから、教えてやってくれ」
コンラットが連れて来た4人とは三浦翔太朗達であり、彼等に対して敵対心を剥き出しにしたボルフが睨み付けながら口を開く。
「は?そんな奴等を入れたんですか?団長」
「あ?」
「んだと?このガキ」
ボルフの言葉を聞いた下村喜一と水島浩平は、眉間に深い皺を寄せてボルフを睨み付け、彼等の間に三浦翔太朗が割って入った。
「喜一、浩平、落ち着け。すんません、俺達はこっちの世界の人間じゃないんで」
「おい、翔太朗!こんなガキに謝る必要はないって!!!」
「俺達はこの中では下っ端だろうが、年下だろうがコイツは俺等の先輩になる。族に入ってた時に散々、上下関係の礼儀をお前は叩き込まれてたろ」
「うっ、嫌な記憶が脳内に過ったわ…」
三浦翔太朗と下村喜一のやり取りを見ていたボルフは、少し驚いた表情を浮かべている時、ランニングを終えたエリアを見て水島浩平は頬を赤く染める。
細い体のラインを強調する黒のランニングウェアにくびれた腰に見惚れ、邪な視線を感じたエリアは喉から獣が対象者を威嚇する時に出す唸り声を出す。
「ガルルッ!!!何見てんだ、テメェ」
「え⁉いやぁ、見てないっすよ?」
「あ?」
「ひぃ⁉」
エリアの表情を見た水島浩平は小さな悲鳴声を上げて、そそくさと曾田透雅の背中に隠れ、エリアからの視線を逃れた。
「団長、コイツ等誰」
「新しい団員、特にこの2人の事をギルベルト様は戦力になると見込み、入団を許可した」
「ギルベルト様自らスカウトしたって事ですか⁉」
「ここ数年、ギルベルト様が誰かをスカウトした事なんてなかったよな?この4人を…」
コンラットのエリアの会話を聞いていた団員達が一斉に騒ぎ出し、三浦翔太朗達は何故、ギルベルトの名前を出したら騒ぎ出したのか分からなからないでいる。
ボルフが三浦翔太朗達の感情を表情で察したのか、こ
の黒騎士団にとってギルベルトと言う人間が、どれだけの影響力と存在しているのか説明した。
「お前等はギルベルト様と言う人間が、どれだけ凄いのか知らないんだろ。あの人は俺達にとって英雄の騎士そのもの。うちの団員は奴隷だった奴等と孤児院出身の奴等と、身分の低い家系の人間が多い。俺も元奴隷だ、ギルベルト様に救ってもらって、この団にスカウトされた」
「あの人、慈善活動みたいな事をしてたのか?そう言うタイプには見えねーけど」
「ギルベルト様の印象だけで判断してんだろ、あの人は卑劣な人間なんかじゃない。ギルベルト様はな、この国から奴隷をなくて平和な国を創ろうとしてんだよ。あの人がこの国の皇帝だったら…」
水島浩平の言葉を聞いて、ボルフはギルベルトの良さが分かってもらえない事に苛立ち、早口で言葉を続けるボルフの肩を鍛錬を終えた孔雀が叩く。
「うちの部隊の団員がすいません。ボルフはギルベルト様の事を心から尊敬しているから、貴方達にも分かってもらいたかったんです」
「いや、コイツ…じゃなくて、ボルフの気持ちは伝わったんで」
三浦翔太朗のボルフへの対応を見た孔雀は、ボルフの髪を撫でながらコンラットに視線を向ける。
「コンラット、この子等が例の異世界から来た子達?」
「はい、ギルベルト様が魔法や剣術の技術を叩き込んでほしいと」
「じゃあ、隊長の代わりに僕とボルフがこの子等の面倒を見るよ」
「孔雀さん達の部隊に配属しろと、ギルベルト様からの指示でしたから。孔雀さんから言ってもらえて助かりましたよ」
「手取り足取り教えてあげるよ、ギルベルト様に期待されてるんだし、3日くらいで取得してもらえないとね」
「「えっ」」
コンラットと孔雀のやり取りを、ボーッと眺めていた水島浩平と木下喜一の2人は口を大きく開けて驚く。
「今、なんと?」
「あ、聞こえなかったかな?魔法のある程度の知識と、1人で戦えるくらいの剣術を3日で覚えてもらうよって」
「あのすっごく軽く言ってるんですけどぉ、そんな簡単に覚えれるもんですか?」
「ボルフが覚えれたんだから、君達も出来るでしょ?出来なきゃ、ここでは足手まといになっちゃうね」
木下喜一の質問に答えた孔雀は、三浦翔太朗と曾田透雅の2人の事を特に注目しており、ギルベルトが見込んだのはこの2人だと瞬時に察知していた。
【短髪の子と青髪の子は、磨けば光る原石と言った所か。パッとしない2人は、おまけで連れて来たって感じか】と孔雀は心の中で呟き、けして悟られないように振る舞う。
「喜一も浩平も役に立ちますから、安心して下さいよ孔雀さん」
まるで、孔雀の考えていた事が分かったいるような口振りで、曾田透雅は水島浩平と木下喜一の前に立って孔雀に微笑むと2人の間に妙な空気が流れる。
曾田透雅の立ち振る舞いと口調、言葉は孔雀と似ており、孔雀本人も曾田透雅は同じ人種の人間だと悟った。
「コンラットはすぐに、ギルベルト様の恋人の護衛に行くんだよね?この子等の事は僕が引き取るよ」
「すいません、お言葉に甘えさせて頂きます」
そう言って、コンラットは孔雀に頭を軽く下げて訓練
場の出入り口に向かうが、「ちょっと待ってくれ」と
三浦翔太朗に背後から声をかけられた。
「あれ?孔雀さんと一緒に行動してなかったのか。わざわざ追い掛けて来るなんて、俺に何か用があるのか?」
「アンタに聞きたい事がある、今なら周りに人はいねーから」
「何だ」
「芣婭の事だ」
三浦翔太朗が甘野芣婭の名前を出した瞬間、コンラットの顔付きが変わる。
「まだ、お前を芣婭の護衛につけさせるのはだめだ。ギルベルト様からの命令でもあるが、今のままでは芣婭の事は守れない」
「守れない?芣婭は誰かに狙われてんのか⁉」
「あぁ、何から狙われているのかは、芣婭の口から直接聞いた方が良いだろ。要件はそれだけか?なら、俺は行くぞ」
「火傷の傷の事、いつ頃出来たのか知ってたのか?芣婭が話している時、アンタの口から出た言葉を聞こえた」
そう言うと、またしてもコンラットの顔付きが変わり、三浦翔太朗を視線だけで武器庫の物陰に来いと指示し、2人で移動している姿を曾田透雅は見ていた。
「翔太朗?」
「おい、アンタ。孔雀が呼んでる、早く来い」
「え?あっ、うん、ごめんね」
「訓練場の入り口なんか見て、なんかあったか?」
「いや、何もないよ。ごめん、ごめん」
「おーい、透雅ぁぁぁ!!!意味が分かんないんだけどぉぉぉ!!!」
自分の事を迎えに来たボルフと少しだけ立ち話をしていると、孔雀から魔法の基礎を教わっていた水島浩平が遠くから曾田透雅の事を呼ぶ。
「やれやれ、あの馬鹿は…。うるさくしてすみません」
「別に、お前等の面倒を見ろってギルベルト様の命令だし。さっさと行くぞっ」
耳を赤く染めたボルフは曾田透雅に背を向けて歩き出し、その光景を孔雀はボルフに気付かれないように見ていた中で、場所を移動したコンラットと三浦翔太朗はとても穏やかではなかった。
武器庫の物陰に移動し、三浦翔太朗の事を怖い顔して見ながらコンラットが煙草を咥えながら口を開く。
「お前は何を怪しんでるんだ?俺の」
「芣婭が背中の火傷の話を俺にした時、兄貴が芣婭に皿を投げつけようとした時に兄貴が庇ってくれたって言ってた」
「それで?」
「投げつけられた皿が兄貴の顔にもろに直撃して、左の眉毛の部分から頬にかけて大きな切り傷が出来たって。だが、俺が会った兄貴は顔に傷なんかなかった」
「傷が治っただけじゃないのか」
コンラットの返答を聞いた三浦翔太朗は、眉間に深い皺を寄せてコンラットが着ている騎士服の胸倉を掴み、武器庫の外壁にコンラットの背中を押し付ける。
「実の兄貴が妹に恋愛感情を持つのは物理上ありえねーだろ⁉あの兄貴の芣婭への執着はすげーのに、母親からの虐待を庇う事はなきくなったのが、兄貴の顔から切り傷がなくなった時から。手術後に巻かれる包帯やらガーゼが貼られてなかったって」
「…」
「不良って言葉がこっちにもあるか知らねーけど、スマホを見ても驚いてなかったし。眼の色も突然変わったとも言ってた」
三浦翔太朗は、半年前に甘野芣婭とした会話の内容を思い出しなが、コンラットに話をしていた。
【芣婭のこの目ね?お兄ちゃんも同じ色だったんだけどね?芣婭を庇ってくれた時の傷が、いつだったかな?中学生になる前かな?学校から帰って来た時に、傷もなくなってて、瞳の色も違ったの】
【ん?傷もそうだけど、目の色もそんなすぐに変わるもんか?】
【ねー、聞いてみたらね?成長期?ってヤツだって、お兄ちゃんが言ってた。成長期ってすごーいって思ってたんだけど、芣婭の目の色は変わらなかったなぁ。男の子限定なのかしら】
【いやぁ、成長期の凄さに男も女も関係ねーんじゃねーか?】
他愛のない会話をした内容が三浦翔太朗の脳内に繊細に思い出され、甘野芣婭は何も不思議に感じてなかったようだが、三浦翔太朗は不思議に思っていたし、直接この目で甘野冬馬と会話をして不信感を抱いたのだ。
「俺の考えが間違ってるなら言ってくれ。だけど、芣婭を母親からの虐待を守って来た兄貴は、顔の傷を失くて瞳の色が変わった時にいなくなったって思ってる。その以降、母親から芣婭の事を守らなくなったからだよ。見て見ぬふりをして、さりげなく母親から芣婭を遠ざけるだけになった」
コンラットは三浦翔太朗の話を煙草を吸いながら静かに聞き、自身が吸っている煙草を箱から1本抜ける状態にして三浦翔太朗に差し出す。
差し出された煙草を1本貰うと、コンラットはジッポライターを三浦翔太朗に渡し、受け取った三浦翔太朗は手慣れた手付きで煙草に火をつけた。
「ふぅ…、芣婭を見るアイツは男の目だ、男として芣婭に執着してる。あの殺人事件の犯人は間違いなく、兄貴の甘野冬馬だ。河邉菜穂と協力して殺したかは分かんねーけど、芣婭を犯人に仕立てた理由が分からねぇ」
「理由なんて、1つしかないさ。芣婭の事を周囲から孤立させる為だろ」
「孤立させる為…って、芣婭を独り占めにする為か?嘘だろ?じゃあ、あの毒親共を殺したのも芣婭を独占する為にだけ?ちょっ、サイコ野郎過ぎるだろ⁉そうだとしたら!!!」
「そう言う野郎なんだよ、あの男は」
声がワントーン低くなったコンラットの表情はとても険しく、ピンクレッド色の瞳の奥に強い殺気を宿している。
「甘野冬馬だったか、そいつは確かにここにいる」
「コンラット、アンタはすでに甘野冬馬の居場所を分かっているのか?」
「知ってるが、お前には教えられない」
「はぁ⁉教えられねーって、何でだよ!!!俺はアイツを探して…っ」
「アイツを殺すのは俺だ」
カチャッ。
そう言ったコンラットは冷たくて悲しい、それでいて正確な殺意を籠った視線を腰に下げている剣を持ち上げて言葉を放った。
コメント
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続き気になります!楽しみにしてます!
寺島あおいです🌷 第42話、読ませていただきました。 カミラちゃんの「お兄様を奪わないで」という切実な叫びが胸に刺さりました…。幼い頃からずっと側にいたからこそ、自分だけは特別だと思っていたのに、その場所が誰かに取られた——その喪失感と嫉妬の描き方が本当に繊細でした。 それでも彼女に化粧をして、「一緒に会いに行こう」と手を差し伸べる芣婭さんの優しさに涙が出そうに。敵のはずなのに惹かれてしまう、あの複雑な気持ち、すごく分かります。 また、三浦翔太朗がコンラットに甘野冬馬の違和感を語るシーンも緊迫感があって…「アイツを♡♡♡のは俺だ」というコンラットの殺意、ゾッとしました。伏線がじわじわと回収されていく感じ、続きが気になります😊