テラーノベル
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「アナタ、何をしたのっ?」
濃いパーティーメイクを軽々と赤く変色させる、鬼の形相というのがピッタリの遥香に駆け寄った奥様が、下から私を睨みつける。
「私は……ここで清掃をしていただけで…」
さて……近くではっきりと録らせてもらうわ。
私は急いで……急ぐふりで、階段を降りると二人の前に立つ。
近くで見ると、遥香は怒りで震えている。
その肩を抱こうとした奥様の腕をガンッ…と振り払った遥香が
「真奈美っ、どうしてくれるのよっ⁉」
と大声で唾を飛ばした。
「遥香様、少し落ち着いてご説明を……」
「うるさいっ!関係ない者は喋るなっ!」
この場を何とかしようとした田中さんに、すごい剣幕で怒鳴った遥香に
「私が……何かしましたか…?」
とおどおど……を、装い声を掛ける私の視界の端に、地下から篤久様が出て来たのが見えた。
「しらばっくれるんじゃないわよっ、クズがっ!」
「……申し訳ございませんが……本当に分からな…」
「何事ですか?」
篤久様が私の隣に立って、遥香と対峙するように聞く……仕方がないことだけれど、どうぞ邪魔はしないでください。
最高の投稿が出来る予定ですから……
「この女がこんなドレスを着せたからっ、私は笑いものよっ!」
「こんなドレスって……遥香様のご要望でリメイク…」
「関係ない者は黙れって言ったのが聞こえなかったのっ⁉」
思わず言葉を発した広瀬さんにも怒鳴った遥香は、とっくに沸点を超えているのだろう。
ぐんぐんと上昇する体温で、メイクが溶け出しているみたいだわ。
「ドレス、お似合いだと……遥香様にも奥様にも気に入っていただけたと思っていましたが何か不具合がありましたか?」
私はドレスを確認するように視線を動かしながら、本当によく似合っていると思った。
「大門様のパーティーでブルーのドレスはあり得ないのよっ!」
「「「「えっ⁉」」」」
奥様、私、田中さん、広瀬さんの驚きの声が揃う中で
「ブルーのドレスを着て行ったのは自分でしょう?」
という篤久様の冷めた声が遥香を笑う。
「真奈美のせいで恥をかいたのよっ。他のドレスもあったのに、わざわざブルーをリメイクしてっ」
「くだらない…」
と、篤久様がポケットに手を入れたのと、遥香の腕が動いたのは同時だった。
「「アッ…」」
田中さんたちの声がした時には、遥香がスパンコールバッグで私の顔を殴り、コンマ何秒か遅れて篤久様が私の肩を引き寄せた。
「血がでている…田中さん、消毒を」
「え……顔が切れています?ただいまっ、ハイ」
篤久様の声で自分の頬に傷があるのだと知ったけど、大したことはないと分かる。
「遥香様……どういうわけかは分かりませんが、ブルーのドレスが良くなかったとのこと…申し訳ござ」
「謝ることはない」
私が頭を下げようとしたのを、篤久様がハンカチで私の頬を押さえるようにして止めた。
「謝って許されることではないわ。どうしてくれるのよっ⁉大門様のお屋敷にブルーのドレスで行くなんて、この辺りのセレブの笑いものよっ」
「遥香、どういうこと?」
遥香が奥様に、大門様のパーティーの暗黙のルールについて説明しているのを聞きながら
セレブの笑いものねぇ……奥様も遥香も知らなかったルールなんでしょ?
と私は心の中で毒づく。
コメント
7件
非セレブを母娘で暴露〰!! 傷害事件だよ、もう警察沙汰だよ😠😠😠 篤久様は庇ってくれたけど😭 キズ残りませんように🙏
仕方ないか,ほんとのセレブじゃないからセレブ界隈の事知らなすぎ
だってセレブじゃないから~😂ブルーのドレスを着てなくても出禁確実ですわ😎それより傷害と暴行で違う個室にお泊まりいただかないとね🤣