コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
心咲視点
カラカラカラ…
窓が開く音で目が覚めた。
今は…?
…朝の4時半。
寝起きの頭は、うまく回ってくれなくて、
それでも嫌な予感がして。
「ッ涼香!」
急いで涼香の部屋に向かう。
寝起きだから、足がもつれて転びそうになった。
ガチャッ!
「涼香っ!」
そこには、ベランダの柵の外側に立つ涼香がいた。
「り、涼香、待って、行かないでっ!」
涼香を引きとめようと、涼香の方へ向かう。
涼香は、ふっと笑って、
「心咲、ばいばい」
って。
待って、行かないで、お願いだから、置いてかないで
必死で手を伸ばしたけど、届かなかった。
自分が、ヒュッと息を飲む音が聞こえた。
足の力がカクッと抜けて、その場に座り込んだ。
…ゴシャッ
涼香が、下に着いた音が、聞こえた。
…下を覗くことは、怖くて出来なかった。
「りょ、涼香ぁ…」
両目からぼろぼろと、涙が溢れてきた。
涼香の机の上には、何か置いてあった。
近づいて見てみると、そこには…
「遺書」
と、封筒に涼香の綺麗な字で書いてあった。
「…こんなの、読めないよっ…」
溢れ落ちる涙が、封筒を濡らした。
会社には、体調不良で休むと連絡をした。
しばらく、涼香の遺書を握りしめて、呆然と座り込んでいた。
このまま、消えてしまいたいって思った。
遺書も、読みたくない。
読んだら、また泣いてしまうから。
あれから、4日がたった。
未だに、遺書は読めていない。
でも、涼香が頑張って書いた、最後の手紙だから、読まなきゃって思った。
遺書を、ゆっくり開けた。
手が震えて、なかなか開けられなかった。
「遺書
心咲へ。
ごめんね。急にいなくなって。
この世界は、私には少し意地悪だったのかも。
独りにさせちゃってごめんね。
最後に一つお願いがあるんだけど、
まだ、こっちには来ないでね。
来たら怒るからね。
心咲が、ちゃんと生きてきて、
私がいなくなった後のお話をしてくれるのを、
楽しみにしてるね。
ばいばい。心咲。
涼香より。」
最後の方は、視界が滲んで読めなかった。
涼香、最後のお願い、守れそうにないや。
「…ごめんね。」
そう呟いて、涼香の遺書の裏に、こう書き足す。
「ごめん涼香。お願いは聞けなさそう。
僕も、涼香のところへ行きます。
さようなら。」
今、そっちに行くよ。
今は夕暮れ。
涼香が飛んだ時の朝焼けと同じような、綺麗な夕焼けが見えた。
ベランダの柵を乗り越え、ベランダの外側に立つ。
あぁ、涼香があの時見ていた景色は、こんな感じだったんだね。
涼香が飛んだところには、今もまだ規制線が張られていて、良い目印になった。
さあ、行こう。
目印に向かって飛ぶ。
涼香と同じ場所に行けるように。
地面が迫ってくる。
ふふ、もうすぐそっちに行けるよ。
ゴシャッ…
あの時と、同じ音が聞こえた。
…ような気がした。