テラーノベル
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千歳がうきうきでヨドバシカメラからの荷物を受け取って言った。
『体重計買った!』
「え、千歳ダイエットでもするの?」
『お前を測るんだよバカ! 毎日ちゃんと食わせてんだから体重まともになったか見るの!』
「あ、さようですか……」
というわけで、正確を期すため、お風呂上がりに下着姿で測ったら55kgだった。やばい、献血の時より減ってる。
千歳に申告したら憤慨されてしまった。
『なんで減ってるんだよ!』
「いや、今まで測ったの服着て測ってたから服の分重かったのかも」
『くそー、ちゃんと食べさせてるつもりだったのに……あ、bmなんとかってやつだとどうなんだ?』
「計算してみる」
BMIを計算したらギリギリで普通だったのだが、それを伝えたら千歳は『ギリかよ!!』とまた吠えた。
『あすけんで現状維持でカロリー計算して、それ上回るようにしてるけど、ほんのちょっとしか上回らないんだよなあ……』
「ごめん、胃の小ささはいかんともしがたく……」
次の日の夜、狭山さんとの打ち合わせから雑談に流れ、「太らなきゃいけないんですよ」と昨日の話題を出したら「55キロ!?」と素っ頓狂な声を挙げられた。
「えっ待ってください、和泉さん身長いくつですか、僕とそんな変わりませんよね」
「171です」
「えっえっ……あの、僕和泉さんより2センチ低いのに16キロ重い計算になるんですけど」
「え、そんなですか?全然普通体型に見えますけど」
「服で隠れてるけど脱ぐともうぶよぶよなんですよ!わがままボディなんですよ!」
狭山さんは大げさなくらい嘆いた。俺は慰めた。
「いや、でも、病気とかした時は多少体重ある方が耐えられるっていいますし」
「にしても限度が……うわーっ、今でさえ食べるの一生懸命我慢してるのに!」
狭山さんはひとしきり嘆いたあと「和泉さんに僕の肉を分けてあげたい……」と言うので「分けてもらえる方法があればぜひ」と言っておいた。増やすにせよ減らすにせよ、ちょうどいい体重って難しいな。
気を取り直した狭山さんが言った。
「そうだ、朝霧家の跡取りの跡取りが決まるかもしれないんですよ」
「え、それはどういったルートで……」
朝霧家の現当主は、千歳にちょっかいを出したお爺さんからその息子になったことはなんとなく聞いている。しかしお爺さんの孫、つまり跡取りは緑さんの夫、すなわち自分の不妊と頑なに向き合わず緑さんに子宮頸がんを移した人だ。ちゃんと病院行って子供作れたのか?いや、それにしちゃ話が早いな?
「ええと、緑さんの甥がいてですね。緑さんの妹と、緑さんの夫の弟の息子さん」
「へえー」
「甥っ子くんは二人いて、次男くんの方が、特に霊力ないってみなされてたんですけど、本当にここ数日で事情が変わって。僕が前、目の周りに塗ってた薬あるじゃないですか」
「ああ、あの真っ赤に染まるやつ」
霊的な能力をブーストする膏薬を、狭山さんが目の周りに塗って目の周りを真っ赤に染めてたことがあるのだ。
狭山さんは言葉を続けた。
「あれ、丸薬もあるんですよ。和束ハル対策で人海戦術する時に、探知が使える人を増やすためにばらまきまくって。で、その次男の甥っ子くんが、事が済んだあとに興味本位でその丸薬を飲んだそうなんですね。そしたら緑さんの夫さんの倍くらいの霊力が発現して」
「え、いきなり霊感に目覚めちゃったってことです!?」
「そうそう、僕みたいに人生の途中でいきなり。で、甥っ子くんは丸薬ドーピングが効いてる間ものすごく霊力が発現するってわかって。丸薬ドーピング、特に副作用とかないので、じゃあその甥っ子くんを朝霧当主の養子にして、跡取り候補にすればよくない?みたいな話になって」
「へえー」
「とはいっても甥っ子くん、まだ中3で、心霊関係に関わりなく生きてきたんで、だいぶ混乱してるみたいなんですね。緑さんは、僕みたいに、本業別に持って副業で心霊関係をやる道もあるよ、ってことを教えてあげたいらしくて、僕、今度その子に会って自分のこといろいろ教えることになってるんですよ」
「なるほど、それはいいですね」
たしかに狭山さんはロールモデルの一つになるだろう。狭山さんは大学で博士まで取って、その後大学に勤めてたことまであるんだから、その子も安心するかもしれない。
千歳はこたつの向こうで俺と狭山さんの話を聞いていたのだが、俺が狭山さんとの話を終えると『あの丸薬そんなに効くこともあるんだなあ』とびっくりしていた。
「普通はないことなの?」
『なんていうか、10あるのを20にするくらいのもので、目覚めさせるもんじゃないんだよな。その緑さんの甥っ子は、弱すぎてわかんないだけで霊力はあったのかも。で、丸薬が特別効きやすかったのかも』
「へえー」
15かそこらの子が、いきなり心霊業界の大きい家の養子になるなんて事態を受けとめられるかは気になったが、狭山さんみたいな働き方もできるみたいだし、そんなに心配は要らないだろうと思ってた。
俺は、もっと別の心配をすべきだったのだ。
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凛道桜嵐 新
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コメント
1件
みぅです🤍🥀 今回も日常と非日常がふわっと混ざる感じ、すごく好きでした。体重計買って測る話から、狭山さんの「わがままボディ!」の嘆きまで、もうほっこりしちゃった…笑 でも最後の「俺は、もっと別の心配をすべきだった」でゾクッと来たよ。この一文で次が気になって仕方なくなる…。やっぱり伏線の置き方、うまいなあって思います。続き、静かに待ってますね🌙