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ピコン。 その女性のメッセージアプリの通知音が鳴った。
「やばぁ! まだ片付け途中なんだよねぇ! 帰らないと!」
「あ、そっか。引っ越し初日だって言ってたよね! ごめん!」
「ううん、凄く楽しかった。じゃあ、ありがとう!」
「あ、うん……」
私に背向けると、ふわっと揺れる黒髪のストレート。
その美しい姿をただ眺めているだけで、私はどうしてもこの言葉が出てこない。
このままじゃ、また会えなくなる。分かっているのに。
すると彼女は、足を止めて振り返ってきた。
その目は私から逸らしていて、先程までと違い口角は下がっている。
また、私の心臓はドクンと鳴る。初めて見るその姿に私は。
「「あ、あの。良ければだけど、連絡先交換しない!」」
二つ重なったその声が、沈みゆく夕日の空下に響く。
それが私達を引き合わせてくれたあの本を手に取ったシチュエーションとシンクロし、互いの顔を見合わせて、また笑ってしまった。
「私たち、このまま別れるなんて勿体なさすぎるだよね?」
「本当に、こんなに感性が合う人初めて!」
そう盛り上がっていると、今度は女性に電話がかかってきて慌ててメッセージアプリの交換をする。
「じゃあね!」
「うん!」
私は走って行く彼女を見つめていると、彼女は振り返り、こう叫んだ。
「またね! 文!」
大人っぽい彼女の無邪気な笑顔。その姿に。
「またね! 麗華!」
私は久しぶりに大きな声で叫ぶ。
その声に笑って手を振った麗華は、颯爽と駆けて行く。
話し込んで悪かったな。
あ、そういえば年上に呼び捨てにしてしまったな。
いくつぐらいなのだろう?
そう考えながら、私は家路に着く。
さっきまでのドヨンとした気持ちは夕日と共に沈んでいき、空に輝く一番星のように私の心に光をもたらしてきた。
高二の夏休みは、光り輝くものになるだろう。
空中に散りばめられている星々が、そんな予感を知らせてくれた。
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