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『雨に沈む声』
—🌸side.
朝からどんよりとした空。
空気も重たくて、湿気で髪がうねる。
(うわ、最悪な天気)
でも、今日はみんながうちに集まる日だった。
会議って名目だけど、どっちかっていうと、俺はこの空間が好きなんだ。
バラバラだった予定をやっと揃えて、
全員が予定空けてくれるなんて、めっちゃレア。
だから、朝からちょっとテンション上がってたんだよな。
ソファも掃除したし、ホワイトボードもセット完了。
冷蔵庫の中には、昨日こさめと一緒に買ったお菓子が並んでる。
全部完璧、あとはみんなが来るのを待つだけ──
……のはずだった。
「おー、いるま! 来た来た!」
玄関のチャイムが鳴って、俺がドアを開けると、そこにはいるまの姿。
だけど、いつもの雰囲気となんか違った。
うつむき気味で、フード深め。
肌も、ちょっと青白い気がする。
「おつ」
声も、どっか上の空で、覇気がない。
(あれ……?)
すぐ後ろにいたこさめが、「顔色、悪くない?」って言ってて、俺も同じこと思ってた。
でも、いるまは「だいじょぶ」ってだけ言って、奥に進んで行った。
その後ろ姿を見て、
“あ、これ、ほんとは来るべきじゃなかったやつだ”って直感で思った。
会議が始まっても、いるまはほとんど喋らなかった。
いつもなら、ちょっと冗談とか挟んでくるのに、今日は一言も出ない。
ノートを見ても、手が動いてない。
正直、違和感ありすぎて、何回も視線送ってた。
そのうち、みことがさりげなく様子を見て、
すちも明らかに気にしてるのがわかった。
そんで──案の定、来た。
俺がボード見ながら喋ってる時だった。
ドサッて音がして、そっち見たら、
いるまが横に崩れ落ちてた。
「おい、いるま!?」
急いで駆け寄る。
顔、真っ青。
目、開いてない。
「らんくん、水頼む!」って、誰かが叫んで、
俺はすぐキッチンに走った。
手が震えてた。
いつも冷静でいようって思ってるけど、あの瞬間はほんとに焦った。
水持って戻ったら、
すちがいるまの手を握ってて、
みことがクッション持ってきて、
なつとこさめがタオル準備してくれてた。
みんな、すげえ素早かった。
でも、それだけ心配だったんだと思う。
数分後、いるまがうっすら目を開けて、
小さく「……ごめん」って呟いた。
「謝らなくていいって。いるま、体調最悪だったんだろ?」
俺は思わずそう返してた。
心配かけたくないとか、気持ちはわかるけど、
でも倒れるまで我慢して来るって、
こっちからしたら怖すぎる。
正直、少し怒りたいくらいだった。
でも、その顔見たら怒れなくて、
ただ、冷たいタオルをもう一度押さえてやった。
すちが、静かに言った。
「しんどい時は、言っていいんだよ。……言ってくれたら、ちゃんと受け止めるから」
その言葉が、やたら沁みた。
会議は、即・延期。
「今日はもうみんなでゆっくりしよ!」って俺が仕切った。
いるまが倒れてる横で、会議なんかできるわけないし。
なつがホットドリンク作って、
こさめがブランケットかけて、
みことがスケジュール再調整して、
すちがずっと手を握ってて、
俺は冷やしたおしぼりを何度も替えた。
(……ほんと、来てくれてありがとうな)
いるまが、ポツリと「ありがとう、みんな」って言った時、
誰よりも安心してる自分に気づいた。
外の雨は、まだ止まない。
でも、部屋の中はあったかい空気で包まれてた。
次は、絶対に無理させないようにしよう。
少しの変化にも、ちゃんと気づけるように。
俺たちは、6人だから。
誰かが倒れそうになったら、全員で支える。
そうやって、ここまで来たし、
これからも、そうやって生きてくんだろうな。
──安心して、ちゃんと寄り添える場所でありますように。
体調不良系大好きなんです…🥲︎