テラーノベル
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あれからどのくらい経っただろう
俺の為に作らせるのは悪いと思い、キッチンへ向かった
でもセラさんの姿はそこには無かった
わざわざ材料の買い出しにいった?
でもこの家ってお粥作るくらいなら材料揃ってるよな‥‥
それとも用事が出来たのかもしれない
せっかくお兄ちゃんと過ごせるかと思ったのに‥‥
そう思いながら、大きなベッドに転がり込む
お兄ちゃんが‥‥セラさんが葛葉さんと一緒になれたらバイオリンも続けられるかな
そうだよな
大きな後ろ盾が出来て、きっと幸せに暮らせるだろう
俺は‥‥
早めにここから去ろう
叶さんに伝えてお金も返そう
ぼんやりそんな事を考えていると、ノックも無しにドアが開いた
その音に反応して体を起こす
「時間かかってごめん。具合悪いなら寝てても良いよ」
「セラさん‥‥どこに行って‥‥」
ガサガサと音をさせて部屋の中に入って来る
やっぱり材料買いに行っていたのか
でもセラさんはその袋を抱え、俺の前まで来てしゃがみ込み目線を合わせた
「セラさん?」
「お腹減ったか?」
「‥‥え?」
そう言うとベッドの上に袋に入っていたものを出した
鮭のおにぎり
そして缶に入ったコーンポタージュ
それを見た途端、涙が込み上げて来た
俺は泣き顔を見られたくなくて急いで後ろを向く
「‥‥大っきくなったな」
「な‥‥なんの事か‥‥」
「じゃあなんで泣いてんの?」
「‥‥‥‥」
セラさんが隣に座り、俺の頭をポンポンと撫でる
あの頃の様に‥‥
「まぁ、こんな所で再開なんて‥‥少しバツが悪いか?」
「少しじゃないよ‥‥」
「そうだな。でも俺はお前が生きててくれて嬉しいって気持ちが勝ってるよ」
「よく‥‥気付いたね。俺‥‥小さかったから顔変わったでしょ?」
背中を向けて話している俺の泣いた顔を覗き込む
「随分と美人に育ったな。でも面影あるからすぐにわかったよ」
「え‥‥夜に会った時から? 」
「うん。凄い似てるなって思った。俺は変わらないだろ?」
「大人びた顔はしてたけどすぐに分かったよ。身体は伸びた気がするけど」
「あの後も少し伸びたもんな」
まだ涙で濡れていた瞳をセラさんが指で拭ってくれる
その時‥‥
コンコン
俺達は一斉に扉を見た
扉は開かれ、そこには葛葉さんが立っている
俺達を見てニコニコしていた
葛葉さんの視線に俺達は慌てて距離を取る
この状況は‥‥どうしたら良い⁈
「どうしたの?2人して」
「‥‥‥‥」
俺が口籠もるとセラさんが代わりに口をひらいた
「昨日叶さんにロウ君を紹介されて、その時彼が具合が悪そうで、今日改めて挨拶しようかと思ったんだけど、まだ本調子じゃないみたい‥‥ごめんね?休んでる所」
「いえ‥‥‥‥」
俺達のやりとりを見る葛葉さんは、まだ口元に笑みを浮かべている
その顔は新しいオモチャを見つけたいたずらっ子の様だ
「そうなんだ。だったら丁度良かったわ」
「え?」
「この薬も一緒にお願いするわ」
「‥‥‥‥」
セラさんが腕を伸ばし薬を受け取る
「軟膏‥‥ですか?」
「そう。昨日俺が無茶して傷つけたから。セラフさんが直接塗ってあげてよ。後ろの孔に」
「え‥‥‥‥」
セラさんが俺の‥‥
葛葉さんは何を考えてるんだ?
もしかして怒らせた?
そうだよな
セラさんは葛葉さんのパートナーなんだから
「葛葉さん!俺1人でできますからっ‥‥」
「いーや、叶の言う事聞くなら、俺の言う事だって絶対聞かないとおかしいよな?」
「‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥」
時が止まった様に固まる俺達を揶揄う様に見る葛葉さん
「やれるよね?セラフさん。小柳さんが辛そうだったらその後もちゃんとしてあげないとね」
「‥‥はい」
「え、セラさ‥‥」
セラさんが俺を見て首を振る
俺だって分かってるけど‥‥
「じゃああとはよろしく。俺、ちゃんと見てるから」
そう言うと葛葉さんは部屋を後にした
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コメント
2件
セラフ~ 気づいてたんだね 良かった~ 葛葉...? いたずらっ子の顔 めっちゃ想像しやすい... 続き楽しみにしてます!