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「飛んで火に入る夏の虫とはこのことだな。今になってこんなはずじゃなかったと後悔してるようだけど、もう遅いよ」
大広間の奥の方で座っていた、わたくしとよく似た顔を持つ男がゆっくりと立ち上がって、そんなことを言い出した。
「おまえは誰だ?」
「僕は極星会会長の山鹿雄大だよ。君たちは僕を殺しにきたんじゃないの? ターゲットの顔も知らなかったなんて準備不足もいいところだな」
言われてみればその通りだ。わたくしがもっとしっかり情報収集して、敵はたった一日で百人の精鋭を集める実力があるので殴り込みは時期尚早ですと陛下をたしなめるべきだったのだ。雄大の言う通りわたくしの心は後悔でいっぱいだったけど、陛下のお心は違ったようだ。
「準備など必要ない。今おまえが極星会の会長だと分かった。顔は覚えた。今から逃げ出したって地獄の果てまで追いかけてやるからな」
あはははははと山鹿雄大は愉快そうに笑い出した。それにしても極星会の会長がこんなに若い男だとは思わなかった。ヤクザというより、暴力と無縁の上流階級のインテリのような雰囲気と話しぶりだ。中身までその通りのやさ男ならここにいる荒くれ者たちがおとなしく従うわけがないから、実際は底知れない実力の持ち主なのだろう。
「横浜デビル総長の森音露さん、地獄へようこそ。君たちはこれから死んだ方がマシだというくらいの地獄を見ることになる。たった二人しかいないのに仲間割れを始めたようだね。現実逃避したくなる気持ちは分かるよ。殴り込み予告されたからこちらも万全の備えで出迎えさせてもらった。まさかたった二人で乗り込んでくるとは思わなかったよ。心配しなくていい。殺しはしない。なかなかいい女じゃないか。しばらく僕らを楽しませてもらってから、中国の金持ちに売り払うつもりだ。連れの男の方は臓器をいくつか摘出させてもらうよ。健康体のようだから高く売れるだろうね」