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私に都合が悪いから話さなかったことがあると睨んでいて。

バーで高見さんにしな垂れかかっていた私を目撃して、確信したのか。


私が真を裏切って、そのショックで真が姿をくらましたと。


「残念だけど、本当に私はわからないから。これ以上揺さぶっても叩いても、埃は出ないよ」

「そう? 別に、お義姉さんのこと責めたいわけじゃないよ? あの通り、兄貴は四角四面の真面目が服着てるみたいな人だったから、お義姉さんみたいな大人の女性には物足りなくなっても仕方ないんじゃない?」


その言葉は小さな棘に形を変えて、雪緒の皮膚に突き刺さった。


残された結婚指輪や棘みたいな細やかな悪意で私を揺さぶって、身を隠した真に謝らせて連れ戻させたいとでも思っているんだろうか。


雪緒は外を眺めたまま、唇が歪むのを感じた。

他人から見たら、薄く笑っているように見えるのではないかと思えた。


けれど、そうではなかった。


――ぶちまけてやろうか。

そして、何もかもぶち壊してやろうか。


そう考えた、屈折した感情の現れだ。


黙ってやりすごそうと思っていたが、口をついて皮肉が漏れ出した。


「好き勝手言えて、『部外者』は楽でいいね」


無責任に、言われた側の気も知らないで。


ぶん殴ってやろうか。

精神的にも、物理的にも。


目の前の道路を横切る車を、じっと目で追う。そうでもして気を紛らわさないと、とんでもなく無分別な行動を仕出かしてしまいそうだった。それを、郁は隣で見つめていた。


しばらくそうしていてから、


「ね、お義姉さん。またここの店員さん経由するのもなんだから、連絡先交換しない?」

「……話すこともない相手と、連絡先交換しても無駄だと思う」


郁は若干わざとらしい、びっくりしたような顔を見せ、


「えー、そんなことないでしょ?連絡先わかれば何かと便利だし」

「あと、他人にこうして迷惑かけるのやめて。きみもいい大人なんだから、その辺の判断はできるでしょ」


会社で「氷の女」と称される、付け入る隙を見せない冷淡な口調。

可愛げのない、相手を突き放す物言いは得意だ。


もう、放っておいて。関わらないで。


だが、郁は表情を変えずにのんびりとコーヒーを口に運んで、外に目を移した。

コーヒーカップに触れた整った形の唇は、緩く笑っている。


「――それも、そうだね」


明るい口調でそう言って、コーヒーを飲み干すと首を傾げるようにして雪緒の目を覗き込んできた。申し訳なさげな素振りだが、その目はこちらの張り巡らせたバリケードの隙を探っているように見えた。


「次は、他の人には迷惑かけないようにするね」


次、なんていらない。


その言い回しに、ひっかかる物は感じながらも、雪緒はそれ以上言葉を発するのも面倒になっていた。


雪緒が立ち上がろうとしたとき、入り口のドアが開いて、常連客が団体を率いて入店してきた。


――嘘だったはずの『てんてこ舞い』が現実となり、雪緒も手伝いに駆り出され、一息ついたときにはとっくに郁の姿は消えていた。


好きだったのはきみじゃない

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