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大広間というのだろうか、畳敷きの部屋は想像よりずっと広くて百人の人が活動できるくらいの広さがあった。嘘じゃない。実際部屋で待ち構えていた敵はざっと百人は下らない。 一目見れば分かる。全員が鍛え抜かれた肉体を持ち、ケンカ慣れした大人だ。しかも多くの者が銃だの真剣だの危険な武器を持っている。
横浜デビルや川崎ゾンビのヤンキーたちとはすべてにおいて次元が違う。それに対して陛下の武器は折りたたみ式のフルーツナイフ一本?
終わった……
前世でブラッキー配下の兵に囲まれて射殺されたときよりも深く絶望していた。
「これは少しピンチかもしれないな」
いつも強気な陛下が珍しく弱音を吐いて、わたくしの不安をさらに膨張させた。
「逃げてください!」
猪狩徹也の悲痛な声がスマホから飛んできた。
「総長が今逃げ出しても卑怯だとは思いません。おれたちはここまでしてくれた総長を見放したりしませんから!」
これ幸いと同調させてもらった。
「陛下、わたくしも同じ気持ちです」
とにかくここから逃げ出すことが正解だ。あとのことはあとで考えればいい。横浜デビルは壊滅させられてしまうのだろうが、命さえあれば再起のチャンスはあるはずだ。
「逃げる? 逃げ出すくらいなら死を選ぶ。一人でも多くの敵を倒してな。前世からの長いつきあいなのに、真琴はいまだに余の性格を理解していないのか?」
陛下は失望したと言わんばかりに大きくため息をついた。
「ピンチかもと言ったのは敵へのリップサービスだ。余のためにこれだけの備えをしてくれたんだ。少しは怖がった振りをしてやらないと気の毒だろう」
現実が見えていないのか、ただのブラフなのか分からなくて、わたくしは沈黙した。