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「ガオオオオオオオオオ!!!」
酷く鈍い雄叫びが聞こえる。
はじめは敵であったイーガ団も仲間に加わり、とうとう厄災ガノンを目にすることができ、ハイラル軍はまさに勝利をおさめる事になっていた………が、仲間がどんどんガノンによって倒されていく。ある意味最強だったイーガ団も皆、ガノンによって倒れていった。
今残っているのは
姫、ウルボザ、ダルケル、ミファー、ハイラル王と僕。おまけにアイツ(リンク)だ。各地方の兵士もいるが、皆致命傷を喰らっていて、これ以上戦うと血が足りなくなって死ぬだろう。ミファーの治癒で治してもダメだった者も数多くいる。その中にはインパも……。
「フッ」
この状況で鼻で笑っている僕が可笑しく感じる。僕らはもう…負けるんだ。僕らが想像していたものよりももっとデカくて強かった。そうか…。僕は壊れていってるんだ。体も心も…。大切な人達の命を簡単に奪われて…!
「ガオオオオオオオオオオ!!!!」
ガノンが雄叫びをあげたっ…!攻撃が来る…!避けろ!
「 っ!?」
「御父様っ!!!!」
姫がハイラル王の元へ駆け寄っていく。王の上には潰されたら一溜まりもない程の大きな瓦礫だった。
グシャ…!!!!
「酷・鈍」がピッタリな音がした。瓦礫を見てみると、押し潰されたハイラル王がいた。
ハイラル王が潰される前、全てがスローモーションに感じた。落ちる前の王の優しい顔…。愛する我が子の幸せを祈っての顔だろう。
僕たちはガノンの攻撃を避けたがバランスを崩して転んでしまった。
姫はこの上ない絶望の顔をしていた。姫の巫女のドレスはハイラル王の血飛沫がついていた。
「御父………様っ…!!」
辛いだろう。悲しいだろう。逃げ出したいだろう。泣きたいだろう。でも今はそんな事できない。それは姫もよく知っているだろう。
「厄災ガノン………。私は……貴方を……許さない…!!!!」
姫の言葉を聞くとアイツが動き出した。どうやらガノンが姫の方を見ている時に、斬るみたいだ。
だが………!
ボカッ!!!!
「リンクっ!!!!!」
アイツがガノンに飛ばされてしまった。姫も作戦が失敗に終わって呆然としていた。ミファーがアイツのところに駆け寄る。だが、ガノンはミファーとリンクを潰そうとしていた。
「キャ…!!!!」
ボカン!!
「……!?ダルケルさん!!」
「ここはオレが守っておくからミファーは相棒を…!!!」
「うん…!!!!リンク。大丈夫だよ…!!」
「リーバルとウルボザと姫さんはすまねぇが戦ってくれるか!やれるところでいい!!」
「フンッ、僕を舐めでもらったら困るよ…!」
「ここは任せてくれ!」
「は、はい…!!!」
僕らは戦い始めた。
僕らは必死に戦った。ガノンを倒すために。色々な戦略を試したが、全部ガノンにお見通し。次の戦略を考えている僕は後ろから来るガノンの拳に気付かなかった。
「リーバルッ!!危ない!」
「え??」
ボカン!!
「ッ……!!」
必死に受け身を取ったが痛くない…??
「フーーッ……フーーッ……」
「(何か乗ってる??)」
荒い呼吸音が聞こえた。
触ってみると血がついた。とても嫌な予感がした。小柄な体型で息をする度にシャラっと飾りの音が鳴る。肌がスベスベでひんやりしている……これってまさか……!!
「………ミ……ファー………??」
「フーーッ……ハーッ…フーーッ」
「リー…………バル………さ……ん……、無事…………?」
ミファーは止血をしているのか、変な呼吸になっている。
「君のほうが大丈夫かい!?」
僕はすぐさまミファーを抱き上げ、柱に隠れた。
「ミファー。応急処置をするよ…!」
僕は皆とお揃いのスカーフをミファーが喰らった部分に当てて思いっきり締めた。
「う……もう……大丈……夫」
「ありが……と…う」
「ちょっと待ってよ!まだ!止血ができてないよ!」
「……リーバル……さん…」
「私は……こんな……ところで……仲間……を…!死なせる……わけには…いかないの……!」
「でも!!それで君が犠牲になるんだよ…!!」
「それで………いい……の…私…仲間が……いるから……いつも…前を向いて……!歩けた……。仲間が……いるから……いつも…寂しく……なかった………!」
「みんなに……恩返しが…したい…!!」
「そんなのダメだよ…。嫌だよ。君が死んだらみんな…生きれないよ。君がいつも笑顔でいてくれるから、僕らは…楽しく生きれるから……。死んじゃ……ダメだよ…!!!」
「もう休んどいてよ…!これ以上動いたら、死んじゃうよ…!!僕の事庇ってまで戦わせる訳にはいかない!!」
「本当……に…大丈……夫だ……から…!!」
僕は又、後ろからくるガノンの攻撃に気付かずに話した。
「君は…!なんで…無理をするの…!今だって傷がまだ痛いはず……」
ガッシャン…!!!!
「うわっ!?」
「キャァ…!!」
柱が思いっきり壊され僕たちは飛んでいった。
壊れた柱を見てみると、ウルボザが倒れていた。その隣にはウルボザの体を揺する姫が。
「嫌…!嫌です!!ウルボザ…!死なないで!!!」
「御ひい……様…強く……生きてね…」
「嫌です!!ウルボザがいなきゃ…!!ダメです!!死なないで!」
「もうこれ以上!大切な人を死なせたくないです!!」
最愛の父を亡くした姫の目には涙が溜まっていた。
「大……丈夫……ハイラル王…も…私の親友も…見守っているから……」
「だから…大丈夫…!!」
ウルボザは最大の力を振り絞って、姫に抱きついたまま動かなくなった。
「ウルボザ…??ウルボザ…!!目を覚まして!!いや〜!!!」
ギュッ
「え??」
姫の後ろにはあのいけ好かない騎士がそっと姫を包みこんでいた。
「リン……ク…??」
「姫様、大丈夫です。俺が全部、守りますから……。」
「うぅ………。うぅ…………。」
「すまんが、姫様と少し外の空気を……」
「わかってるぜぇ!相棒!!ここは任せとけ!!」
「ミファー、まだ傷口が深いからそこで待っててね」
「え……でも……」
「分かった…????」
「うん…」
「さぁ行くよ。ダルケル」
「おしゃあ!もう一働きだ!!」
僕はそこからの記憶がない。
目が覚めると本丸にいた。壊れた壁から太陽の光が差し込んでいる。
「(良かった…。勝ったんだ……。)」
自分の手を見るととても血まみれだった。よくわからないけど、僕は意識を失う前まで覚醒したように感じた。周りを見るとダルケルが倒れていた。その隣にはミファーがダルケルの手を取って泣いていた。
「ミファー……」
「リーバルさん……ダルケルさん…治癒したのに…死んじゃったの……」
今にも泣き出しそうな目をしていた。痛々しく見てて辛かった。ダルケルの方を見ると、お腹の真ん中にデッカイ穴が空いていて、とても見ていられない光景だった。
「どうしよう……!もっと生きさせたかった…!!私がまだ未熟だから…!ダルケルさんは…!」
「大丈夫だよ。ダルケルは幸せだったと思うよ。それに君は未熟じゃない。とっても立派だ。気にすることはない…。僕も辛いけど、ここで泣いていたらダルケルも心配で成仏できないよ…」
「そうよね……。分かった。ありがとうリーバルさん、私…貴方だけでも生きていてくれて良かった…。」
「僕だけ??姫とアイツは……」
ミファーの顔を見ると、ただ静かに首を横に振った。
僕は膝から崩れ落ちて泣いた。
「………そんな……。そんな……。クソッ!クソッ!!どうしてだよ…!!なんでだよ!!まだ…決着がついてないだろ…!!ねぇ、リンク…!勝敗を決めようって約束したじゃないか…!!何勝手に死んでんだよ!!死ぬなら僕も連れて行ってよ…!!!
姫も……姫も…!!!アイツを助けたくて、封印の力が使えるようになったんだろ…!!あんなに努力してたのに……!!!なんでだよ…!こんなの…嘘だ…!!!」
「……リーバルさん……」
「ねぇ…。教えてよ…。どうやって死んじゃったの?」
「………。リンクが…トドメの一撃をいれた時…姫様が封印したんだけど……、2人は……体の限界をとても超えてて…倒れちゃったの…。でも…だんだん心臓が…弱くなっちゃってて……治癒もしたのに……一向に弱くなっていって……。」
「なんで…。なんで…。僕らを置いて行ったんだよ…!!一緒に生きて!一緒に喜んで!一緒に幸せになりたかった…!!うわぁぁぁぁぁ…!!!!」
ミファーの前で初めて声を荒げて泣いたけど、ミファーはそんなの気にせず、優しく背中を擦ってくれた。
「リーバルさん…。私も、皆と幸せになりたかったよ…。皆で色んな所に行きたかった。でもね、私達が生きているのって、素晴らしいと思うの。」
「なんでだい……?」
「ダルケルさん、ウルボザさん、リンクに姫様。4人が私達の命を繋いでくれた。それを私は無駄にしたくない。私は、4人の分幸せになって4人分悲しもうと思うの。」
「だから、泣かないで。貴方はもう4人分悲しんだ。これからは4人分幸せになっていこう。」
「分かった…。分かったよ…。僕、頑張って生きる。」
「うん、偉い偉い!」
ミファーは僕を弟のように優しく抱きしめて、頭を撫ででくれた。
「これからゴロンシティ、ゲルドの街に行って2人の死をみんなに伝えに私は旅に出るわ。リーバルさんも…来る…??」
「うん。行くよ。2人には随分お世話になったしね。」
「ふふっ、じゃあ行こうか。
でも、傷はまだ完治していないから、完治してから行こうね。だいぶ傷も癒えてきているから、明日には治っているかな。」
「ミファーの治癒を使えば今日治ると思うけど……。」
「それは…私の体力が……。治癒をするときってね、少し力が強くても少し力が弱くても効果が無い時があるの。だから、ちょうどいい力でやらないといけないから、結構体力を使うんだよ…。」
「おっと……。それは知らなかった。すまないねぇ。」
「ううん。いいよ。
……じゃあ、また明日。」
手を振る君。もう少し一緒にいたいから、ミファーのルッタのスカーフを引っ張った。
「なぁに??」
「えっと……。途中まで送るよ。」
「え…!?いいの…?ありがとう!」
「じゃあ、さっそく行こう!!」
「うん。」
ミファーが僕の手を引いて歩き出した。太陽のように明るく笑う君と本物の太陽が僕を照らした。このハイラルという世界がより一層好きになった。
「君たちの分も生きるからね。」
「……??何か言った?」
「ううん。何も。」
この先、どんな辛いことがあっても君と越えて行けると思う。だって、僕たちの後ろには、アイツらがいるから…!
百年後、また厄災と戦うもの全て生き残れますように。
ずっとハイラルが平和であるように。