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巨馬は出っ張った前歯をワザワザ剥いて、見せびらかす様にしながらロバみたいにメチャクチャ下品な感じで言うのであった。
『ヒヒヒン、なあ、ヴノぉ~? 大丈夫かぁ~? ヒヒヒヒ、俺が助けてやったけどさぁ~? もうちょっと注意しなけりゃ駄目なんじゃないのぉ~? お前の魔術師、今さっき死ぬ所だったよね? 良いの? ねえ、良い訳無いよねぇ? 主人を助けられない獣奴(じゅうど)とかさぁ~? ヒヒヒヒヒヒィン、無いよねぇ? じゃなきゃ『ヘンウェン』のヴノの通り名が泣くぜえぇ? ヒヒヒン、養女のあの娘、キャス・パリーグに対しても恥ずかしいだろぉう? ヒヒヒ、ヒッ、ヒヒヒヒィーン♪』
『ぐぅ~、事実じゃから言い返せないのぅ~、口惜しい事じゃ~、ふうぅ~』
このやり取りに先程復活したレイブは、首を傾げて疑問を口にする。
「あれ? でもおかしいじゃないの、『回復(ヒール)』と『高回復(ハイヒール)』だけで魔力切れってぇ…… いつもはそんな事無いじゃない、練習でも『高回復(ハイヒール)』数百回打ち捲ってるじゃないかぁ!」
『本当だよね、ヴノ爺(じい)どうしたのよ?』
『グルゥ?』
レイブ達三者の疑問の声に答えるヴノ。
『それなんじゃがな、少し前から滅茶苦茶疲れ易くてのぅ~、たった二度ばかりの回復で魔力が枯渇してしまったのじゃよぉ…… こんな感覚百年以上ぶりだったわいぃ…… 実はの、今もまだ立っているのがやっとこさ、ってな感じなのじゃあ~、ふうぅ、ふふうぅ~』
『えっ? ちょっと、それってヤバイんじゃないのかよ、ヴノよ? お、お前病気とかなんじゃねーのかぁ…… くたばるとか言うなよな! おい、おいぃっ! ヒヒン、ヒヒヒヒィーン! だぜぇっ?』
『むう…… 判らん…… 判らんがうううぅ、ふうぅ~ぅ……』
事態が切迫したと感じ取ったらしい巨大なシャイヤー、ザンザスは、ここまでの煽り気味発言から口調を一転させて、心配そのものな表情を浮かべて言葉を発したが、肝心のヴノは益々容態が悪化している様であった。
黙り込んでしまった一同の中で、力強い声を発したのは賢い獣奴(じゅうど)、ペトラである。
『ねえヴノ爺、いつ頃から具合が悪くなったの? 今朝くらい? それともこの崖に来てからなのかな? どう? 覚えているかなぁ?』
ヴノは小さな黒猪(こくちょ)に答えたが、既にその四肢は震えを押さえられ無い様でプルプル全身を痙攣させ始めていた。
だと言うのにいつもと変わらぬ風情と声音で気丈に答えた言葉はこうである。
『むうぅ、そうじゃのう~? あれかな? レイブの実験に付き合って居た途中位からかのぉ~? 急に体が重苦しくなって直に滅茶苦茶なだるさが襲い掛かって来たような感じじゃったがぁ~? おお、勿論只の偶然じゃろうし、レイブが気に病む事ではないのじゃぞぃ』
「え、だけどぉ……」
『ブフォフォ…… だ、大丈夫じゃぁレイブよ、し、心配要らんぞぃ! 何、少し大人しくしとればこんな不調なんぞぉ…… おお、お、お、お、んん…… ブヒィ……』
ズドオォーンッ!
話している途中で有ったが、具合が悪そうだったヴノは、耐え切れ無くなってしまったらしく、その巨体を地に伏せ意識を失ってしまうのであった。