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夢は段々現実に染まり始めた暗い施設の中、窓のない湿った壁、埃の匂い
どこかで子供が泣いている
自分ともう一人の子供
「きりやんくんはどうして僕をたすけてくれたの?」
「だっておまえ…たくさんなぐられてたじゃん」「あいつらさいていだったし、おれもきらい」「だまってるのももっとやだった」
自分の声が幼い。思いどおりに喋れない記憶の中なのか…?
幼くもこの頃の俺の「正しさ」は今一つ変わっていないような気がした
「ふぅん……きりやんくんの”せいぎ”ってやつ?」
にや、と笑う相手。黒髪で目が虚ろなのに、何故か強い
「君のせいぎ…こわしてぼくの物にしたいな」
「……え?」
その意味がわからなかった。でも今になって少し…わかる
(あれは…………)
夢の中の彼は名乗らなかった
自分も聞かなかった
ただ毎日一緒にいた
彼が施設を出る直前渡された”たからもの”
(ぶるーくが…あの時の……)
夢から覚めた時、きりやんの手にはまたもや黄色い羽根が握られていた
握った記憶なんてない
その日、警察署のポストにあるものが届いていた
写真が数枚
自分が街角で信号を待つ姿
コンビニでカフェオレを選ぶ後ろ姿
警察署の屋上でうつむく横顔
そしてーー眠っている顔。ベッドの上で無防備に。なにも知らずに。
添えられた手紙
『ねぇきりやん。思い出してきた?あの日、君は僕に触れてくれた。”助ける”なんて言葉、君に貰えるなんて思ってなかった。だから、今度は君を助けたい。僕なりに僕なりの正義で』
「………ッ」
写真が俺の指先で震える
その晩にきりやんは鍵を新しく変えた
誰にだって何にも言わなかった
ただ、静かに
次来たときは
(撃つ)
そう決めた