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──大手メーカーに就職して数年、
とにかく仕事を覚えようと、今まで必死に頑張ってきた。
その頑張りがようやく認められ、今度立ち上げる新商品のプロジェクトメンバーに抜擢された。
でも、やっとつかんだチャンスに喜んだのも束の間、
このプロジェクトのチーフになった男が、とんでもなく軽薄だったのだ──。
「チーフ……銀河チーフ。今朝の企画ミーティングの意見をまとめてほしいのですが?」
そう話しかけると、チーフである銀河は長めに伸ばした薄茶色の髪をかき上げて、うっとうしそうに私の方をちらりと流し見た。
「んー…別に、意見なんて、わざわざまとめる必要ないだろ? ミーティングなんて、ただのアイデア出しにすぎないんだしさ」
さもめんどくさげに言う姿に、上司ではありながらもついイラッとするのを隠せない。
「ですが、チーフ。意見はまとめておかないと、次でもまた同じ意見が出たりして、ミーティングの意味が……」
チャコールのスーツに、着ているシャツのボタンを2、3個はずし、ネクタイを緩めに締めた姿がやけに色っぽく、憎たらしい程に似合っていて、
わけもなく怒りがつのった。
「そんなにまとめたきゃ、君がやってよ? ね…夏目さん?」
もうこの話は終わりとばかりに、おもむろに席を立つと、
「じゃあ、俺ランチ行ってくるし。あ…いっしょに行く?」
至って軽い調子で問いかけてきた。
「行きませんっ…!」
いよいよ頭にきてイラ立つ私の顔を、銀河がおもしろそうに覗き込む。
「あんまつまんないことで、怒らない方がいいよ。かわいい顔が、台無しだからな」
そんなセリフをさらりと吐かれて呆然とする私に、「ククッ」と小さくのどの奥で笑うと、
「じゃ、ランチ行ってくるわ」
銀河チーフは、軽く手を振って会社を出て行ってしまった。