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聞こえた声の方に振り向くと、そこにはアリエッタと同じ銀髪の美女、女神エルツァーレマイアの姿があった。


『えっ!? もしかしてママ!?』

『っ!?』


驚いたアリエッタと、同じく驚愕の表情をするエルツァーレマイア。そのままヨロヨロとよろめき、崩れ落ちた。


『えっ……どうした…んですか?』

『……ママって…娘からママって呼んでもらえた……このまま昇天しそう』

『ぅえっ!?』(そういえばなんとなく親孝行かなって思って頑張ったけど、実際に口にすると……)


大人の…しかも男性としての記憶があるアリエッタにとって、『ママ』呼びはやはり恥ずかしい。それでも自分は女児だと自己暗示し、心の中で『ママ』と復唱していたが、反応を見て冷静になると羞恥が込み上げてくる。


『あ、あの……駄目でした? ママって呼ぶの……』

『ぶっふぅ! いえ、最高です……』


鼻血を流した神が、笑顔でサムズアップした。


『え~…えっと……お久しぶりです?』

『そんな他神行儀たにんぎょうぎな喋り方しちゃ嫌っ! 私達親子ですよ!?』

(ん~、やりにくいけど、それもそうか)


魂は別として、肉体は女神エルツァーレマイアから創られたアリエッタは、れっきとした神の子である。受け継いだ能力はともかく、そのように育てられていない転生したばかりのアリエッタには、その実感は一切無いが。


『え~っと、ママ』

『はうっ! もっと言ってもっと言ってもっと言ってもっと言って』

『いやあの、怖いんですけど……』


吐血までしながら笑顔でママ呼びを催促するその姿は、まさに残念神である。もっとも、ドジで転生する羽目になったアリエッタからしてみれば、威厳など最初からマイナスだったりする。


『はぁ……ところで今、僕は寝てるんだよね?』

『ええもちろんよ。人からしてみれば、私は存在自体が別格だから、こういう精神世界でしか普通は対面出来ないのよ』

『さすが神様』(何がさすがか分からないけど)


愛想笑いをしていると、突然エルツァーレマイアの手がアリエッタの頭に添えられた。


『あ……♪』

『さっき大好きなお姉さん達に、こうやって撫でられてたね~。気持ちよさそうに』

『み…見てたんだ……』


それからは、食事後から寝るまでの間の事を事細かに説明され、顔を真っ赤にして俯くアリエッタ。しかし撫でられている為、逃げる事は出来ない。


『なんで知ってるの……』

『夜空を見上げてた時から、ずっと見てたからね~。楽しそうでなによりよ』


それからは、エルツァーレマイアは自分がどうしてここにいるのかを話し始めた。

森の中の家からアリエッタの気配を追い、『人の世界』にいない事を確認してから、この『水の世界』にやってきたという。入る途中にずぶ濡れになったが、無事アリエッタを見つけ、背後からそっと入り込んでいた。


『ん? 森の世界と人の世界と水の世界って?』

『よくわからないけど、この世界は水に囲まれていたわよ?』

『いや、それもよく分からないけど、?』


これまでグラウレスタ、ラスィーテ、ファナリア、そしてハウドラントといった場所を見てきたアリエッタだったが、地域によっていろんな違いのある世界だと思っていた。当然いままで見てきた場所が、全て違う異世界だとは思っていなかったのだ。


『この次元って、一部の世界が他世界を行き来する技術を持ってるみたいなのよね。アリエッタちゃんの前世でいう惑星みたいな感じだと思えばいいわ。まぁ詳しい事は知らないけど。言葉分からないし』

『へ、へぇ……凄いんだ、この世界』

『それでね、今いるこの世界は、外から見たら水球の中に雲がある感じだったのよ。面白い世界よねー』

『う~ん……』


アリエッタは混乱した。

異世界だからって、そんな不思議な事があるのだろうかと、考え込んでしまう。しばらくして、異世界だし魔法もあるからそんなもんか、という結論で強引に終わらせた。考えるのを放棄したとも言う。


『そ…それで、ママはどうやってこの次元?に来てるの?』

『森の世界に家建てたでしょ? そこを拠点にしてゲートを繋いでこの次元を行き来してるの』


説明はされたものの、神ではないアリエッタには意味が分からなかった。


『ゲート?』

『私の次元につながる道みたいなものよ』




一方その頃、『森の世界』であるグラウレスタでは……


「副総長、これは……」

「あたり一帯真っ赤でさぁ」


そこは塔から見えた赤い光の中。ロンデル達シーカーは急ぎ足で泉へとたどり着き、調査を始めていた。

この赤い光はエルツァーレマイアのゲートである。以前にもアリエッタの元へやってきた時、グラウレスタにいた兵士達が確認し、謎の現象として報告されていた。

そして今回、再び森が光ったのである。何も知らない者達が異常な現象として調べるのは、至極当然の事だった。

ロンデルはアリエッタに関する手がかりでも見つかればと、シーカー達に指示を出していく。




『道? 誰かに見られたら大変じゃない?』

『だーいじょうぶよ。あんな森の奥に、人なんて来るわけないわ』


ただいま全力で人が調査中である。


『でも、あそこに来たみゅーぜとぱひーに拾われたし……』

『あっ……』


エルツァーレマイアはしまったという顔になった。アリエッタが森で拾われた事を忘れていたのだ。


『ママ……』

『だ、だいじょうぶ! どうせ人からみたらただの赤い光だし、私にしか使えないし!』

『またうっかりしちゃったんだね』

『うぅ……』


アリエッタのジト目が、残念神エルツァーレマイアに突き刺さる。


『まぁママはそういう神様だし、仕方ないか』

『そんなぁっ! 私だってやればできるのよ!?』

『はいはい…ところで、こうやって会いに来るなんて、どうしたの?』


必死の弁解もさらりと流し、どうして来たのかを聞き出す事にした。一瞬エルツァーレマイアが泣きそうな顔をするが、気を取り直して話し始める。


『もちろん愛する娘に会いに来たからよ。まぁ少ししたら帰るけど』

『そ、そうなんだ……』


特に気を張るような用事ではなかった。

しかし、帰るまでのそのが人としての少しなのか、神としての少しなのかは、一切考慮されていない。エルツァーレマイアにとっても、時間間隔のズレはよく理解出来ていないのである。

なにしろ、人として生きているアリエッタにとって『久しぶり』と言える程時間が経っているというのに、『さっきぶり』と言ってのける感覚の差は、人にとってはかなりのものである。神にとってこの十数日は、ほんの一瞬なのだ。


『まぁいっか……あんまり恥ずかしいトコ見ないでよね』

『んもう~、恥ずかしい事なんてないじゃない。みゅーぜ達に可愛がってもらってるんでしょ?』

『あっちょっ……えっと…うん……こうやって撫でてもらってる……』

『よかったわねー。しばらくは私も一緒に寝てあげるからね』

『うぅ……』


恥ずかしいものの、何故か異常なまでに幸福感が勝ってしまう少女の体。そのまま抱きしめられて、いつの間にか精神世界に準備されたベッドに入っていた。


『夢の中で寝るって……』

『気にしない気にしない♪ いいこいいこ~』

『はゎ……』

『うふふ、もっとくっついていいのよ』

『うん……♪ きもち…いぃ……』


頭も背中も撫でられて、顔も頭の中も蕩けてしまったアリエッタは、無意識にその豊かな胸に抱き着いた。そのままさらに撫でられ続けると、夢の中だというのにあっさりと眠ってしまった。というのも……


『はぁ可愛い……ナデナデされると幸せになって蕩けるようにして正解だったわ~♪』


撫でられると大人しくなる性格…いや性質は、元々誰しもが持っている本能なのかもしれない。だがアリエッタは、エルツァーレマイアによってその幸福感がより多く感じられるようにされていた。その為、風呂でのやり取りのように、撫でられた時は抵抗力が皆無…どころかマイナスになってしまう。

そんな可愛いだけのモノを娘に仕込んだ女神は、そのままだらしない顔で、朝まで娘の幸せそうな寝顔を間近で堪能し続けていた。




「……ん」(なんだろ、きもちいい……)


翌朝、現実で目覚めると、何やら柔らかい物に抱き着いている事に気が付いたアリエッタ。枕だと思い顔を押し付け、ちょっと一息。その時、不意に頭を撫でられた。


「んふふ、おはようなのよ、アリエッタ」

「ん…おはよ……?」


すぐ近くからパフィの声が聞こえ、反射的に見上げて朝の挨拶。


(……?)


少し寝ぼけた頭で状況を考えている。上を向くとパフィの顔、手の中には、頭を撫でられて気持ち良い。

アリエッタは手に持った枕をよく観察した。


(やわらかい、あたたかい、ぱひーの…………ん?)


違和感を覚え、もう一度パフィの顔を見上げた。


「まだ寝ぼけてるのよ? もうちょっと寝るのよ?」

「!?」(!?)


状況を理解してしまったアリエッタは、ビクッと大きく震え、固まってしまうのだった。

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