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僅か10分後。
「ね、ちょっと寒くね?」
上布団を胸元まで引き上げ、有夏がチラリ。
背後を見やる。
風向きを固定されているのか、冷気はずっとベッドに強く吹き付けられたままだ。
無意識の動きだったのだろう。
有夏の身体もぬくもりを求めてジリジリと幾ヶ瀬の方ににじり寄っていた。
「ん? 俺は風呂上がりだし別に寒くないけど」
「何度設定? 風つめたすぎ。幾ヶ瀬、リモコンかして」
「何? ああ、リモコン?」
たっぷり一呼吸の間をおいて、幾ヶ瀬が続ける。
「隠したよ。別の所」
「は?」
「有夏がどうしてもって頼むんなら、俺があたためてあげてもいいんだけど」
「………………」
明らかにムッとした表情で有夏が上体を起こす。
きょろきょろと周囲に視線を走らせるが、目につくところにリモコンがある筈もなく。
「さむ……」
元来、探すやら片付けるやら整理するやらが極端に苦手な有夏のこと。
ベッドから降りて家探しする気も起きないようで。
それどころかあまりの寒さに布団から出られないありさま。
「ほら、おいでよ。有夏」
「ど、いう誘い方だよっ!」
差し出された手を有夏は今夜一番強く叩いた。
「幾ヶ瀬、ちっとも地球にやさしくない」
「だってそもそも有夏が……。いや、いいよ。俺は有夏にだけ優しいんだから」
意地の悪い笑みを向けられ、有夏は視線を逸らす。
「幾ヶ瀬、なに? ホントに怒ってんの?」
「別に」
「陰湿……」
幾ヶ瀬の笑みは変わらない。
それくらいで怯む彼でもないからだ。
「怒ってなんかないよ。有夏が震えてるから心配なだけ。ほら、唇が白くなってる」
顔を背ける有夏の細い顎を指で絡めとり、身を引く暇すら与えぬように唇を寄せる。
互いの息がかかる位置で、幾ヶ瀬はにやりと笑って口を開けた。
唾液に光る舌が、有夏の唇をねとねと舐め回す。
有夏が目をギュッと閉じたのは受け入れる為というより、目の前の男の異様な気配に身が竦んだからに違いない。
固く塞がれた唇の間を幾ヶ瀬の舌先が押し広げ、ゆっくりと侵入していく。
自らの熱を与えようとでもいうのか。奥へ。奥へ。
シーツを握り締める有夏の指先が細かく震え、徐々に力が抜けていくのが分かる。
有夏の口中をかき回しながらも、それを横目で確認した幾ヶ瀬の左手が恋人のTシャツの裾をツイとめくった。
薄い腹に指先をするする滑らせて、上へ上へめくりあげていく。
指は乳首に触れる寸前に止まった。
「んっ……」
塞がれた口から嗚咽のような吐息がもれる。
わざとベチャっと下品な音をたてながら、幾ヶ瀬はようやく唇を離した。
ハァハァと大きく息をつく有夏を、もちろん解放してやるつもりはない。
その細い身体をベッドに押し倒し、腹の上に跨る。
「いい眺め」
透明感のある白い肌。
その胸元は、まるで薄桃色の絵の具を一滴落としたかのように赤く染まっていた。
首筋と頬も。
耳朶などはまるで嬲られたように真っ赤だ。
拒みたいのか、それとも次の動きを期待しているのか、顔を背けたまま固まっている。
露わになった両棟の突起を指でつまむと、有夏の全身が硬直した。
見られているだけで赤みを増した乳首は、もう固くなっている。
親指と人差し指で薄紅色のそれをつまんで、幾ヶ瀬はふうっと息を吹きかけた。
「あっ……んんっ」
押し殺した声がもれる。
押し寄せる快感に有夏が必死に抗っているのが分かる。
幾ヶ瀬は左手でクニクニと先端を弄い、つまみ、引っ張った。
もう片方を舌先でつつく。
唇ではさみ、舐めまわし、歯を立てる。
強く吸った瞬間、崩れるように有夏の身体から力が抜けた。
「あっ……幾ヶ瀬ぇ」
両手はのしかかる男の肩をつかむ。
激しい呼吸に、甘い喘ぎ声が混ざり始めた。
とろりと双眸を潤ませる有夏を眼下に、幾ヶ瀬は頬を上気させる。
「今度はこっちを舐めてあげるね、有夏」
くにくにと動かしていた手を放し、しかし有夏に息をつかせる間も与えず。
ぬらぬら動く舌がもう片方の乳首を覆う。
「あ……ぁ、あぁ……っ」
有夏の右手が幾ヶ瀬の髪をかきむしった。
舐めて、吸って、舌と上顎で押し潰して。
そうしながら幾ヶ瀬はもう片方に視線を送る。
先程まで彼の口中にあったピンクのそれは、いやらしく濡れてぷくりと腫れ上がっていた。
今度は右手をそこにのばす。
人差し指の腹でグリグリ強く弄うと、有夏の喘ぎは今にも泣き出しそうに震えをおびた。
「いく……せっ、そこばっか、ヤだ」
「有夏?」
唇を離す。
もちろん、その間も幾ヶ瀬の両方の手で有夏の乳首はいたぶられ続けている。
「有夏はココが好きだよね。今日はココだけでイッてみよっか、ね」
布越しにもわかる。
ガチガチに固くなっているものにわざと触れないように体勢を立て直し、幾ヶ瀬は再び有夏の乳首に吸い付いた。
「ヤだって……」
「嫌なわけないじゃん。気持ちいいんでしょ」
上下の唇で強く挟んでは離し、何度も音をたてる。