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第4-1話 前兆

4月28日(木)


授業を終えて部室に顔を出してみると、すでに小橋くんが来ていた。


「やあ、こんにちは。随分と早いね」


「先生、こんにちは。今日はホームルームが早く終わったので……」


私が声をかけると、小橋くんはそう答える。その言葉になんとなく元気がないように感じるのは、何故だろう?


「どうかした? 明日から連休なのに、特に出かける用事がない……とか?」


「あっ、はい。それもあるんですけど……。明日から出張中の父が帰ってくるんです」


そう答える小橋くんの言葉は、とてもじゃないが喜んでいるようには聞こえない。


「もしかして、お父さんのことが苦手だったり?」


私の問いかけに、小橋くんの肩がビクッと震える。

画像 「いえ、そんなことはないんですけど。父は僕が声優志望なのを反対しているので、演劇部に入ったことがわかると、何か言われるかなと思って」


だが、それに気づかれまいと矢継ぎ早にそう言った。


何かあるんだろうなと感じたが、この場で追求することはやめておくことにする。その代わりに私はこう言った。


「大変だね。困ったことがあれば、いつでも相談に乗るから言ってね。一人で抱え込むと、辛くなるよ?」


私の言葉に、小橋くんは「はい」と静かに頷いた。その時、中山さんがやってきた。

軽く私と小橋くんに挨拶すると「先に二人で発声、始めちゃおうか」と小橋くんを促す。

そうして二人が発声練習を始めると、続々と他の部員もやってきた。


「みんな。明日から連休にゴールデンウィークと休みが続くけれど、なにか困ったことがあったら教員の寮まで訪ねてきてね」


私がそう言うと「先生、心配性~」と笑いが起こるが、小橋くんだけは笑っていなかった。気にはなったが、他の部員がいる前で追求することは避けた。


********************


5月2日(月)


今日は1年A組の授業の日。

3連休の後の学校。しかも、明日からはゴールデンウィークで生徒たちはだらけまくっていた。

そんなだらけまくりな生徒たちを眺めていると、ふと違和感に気が付いた。一箇所、空席があるのだ。それは、小橋くんの席だった。


「あれ、今日は小橋くんは休みなの?」


私は誰に聞くでもなく、生徒たちに声をかけてみる。するとどこかから「風邪らしいですよ~」という返答が返ってくる。


風邪なら良い……いや、良くはないんだけど、余計な心配はしなくていいのだろうか。

私は頭を切り替え、授業を開始した。

しかし、やはり少し気になったので、授業が終わってから1年3組の担任に連休前の小橋くんの態度を伝えておいた。

私立せせらぎ学園

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