テラーノベル
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昼食として良い棒を買ってきたのは、正解だった。
多少手が汚れても、袋を持って食べれば問題ない。
長いけれど直径は小さめだから、さっと食べられる。
甘いから、割と簡単に満腹感を感じる。
何せ俺、なかなか忙しい。
ジョンが釣って魚がかかっている竿を、仕掛けと魚ごと魔法収納して魚をキープして、エサをつけなおして渡したりとか。
時々ミーニャさんが持ってくるバケツ入りの黒鯛その他をキープして、新たなエサをつけて、予備のエサの貝を5枚くらい渡してとか。
投げ釣りは時々巻いて釣れていないか確認して、ハゼっぽいのやカレイっぽいのを時々釣り上げてとか。
そしてミーニャさんが堤防をほぼ一周したところで、ついに恐れていた事態が生じてしまった。
「この良い棒、3本とも食べてしまったのニャ。それでもまだ、足りないのニャ。何かおかわりはないかニャ。出来ればお魚がいいのニャ」
来てしまったか。
しかしここで屈してはいけない。
今までの反省を踏まえて、俺は宣言する。
「昨日、カラマロを100杯近く食べたじゃないですか」
「昨日は昨日で、今日は今日なのニャ」
「この後ホウトン村へ行ったら、魚尽くしじゃないですか。それに今釣ったのを食べたら、せっかく釣った魚が減ってしまいます」
「ならあのカラマロを食べたいのニャ。あれはまだまだあると、匂いでわかるのニャ」
匂いでそんな事がわかるのだろうか。
普通ならありえないと思うところだ。
でもマーニャさんは、俺が持っているインガンダ・ルマの数を当てたしな。
ミーニャさんが似たようなことが出来ても不思議ではないだろう。
しかしここで頷くわけにはいかない。
「あれは沖まで船で行かないと獲れない貴重品です。なのでホウトン村では1日に1人1杯程度までしか出せませんし、他で食べる時も1回で10杯までにします」
それにカラマロに似たセッピアは、確か猫には毒というか、食べてはいけない物だった筈だ。
なら『猫獣人だから』の理屈でいけば、きっと食べてはいけない代物。
なんて理屈は、きっと通用しないのだろう。
それは俺もわかっているから言わない。
「うう……魚が目の前にあるのに、食べられないのはつらいのニャ」
「ならここでしっかり釣って、さっさとホウトン村に移動しましょう。これでも一般的には結構釣ってはいますけれど、ホウトン村では足りないですよね、きっと」
3人で2時間ちょっとで釣れる量ではない位に、釣れてはいるのだ。
40cmクラスの黒鯛なんてのも10匹釣り上げているし、30~40cmの黒鯛も12匹。
20cm以上クラスのアジが24匹、メバル8匹、ウミタナゴ25cm前後が3匹。
あとは投げ釣りで釣ったカレイ3匹、ヒラメ1匹、メゴチ4匹。
投げ釣りやカゴ釣りの合間にサビキで釣った小魚は、今回も100匹以上。
それでもミーニャさんの食べっぷりを知っている俺としては、安心できる量ではない。
そしてホウトン村には、猫獣人が100人以上いる。
その1割でもミーニャさん並みなら……
案の定ミーニャさんは、がっくり項垂れる。
「確かにこの程度では、調理していなくても30分持たないニャ」
えっ! 調理していなくても?
まさかとは思うが……
「調理しないで、そのまま食べるんですか?」
「お祭りだから、ターニャとムーニャが帰っているはずなのニャ。あの2人ならこの程度、5分もかからず捌いてしまうのニャ。仕方ニャいので、もう少し釣ってくるニャ」
なんだそれは。
あと名前があんまりだ。
全員○ーニャという名前なのか!?
なんて思うけれど、とりあえずその前に。
「なら堤防を一周しましたし、今度はエサを変えましょう。ちょっと気持ち悪いですけれど、このエサでまた釣れる魚が変わります」
今度は貝ではなく、イソメにする。
殻付きの貝エサでは、黒鯛とか歯が頑丈な魚しか釣れない。
でもイソメなら、割と何でも食ってくる。
前世ではヘチ五目と呼ばれていた釣り方だ。
イソメやゴカイといった餌は、大きさこそ違うけれど、魔物のワームっぽい形で正直気持ち悪い。
でも以前、魔ムカデ1,000匹以上と戦ったらしいミーニャさんなら、問題はないだろう。
「これで別の種類の魚が釣れるはずです。ところでそのターニャさんとムーニャさんとは、どういう人なんですか?」
「普段はアクラで、魚料理専門の店をやっている親子ニャ。一子相伝の超絶料理術を持っていて、魚ならどんな種類だろうと大物だろうと、鱗取りからおろし終わるまで、数秒程度でやってしまうのニャ」
何だその一子相伝の超絶料理術とは。
そう思うけれど、なんとなく心あたりがあるので聞いてみる。
「ひょっとして、『御魚点極』というお店ですか」
「その通りニャ。行ったのかニャ」
「美味しかったです。でもあそこ、店員さんは普人でしたけれど」
「接客は雇った普人に任せて、ターニャとムーニャは経営と買い付け、調理を担当しているのニャ。美味しいけれど、量が普人に合わせていて少ないし高いのニャ」
まさかあの料理屋もミーニャさん一味だったとは。
いや一味ではないかもしれないけれど。
「あとホウトン村出身の猫獸人は、全員何とかニャさんという名前なんですか?」
「世代によるニャ。10年くらい前までは、仮名一文字を伸ばしてニャをつけるのが流行りだったのニャ。その頃生まれた住民は、基本的にそういう名前なのニャ。アーニャ叔母さんから始まって、イーニャ、ウーニャときて、モーニャまでいるのニャ。それより下はニャじゃなくてミャになるニャ」
「あと男性の場合はどういう名前になるんですか?」
「猫獸人は9割5分が女性なのニャ。そして男性名の場合はニャが先につくニャ。私に一番近い年齢では、10歳上にニャートさんがいるのニャ。ということで、諦めてもっと釣ってくるニャ」
うーむ。
ホウトン村、俺の知らない独特の社会という感じだ。
あと猫獸人が95%女性というのも初めて知った。
前世ではそんなことを聞いた覚えはないのだけれど、この世界ではそれが普通なのだろうか。
それともホウトン村が特殊なのだろうか。
わからないけれど、とりあえず釣りを続行しよう。
という事で、放置していた投げ釣り竿のリールを少し巻く。
ぴくっという反応があった。
これは小物、メゴチあたりだな。
※ 一子相伝の料理術
伝承者以外は死! というのではなく、難しすぎて1人くらいしか覚えられないというだけです。念のため。
あと『御魚点極』のあたりで、以前スーパーの魚売り場あたりで流れていた曲をテーマソング的に思い浮かべていただけると幸いです(魚を食べると、頭が良くなる、とか、体にいいのさという奴です)。
※ 良い棒、多少手が汚れても、袋を持って食べれば問題ない。
特に遊漁船で船釣りに出た時、小腹が空いた時用にヤマザキのナイススティックを持って行くのって定番じゃないですか? 西日本だとパスコのファボールサンドのような、細長くて袋も長くて、食べやすい上にちょっとだけ食べて置いていくのもやりやすいパンを。
もちろん異論は認めます。おにぎり派もいますし、がっつり弁当派もいるでしょうから。あくまで私の身近な範囲ではそうだというだけです。
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