テラーノベル
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――深層。
否、鏡の裏側。
そこはかつてのような“黒”だけの空間ではなく、
ところどころ、現実世界の記憶が歪に染み込んでいた。
ないこがギターを手にした場面。
ないこがアップロードボタンを押した場面。
その全てが、闇ないこの“中”で、灼けるように蘇っていた。
闇ないこ:「ああああああッ……!!!」
彼は頭を抱え、地を転がる。
胸の奥を引き裂くような、暴力的な感情。
闇ないこ:「……オレのくせに、“歌う”なんて……許さねぇ……!」
だが、
その叫びをさえぎるように、どこからか“声”が響いた。
???:「痛いよね、“戻ってしまった自分”が」
???:「でも、それが“お前”なんだよ。
否定すればするほど、もっと“自分”が濃くなる」
その声は――あの時、消えたはずの二人。
光と影の狭間から、静かに姿を現す。
冬心(とうみ)
累(るい)
累は、以前と変わらぬ無垢な笑顔で、
冬心は、深く哀しげな眼差しで、闇ないこを見つめていた。
冬心:「“お前”は、“ないこ”を憎んでいるようでいて……
誰より、戻ってきてほしかったんじゃないのか?」
闇ないこ:「……違う……違う……!!」
累:「違わないよ。“君”は“君”のことを、ちゃんと好きだった」
闇ないこ:「黙れッッ……!!!」
鏡の奥の景色が砕ける。
そこに映っていた、いれいすメンバーの顔が、悲しそうに歪んだ。
闇ないこ:「アイツらは、“オレ”を受け入れない……!」
冬心は、一歩、踏み出す。
冬心:「でも、“ないこ”は、君ごと受け入れようとしてる。
だから――“混沌ブギ”を歌った」
闇ないこの肩が、ピクリと震える。
闇ないこ:「オレは……オレは、ただ……」
累:「泣いてもいいよ。
怒っても、壊しても。
でもね、“歌”が残る限り、君はもう、ひとりじゃない」
その言葉に――闇ないこは、ひざから崩れ落ちた。
涙が、流れていた。
闇ないこ:「……ふざけんなよ……オレが“歌う”わけ……」
冬心:「“ないこ”としてじゃなく、“お前自身”の声でいい」
累:「歌ってよ。“お前”のままで」
その瞬間――闇ないこの背後に、
黒い羽根のような何かが、静かに広がった。
形を変えながら、“もう一人のないこ”としての姿が、静かに“覚醒”しようとしていた。
彼は、もう一度立ち上がる。
闇ないこ:「……なら、“俺”は俺で――
この声をぶつけてやるよ、あいつに」
瞳の奥に宿ったのは、消えかけた光。
それでも確かに、“俺のものだ”と呼べる、意志だった。
次回:「第二十八話:鏡の中の俺を、壊すために」へ続く
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