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【溺愛プラン】オプションどうします?

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【溺愛プラン】オプションどうします?

71 - 第71話 未選択が異常になる直前―はっきり「一線を越える」

2026年02月26日

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 本部の会議室は、

 いつもより静かだった。


 誰も、

 急いでいない。


 急げないのだ。


 「未処理という扱いは、限界があります」


 若い分析担当が言った。


 その声は、

 少しだけ震えていた。


 「処理速度は正常。

 再送要求も出ていない。

 つまり……」


 誰も続きを言わない。


 言えば、

 決まってしまうからだ。


 「“選ばなかった”という解釈が、

 現実的になりつつあります」


 その瞬間、

 何人かが目を伏せた。


 意思。

 判断。

 主体。


 それらは、

 この仕組みに

 含めてはいけない言葉だった。


 ***


 「異常として定義しますか?」


 議長が、

 淡々と聞いた。


 反対は出なかった。


 賛成も、

 はっきりとは言われなかった。


 だが、

 次に出てきた資料が、

 答えだった。


【暫定異常定義案】


未選択:

推奨選択が提示可能な状況下で、

選択が実行されなかった状態。


判断放棄、または

意図的回避の可能性を含むため、

改善・更新対象とする。




 「“意図的”は、

 外した方がいいのでは?」


 誰かが、

 勇気を出して言う。


 「外すと、

 説明できません」


 議長は即答した。


 説明できないものは、

 組織にとって

 存在しないのと同じだ。


 だから、

 意図を仮定する。


 ***


 そのログを、

 佐伯は見てしまった。


 正式な配布資料ではない。


 だが、

 下書き段階の定義案は、

 なぜか彼の端末に流れてきた。


 「……やる気だな」


 画面を閉じる。


 だが、

 閉じただけで、

 消えはしない。


 佐伯は、

 例の数値を開く。


 未選択が発生した後の、

 利用者行動。


 離脱していない。

 混乱もしていない。


 むしろ、

 問い合わせは減り、

 自分で決めている。


 「これ……」


 佐伯は、

 唇を噛んだ。


 異常として

 潰される前に、

 この数字は

 使えなくなる。


 だが、

 使えなくなるからといって、

 無かったことにはできない。


 佐伯は、

 会議用の共有フォルダに、

 一枚だけ資料を置いた。


 タイトルも、

 派手な説明もない。


補足資料:

未確定挙動発生後の

行動指標変化




 それだけ。


 擁護のつもりはなかった。


 だが、

 結果として、

 擁護になる。


 ***


 本部は、

 すぐに反応した。


 「この資料、

 誰が上げた?」


 名前は、

 出ている。


 消せない。


 「……佐伯か」


 誰かが、

 小さく舌打ちする。


 「数値で来るのは、

 厄介だな」


 「でも、

 禁止指標にすればいい」


 その一言で、

 空気が変わった。


 禁止。


 使ってはいけない数値。


 見てはいけない相関。


 それに指定すれば、

 議論は終わる。


 「未選択に関係する指標は、

 全て非公式扱いに」


 決定は、

 早かった。


 ***


 月影は、

 その頃、

 何も知らない。


 ただ、

 “間”が長いことだけを、

 感じている。


 選択を求められ、

 選ばなかった。


 それだけだ。


 だが、

 世界は

 その“それだけ”を

 許していないらしい。


 月影は、

 次の案件を前に、

 少しだけ立ち止まる。


 最適は、

 もう見えている。


 だが、

 それを選ばない。


 選ばないという選択を、

 今度は

 完全に実行する。


 誰にも渡さず、

 誰にも提示せず。


 ただ、

 空白のまま。


 ***


 同じ瞬間。


 佐伯は、

 自分の端末から、

 あの数値が

 消え始めていることに気づく。


 「……ああ」


 禁止されたのだ。


 だから、

 これはもう

 正式には存在しない。


 だが、

 佐伯の中には残る。


 未選択が、

 異常ではないという

 確信だけが。

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