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皐月渚視点_
模倣犯の事件が解決した翌日。世間では「連続通り魔逮捕」のニュースが大きく報じられていたけれど、学校という平和な箱庭には、その裏にある本物の暗闇なんて届かない。朝のホームルームが終わった直後、私の机の周りは、いつも以上の重苦しい空気に包まれていた。
「……渚ちゃん」
おそるおそる声をかけてきたのは、クラスメイトの莉子ちゃんだった。後ろには他の女子グループも息をひそめて控えている。
「なに?」
机に頬杖をついたまま見上げると、莉子ちゃんは意を決したように身を乗り出してきた。
「あのね……私たち、見たの。一昨日の放課後も、昨日の夜も……渚ちゃんが、あのすごくガラの悪いオジサンの車に乗っていくところ……!」
「……あー」
(やっぱり見てたか)
「渚ちゃん、お父さんもお母さんもいなくて大変なのは分かってるよ! でも……でもね! パパ活とか援交なんてダメだよ! もしお金に困ってるなら、先生とか、私たちに相談してくれたら……!」
必死な顔で言ってくる莉子ちゃん。周りの女子たちもウンウンとうなずいている。
本当に親切心で心配してくれているのが伝わってくる分、余計に説明するのがめんどくさい。
『パパ活とかウケる! あのオッサン、全身から加齢臭とヤニ臭漂わせてたじゃん!』
教室の天井付近。数日前に校庭で転んで頭を打って成仏したらしい男子中学生の幽霊が、バタ足しながら爆笑している。
私は心の中でそいつを激しく殴り飛ばしながら、ため息をひとつ吐いた。
「……莉子ちゃん」
「なに!?」
「勘違いだから安心して」
「えっ……でも、あのオジサンからお金もらってたでしょ!? 『協力費』とか言って!」
「あれはポテト代」
「ポテト!?」
「うん。あのおじさん、遠い親戚の警察官。私がちょっと……まあ、オカルト的な? 捜査の手伝いさせられてるだけ。報酬はファミレスのポテトとチョコパフェ」
「け、警察……!? ポテト……!?」
莉子ちゃんたちは狐につままれたような顔で見合わせている。
「そんな怪しい警察官いる……? だってあの人、すごい煙草臭くてガラ悪かったよ……?」
「警察もピンキリだから。とにかく、パパ活じゃないから気にしないで」
そう言って私は、教科書をバッグから取り出した。
「……ふーん、警察かぁ。なんだ、事件の手伝いだったんだ……」
ホッとしたように胸をなでおろす莉子ちゃん。だけど、その視線はまだ完全には疑いを捨てきれていないようだった。
『嘘つけー! お前、昨日そのオッサンと一緒に超コワい顔して当直室入っていっただろー!』
うるさい幽霊少年が、私の頭の上でクルクル回りながら冷やかしてくる。
私はチラリと天井を見上げると、クラスメイトに気づかれない角度で、そいつに向かって中指をすっと立てた。幽霊少年は『ひっ』と声をあげてロッカーの陰に逃げ込んでいく。
「……あ、また渚ちゃんが誰もいないところ睨んでる……」
「やっぱり事件の捜査で疲れちゃってるのかな……」
ひそひそと囁きながら、莉子ちゃんたちは自分の席へと戻っていった。
結局、「パパ活女子」から「警察の事件に関わっているヤバい不思議ちゃん」に疑惑が上書きされただけだったけれど、変に心配されるよりはマシだ。
机に突っぷし、窓の外の青空を眺める。
模倣犯は捕まった。主婦の奥さんの無念も晴らせた。
だけど、本当の犯人はまだどこかで生きている。
(……待っててね、お父さん、お母さん)
放課後になれば、またあのガラ悪刑事の車が校門前にやってくるだろう。
どんなに「不思議ちゃん」と噂されようが、怪しまれようがどうでもいい。
私は目を閉じ、次の「声」を聞くために、静かに放課後のチャイムを待った。
前職は舞妓
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きょう
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コメント
1件
あ〜もうめっちゃ良かった!!😭✨ 渚ちゃん、相変わらずクールでかっこよすぎるし、クラスメイトのパパ活疑惑に「ポテト代」って返すの完全に草生えたんだけどww 幽霊少年とのバチバチも微笑ましすぎて和む〜♡ 「本当の犯人はまだどこかにいる」ってラストの余韻がヤバい…次の話が待ちきれないよ!!🌸