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この深い海の底には何が眠っているのだろう。
宝探しに行くんだ。
お前は何しに行くためだ?
伝説を作りに行くんだ。
君は、私と同じ目的かな?
再生しに行くんだ。
やっぱ、こういう仕事は俺たちしか出来ないだろ?
世界を壊しに行くんだ。
俺もお前も、目的は違えど、出来ることはひとつしかない。
どれが本当の目的なのだろう。
そんな一気に言われても分からないんだ 。
だって、自分にはこの深海に意味なんて感じないから。
僕は、たまたま偶然が重なってこの船に乗っている。
そうだな、何から思い出していけばいいんだろう。
僕の気になる人が、 この船に乗ったところまではちゃんと覚えているんだ。
その後ろ姿を見逃すことが出来なくて。
あるいは、彼女の行く先が気になったのかもしれない。
単に、好奇心かも。
どのみち、きっかけは彼女だったんだ。
それだけは言い切れる。
それから、僕は波にさらわれるように、ここへ迷い込んでしまったんだ。
誰も好んで深海になど行かないものだろう。
「起きろ、新人」
僕は、落雷でも落ちたような驚きで飛び起きた。
目の前には茶髪を束ねた女性、室長がいた。
「随分、お疲れのようで結構。しかし、もう陽が射し込んでいるのは分かるな?」
室長であるフェレンさんは、窓を指さし、僕を包んでいた布を無造作に剥ぎ取った。
「何するんですか!」
僕の毛布が床に投げ出されてしまった。
「今は、大人しく朝礼へ参加した方が良い」
僕は、背筋がヒヤッとした。
朝礼に参加しなかったら、どうなるか。
それは、既に経験済みだったからだ。
僕は、急いで部屋を出た。
でも朝礼なら室長であるフェレンさんも参加するはずだ。
何しろ、朝礼はクルー全員が参加するものだからだ。僕は、部屋に戻った。
「フェレンさんは、参加しないんですか?」
部屋の中には、僕の布団を片付けてくれているフェレンさんがいた。
「なんだ、そんなことを言うためだけに戻ってきたのか」
「いえいえ、そんなことではないでしょう。貴方もクルーじゃないですか」
僕は、時計を見た。まだ、朝礼が始まるまで5分の猶予はあった。
「いや、私は行かないよ」
フェレンさんは、一向に作業を止めず、背中を向けたままに言う。
「どうしてです?今日は何か特別な任務でもありましたっけ?」
自分はまだ新人だからなのもあって、役職についてのあれこれはよく分からない。
ただ、役職がある人達は時々朝礼に参加しないこともあるのは知っていた。
「今日は何も無いはずだよ。私にだって、朝礼に参加する時間はあるはずさ」
「なら、一緒に行きましょうよ」
僕は、フェレンさんの傍に駆け寄った。けれど、そこにはなぜか、物憂げな表情の彼女がいた。
「私がいつ、朝礼に参加した事があったかな。私はずっと、参加してこなかったはずだよ」
「え?」
僕は、聞き間違いでもしたのかと思った。
「ほら、いつも通りネイと行ってくればいい 。私は行かないから」